遺跡と古墳で知る、弥生時代と古墳時代の境目とは!?

古墳時代を調べると「古墳築造が隆盛を極めた時代」、そして弥生時代は「稲作が伝来し、食糧生産が始まってから前方後円墳が出現するまでの時代」となっています。ところが邪馬台国の卑弥呼が女王として君臨した3世紀の弥生時代にも巨大な古墳は築造されています。弥生時代と古墳時代の境目は、どこにあるのでしょう。

シンポジウム『考古学が解明する邪馬台国の時代』に学ぶ

2024年9月8日に明治大学で開かれた日本考古学協会主催の公開シンポジウム『考古学が解明する邪馬台国の時代』。
学者の間で議論となったのが「弥生時代と古墳時代の線はどこに引けるか」。

明治大学黒耀石研究センターのセンター長で、日本考古学会長を務める石川日出志教授は、シンポジウムの冒頭で、シンポジウムでは、邪馬台国の所在地がどこにあるのかという争いはしないとと宣言したため、パネリストも多くが「畿内説」を前提に議論を展開しました。

多くの考古学者が一致するのは、邪馬台国から「ヤマト王権」への移行の過程が、弥生時代から古墳時代の分かれ目とする考え。

3世紀末に記された中国の歴史書『三国志』中の「魏書」第30巻烏丸鮮卑東夷伝(うがんせんびとういでん)倭人条、通称『魏志倭人伝』(ぎしわじんでん)では、景初2年(238年)、邪馬台国女王・卑弥呼が倭国(古代の日本にあった国家)の王に共立され、中国の魏王朝(220年〜265年)から「親魏倭王」の金印を授かったと記され、当時の日本には連合政権的な邪馬台国があり、それがヤマト王権へと発展(あるいは継承)と推測されるのです。

そこで問題となるのは、その転換点を示す遺跡。
墳丘長280mの箸墓古墳(はしはかこふん/奈良県桜井市)の築造後、各地に同様の前方後円墳が出現していることから、大阪大学考古学研究室の福永伸哉(ふくながしんや)教授は、「卑弥呼が隔絶した規模の箸墓古墳に葬られたことで、古墳時代が始まった」と考えています。

箸墓古墳の地元、桜井市纒向学研究センター・寺沢薫(てらさわかおる)所長は、「卑弥呼が共立され、倭国の新たな王都として纒向遺跡(まきむくいせき=桜井市にある弥生時代の古代都市遺構)が出現したことこそが、ヤマト王権の成立を示す」としています。

纒向遺跡の周辺には3世紀後半に築造された箸墓古墳よりもさらに古い時代に築かれた纒向石塚古墳(まきむくいしづかこふん/墳丘長96m)、矢塚古墳(墳丘長96m)、勝山古墳(墳丘長115m)、ホケノ山古墳(墳丘長80m )など、墳丘長が80mを超える前方後円墳成立期の巨大な古墳が複数存在することから箸墓古墳は境界にならないとする考えもあります。

邪馬台国の時代の解明は、倭国が形成される過程を考えるために重要な意味をもち、その解明こそが、弥生時代と古墳時代の境目を知ることになります。

箸墓古墳のある纒向古墳群(まきむくこふんぐん)と邪馬台国の王都とも目される纒向遺跡は、弥生時代と古墳時代の境目を知る大きな手がかりになっています。

今回のシンポジウムで意見が分かれたのは、邪馬台国が後のヤマト王権にどうつながるのか。

仮に邪馬台国の王都が纒向遺跡であったとしても、地元近畿の勢力がヤマト王権を生む母体となるほどの突出した力を持っていたのか、疑問を持つ研究者も多いのです。
九州北部の伊都国(当時の倭国における大陸との交易の窓口)などはヤマト王権設立にどう関わったのか、国難をきっかけに九州の伊都国などがヤマトに遷都した可能性もあるからです。

邪馬台国とヤマト王権の関係は、まだまだ古代史の謎となっているのです。

遺跡と古墳で知る、弥生時代と古墳時代の境目とは!?
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箸墓古墳

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