38愛媛県
プレスマンユニオン編集部
本芳我邸
愛媛県喜多郡内子町、国の伝統的建造物群保存地区に選定された内子町の八日市護国地区にある商家が、本芳我邸(ほんはがてい)。桟瓦葺き(さんがわらぶき)木造2階建て大壁造りの建物は芳我弥三右衛門(はがやざえもん)が明治17年に建てたもので国の重要文化財に指定されています。
木蝋の生産(晒蝋)で財を成した内子の豪商
芳我弥三右衛門は、晒蝋(さらしろう=日光で木蝋を漂白させること)の量産製法である伊予式蝋花箱晒法(いよしきろうばなはこさらしほう)を考案し内子発展の基礎を築いた人物。
芳我弥三右衛門の編み出した製法により木蝋の生産量は飛躍的に増大、本芳我家は木蝋の生産と海外輸出で財を成し、内子随一の豪商として発展するのです。
見学できるのは外観のみですが、漆喰を使った懸魚(げぎょ)や2階の随所に施された波頭文様の鏝絵(こてえ)など、贅を尽くした意匠は必見。
内子で木蝋の生産が始まったのは元文3年(1738年)、綿屋長左衛門が安芸国(現・広島県)から、蝋職人3人を招いて製蝋を行なったのが始まり。
芳我弥三右衛門は、文久年間(1861年~1864年)に伊予式蝋花箱晒法による白蝋製造で、白い蝋燭の量産に成功。
以降、八日市を中心に二十数軒の晒蝋業者が誕生し、その繁栄を背景に豪壮な蔵屋敷を築いたのです(生蝋業者は原料の櫨・はぜの生産地に近い喜多郡と宇和四郡が中心で、晒蝋業者は喜多郡内子町に集中していました)。
上芳我家(木蝋資料館上芳我邸)は本芳我家の分家で、木蝋資料館として公開されています。
箱晒法で使われる蝋蓋(ろうぶた=浅い木箱)は、本芳我家で5万箱、分家の上芳我家には2万5000箱が稼動し、木蝋生産の中心的な存在。
現在、内子町八日市護国地区伝統的建造物保存地区(国の重伝建)に選定される一帯ですが、外観のみ見学可能な本芳我家、そして資料館となっている上芳我家は必見の2軒です。
ちなみに、伊予式蝋花箱晒法は、櫨(はぜ)の実から搾った生蝋(きろう)を大釜に入れて煮溶かし、大桶に移して爽雑物を沈澱させ、アルカリ液を混和して十分に攪絆させた後、生蝋を冷水に注いでかき混ぜると、花のような結晶(蝋花)が誕生(ここまでの作業が荒煮=青だし)。
水気を取った結晶(蝋花)を蝋蓋に並べ、日光に晒し、再びこれを釜で炊くという工程を繰り返し、良質な蝋燭(ろうそく)を生産する製造法。
こうして製造される蝋燭は煤(すす)が少なく、重宝され、喜多郡出身の池田貫兵衛(いけだかんべえ=大洲出身)、河内寅二郎(こうちとらじろう=大洲出身、現存する臥龍山荘を建設)らは神戸に喜多組という貿易商社を設立、「Japan Vegetable Wax」として大阪・神戸から上海経由で海外にも輸出されたのです。
本芳我邸 |
名称 |
本芳我邸/ほんはがてい |
所在地 |
愛媛県喜多郡内子町内子2888 |
関連HP |
内子町公式ホームページ |
|
電車・バスで |
JR内子駅から徒歩20分 |
ドライブで |
松山自動車道内子五十崎ICから約2km |
駐車場 |
町並駐車場(80台/有料) |
問い合わせ |
八日市・護国町並保存センター TEL:0893-44-5212 |
掲載の内容は取材時のものです。最新の情報をご確認の上、おでかけ下さい。 |
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