測候所やアメダスなどの気象観測システムのある場所で、日本一(実は世界一)の豪雪地は、青森県の酸ヶ湯温泉(すかゆおんせん)ですが、その玄関口である青森空港は、日本一雪が降る空港。冬季にはブルーインパルスをもじった「ホワイトインパルス」と称する機動除雪部隊が大活躍しています。
精鋭ぞろいの隊員は、実は地元の農家の人!
北海道と本州を隔てる津軽海峡・陸奥湾に暖流の対馬海流の分流が流れ込み、冬季の季節風(大陸からの冷気)が津軽海峡を吹き抜ける際に、湿度を供給されて積乱雲が発達、豪雪をもたらすのです。
陸奥湾奥の平野部に青森空港(青森県青森市)が立地していますが、空港の西側に位置する五所川原市(ごしょがわらし)では、『地吹雪体験』などのイベントも行なわれるほどの土地です。
全国の県庁所在地の中で年間降雪量が最も多いのは青森市ですが、青森市内にある青森空港も、当然、年間降雪量日本一、つまりは、降雪量世界一の空港ということに(青森空港は、青森市の山間部にあるため、市街地よりも積雪量が多く、年間では10mを超えます)。
青森市は人口10万人以上の都市としては降雪量が世界一なので、主要空港としては世界一の豪雪空港といえるでしょう。
そんな過酷な青森空港ですが、空港関係者が「青森空港は風雪による欠航が非常に少ない空港です」と胸を張るように、豪雪な年でも、冬季の欠航は30便以下となっているのです。
欠航率の低さを支えているのが「ホワイトインパルス」と名付けられた青森空港除雪隊。
4社の共同企業体により編成される除雪専門の部隊で、整然と隊列を乱さずに除雪をしていくのです。
東京ドーム12個分にあたる55万平米という離陸に必要な誘導路、滑走路などを60台の除雪機械を駆使して、40分ほどで除雪を終えてしまうのです。
全長3000m、幅60mの滑走路は、空を飛ぶ雁(がん)の集団のように斜めに隊列を組んだ除雪機械が、時速25㎞ほどで走行しながら除雪しますが、その隊列が航空自衛隊の曲芸飛行を行なうブルーインパレスの編隊飛行のようなので、「ホワイトインパルス」という愛称が付けられています。
スノープラウ、スノースイーパー、プラウ付スイーパー10台を階段状に斜め1列に隊列を組み、片側30mを除雪するかたちで、3000mを往復。
エプロン(駐機場)、誘導路なども同時に除雪するので、1回の除雪で出動する車両は6種類・34台(37装置)とのことです。
スノープラウは前面に排雪板を備え、高速で走行して雪を寄せる車両。
スノースイーパーは、スイーパーと呼ばれる円柱形のブラシを取付けた車両で、スノープラウでは取りきれない路面に付着した雪や氷を、車体前方のスイーパー(ブラシ)で掻き出し、車体後方のブロワ(圧縮空気を送る機械)で吹き飛ばす車両。
プラウ付スイーパーは、プラウ付のトラクターがスイーパーをけん引するもので、小回りは効きませんが1台で2台分の働きがある優れた車両です。
ほかにも凍結防止剤(薬剤は粒状と液状の2種類)を散布する薬剤散布車、除雪した雪を遠くに飛ばすロータリ車、回転半径が小さいブルドーザータイプのホイールドーザーなどが活躍しています。
ただし、航空灯火など機械による除雪では損壊の恐れがある航空機器に関しては人力で除雪を行なっていますが、灯火だけでも500もあるので、こちらの除雪はまさに人海戦術となります。
青森空港では、滑走路、誘導路、エプロンの積雪が3cm以上であれば除雪する決まりなので、多い時は1日で8回〜9回の出動することもあるのだとか、
さてさて、空港施設に熟知し、かなりの技術が要求される「ホワイトインパルス」の隊員はどんな人なのかといえば、「隊員の6割以上がリンゴ栽培、ミニトマト栽培などの農家です」とのこと。
農閑期の副業と思いきや、20年以上のベテランも多く、もはやこちらが専門のような感じなのだとか。
現場のスタッフ(グリーンシーズンは農業に勤しみます)が雪の降り方や積もり方から経験的に除雪にかかる時間を判断し、管制塔と連絡を密に取りながらテキパキと一糸乱れずに除雪を行なうのですから、熟練した技術も要求されます。
ホワイトアウト状態で重機を動かすこともありますが、過去に事故はゼロ。
空港施設や設備を熟知し、しかも隊員同士が信頼関係でつながっているからこそ成り立つの凄技だといえるのです。
2022年7月22日〜9月9日にテレビ朝日系で放送された『NICE FLIGHT!』(ナイスフライト)では第2話にリンゴ農家の「ホワイトインパルス」隊員が登場、注目を集めました。
冬場に青森空港に行くチャンスがあり、万一、降雪時なら、「ホワイトインパルス」の見学を、ぜひ。
世界一雪が降る空港では「ホワイトインパルス」が除雪で大活躍! | |
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