「農道空港」という言葉をご存知でしょうか? 農道なのか、空港なのかハッキリしないその言葉から、なんとなく、普段は農道だけど、収穫期には空港に変身・・・とまあ、想像はできます。百聞は一見にしかずで、余市にある「余市農道空港」(正式名は余市農道離着陸場)に出かけてみました。
管制塔も整備された「空港」になっている!
まず、訪れてみて驚いたことは、かなり本格的な「飛行場」であるという点。
余市の高台を抜ける広域農道から少し入ったさらに高台に、その「空港」はありました。
すぐ脇を後志自動車道が通っています。
実は、勝手な想像なんですが、普段は広域農道として利用しつつ、りんごやサクランボの出荷時などに広域農道の一部を閉鎖して、出荷用の小型飛行機が離着陸するという、一石二鳥のものだと考えていました。
が、想像は大きく外れて、これはもう限りなく「空港」。
ちゃんと「管制塔」も設備されているんです!
まずは、農道空港の説明から。
農林水産省などによれば、農道空港とは、昭和63年に始まった農林水産省の農道離着陸場整備事業により、農道を拡幅してつくった空港の一種。
正式には「農道離着陸場」で、目下、空港種別では「場外離着陸場」に分類されています。
美唄に築かれた農道空港(現・スカイポート美唄)では、実際に仙台への空輸の実証実験も行なわれ、「離陸近し農道空港-美唄で2日、初の産直空輸。仙台にアスパラ、滑走路を仮設、2時間でひとっ飛び」(『北海道新聞』平成元年5月30日)と当初は地元も期待が大だったことがよくわかります。
農林省の肝いりで、全国に8ヶ所が建設されながらも、農道離着陸場整備事業は平成10年にあえなく中止。
つまりは「絵に描いた餅」状態で、首尾よくいかなかったというわけです。
北海道には全国8ヶ所の半数となる4ヶ所が建設されましたが、「官に問う『フライト農業』事業廃止10年 野菜の飛ばない『農道空港』甘い見通し バブル農政象徴」(『北海道新聞』平成20年6月24日)と、『道新』も20年後にはかなり手厳しい論調に。
その後の活用方法を北海道庁に解説してもらうと、
「各種スカイスポーツ(ラジコンを含む)の他に、小型飛行機の離着陸・スノーモービル・ファミリーキャンプ・自転車による耐久レース・ラジコンバギー車の練習・スポーツカイト等のレジャー施設以外に、多目的利用(ライブコンサート・自動車の展示会場・遊覧飛行・車両の走行技能訓練等)にも利用できる施設」なんだそうな。
北海道でセスナのチャーター飛行や遊覧飛行などを行なっている航空会社のホームページを見ると、余市農道離着陸場(アップルポート余市)は、公共空港・飛行場はおろか、私設飛行場にも入らず、場外ヘリポート扱い。
余市町のホームページには
「広大な滑走路を有する農道空港では、小型飛行機、スカイスポ-ツの利用の他、本町の特産品の即売会や体験飛行、各種イベントなど多目的に利用されています」とあり、以前は実際にセスナが着陸している写真が誇らしげに使われていました(現在は滑走路の写真に変更)。
余市農道空港(アップルポート余市)は、滑走路の全長800m×25mで、正式名は空港ではなく、「余市農道離着陸場」。
北海道には、北見地区農道離着陸場(スカイポートきたみ)、新得町農道離着陸場、美唄市農道離着陸場(スカイポート美唄)、余市農道離着陸場(あっぷるぽーと余市)の4ヶ所があります。
そのほか、全国には、福島市農道離着陸場(ふくしまスカイパーク・)、飛騨農道離着陸場(飛騨エアパーク)、笠岡地区農道離着陸場(笠岡ふれあい空港)、豊肥地区農道着陸場(大分県央飛行場)がありますが、いずれも状況は似ています。
余市農道離着陸場(アップルポート余市) | |
名称 | 余市農道離着陸場(アップルポート余市)/よいちのうどうりちゃくりくじょう(あっぷるぽーとよいち) |
所在地 | 北海道余市郡余市町登町742−9 |
関連HP | 余市町公式ホームページ |
電車・バスで | JR余市駅からタクシーで20分 |
問い合わせ | 余市農道離着陸場管理事務所 TEL:0135-22-2959 |
掲載の内容は取材時のものです、最新の情報をご確認の上、おでかけ下さい。 |