いずれの宗派にも属さないという善光寺は、かつては「牛に引かれて善光寺参り」といわれましたが、今も全国から多くの信者を集めています。お戒壇めぐりのできる本堂(国宝)を急ぎ足で目指す人が多いのですが、実は参道には数々の仕掛けやトリックが。今回は山門に隠された様々な仕掛けです。
TRICK3 山門に隠されたトリックを見抜け
参道を歩くと、最初に見上げる壮大な建築物が寛延3年(1750年)建立の山門(三門)で、国の重要文化財。
屋根は平成14年〜平成19年にかけて行なわれた平成大修理で、建立当時と同じ椹(さわら)の板を用いた栩葺き(とちぶき)に復原されています。
ここで注目が山門正面の楼上に掲げられた扁額。
輪王寺宮公遵法親王の筆によるものです。
これが通称「鳩文字の額」。
ここにも仕掛けが。
善光寺事務局によれば、「3文字の中に鳩が5羽隠されています」。
じっくりと額を観察すれば、すぐ気づくかと思いますが、書き順でいえば、善の文字の1・2画目、光の文字の2・3画目、寺の寸の部分の点にあたる部分が「鳩がとまっているように見える」(善光寺事務局)のです。
しかも善の文字は、全体を見ると「牛の顔に見えるようにデザインされている」(善光寺事務局)のだとか。
「牛に引かれて善光寺参り」の信仰を今に伝えています。
そしてこの額、大きさは、なんと畳3畳分もあるのです。
牛に引かれて善光寺参り
昔々、信心がなく強欲な老婆が、さらしていた布を角にかけて走っていく牛を追いかけ、ついに善光寺に至り、それがきっかけで度々善光寺に参詣するようになったという話から、
「他人の誘いや思いがけない偶然で、よい方面に導かれることのたとえ」(善光寺事務局)。
TRICK4 山門からは少し屈んで本堂を眺めると・・・
山門から眺める国宝・善光寺本堂はまさに荘厳のひとことに尽きます。
山門は本堂建築の44年後に建てられましたが、この時、本堂がより荘厳に感じられるように視覚的な演出が組み込まれました。
まずは山門石段下から本堂を眺めると、「本堂が浮き上がって見える」よう、山門基壇を参拝者の目線の高さに設定しています(江戸時代の参拝者の目線なので、背の高い人は少しかがむ必要があります)。
本堂イコール極楽浄土というイメージを、デザイン的に完成されたスタイルで、脳裏に焼き付けるような、心憎い設計なのです。
さらに、山門の真ん中に立って、じっくりと本堂を眺めてみてください。
山門の柱と梁(はり)が創出する「額縁」に本堂がスッポリと収まって見えます。
しかも本堂と山門との間の空間が左・右・上で均等に(下のイラスト参照)。
現代人の目線だと実は本堂上の空間が少し詰まっているはず。
なぜなら、山門建築時の日本人の平均身長は150cmほど。
設計上の計算より現代人の背が高いため、少し膝を折って「江戸時代の目線」で本堂を眺めてください。
善光寺に隠されたトリックを探せ!(PART2)山門編 | |
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