愛媛県松山市久谷町にある『松山騒動八百八狸物語』に登場する狸界のスーパースター「隠神刑部」(いぬがみぎょうぶ)を封印したと伝えられる神社が山口霊神社(やまぐちれいじんじゃ)。松山城に住み着いていた古狸で、松山藩の家老・奥平久兵衛の横領を阻止しようとして失敗し、封じ込められたと伝えられています。
伊予八百八狸の総帥・隠神刑部を祀る
隠神刑部は、スタジオジブリ制作の長編アニメーション映画『平成狸合戦ぽんぽこ』(高畑勲監督、平成6年公開)で、日本三大狸の中の1匹、伊予の狸のモデルとして選ばれたことでも有名。
『平成狸合戦ぽんぽこ』でも、隠神刑部の名で、愛媛県松山市で八百八狸を統率する狸として登場しています(江戸時代、松山藩の御家騒動に関与したことを深く後悔)。
『松山騒動八百八狸物語』によれば、松山の化け狸は808匹もいて、それを統率したのが隠神刑部です。
享保の大飢饉に際して起こった松山藩のお家騒動は、文化2年(1805年)、実際に世上に起こった事件を取材した小説風の読み物『伊予名草』で詳細に記されています。
6代藩主・松平定英(まつだいらさだひで)が、享保18年5月20日(1733年7月1日)に没したことをきっかけに起こった騒動で(松平定英は大飢饉で領民への苛政が咎められ、謹慎処分後に江戸上屋敷で倒れて死亡、享年38)、家老・奥平久兵衛の謀反ともいわれています。
実際には、敵対する家老・奥平藤左衛門との主導権争いでしたが、このお家騒動が幕末に講釈師・田辺南龍(たなべなんりゅう)が狸の話を加えて脚色したのが、『松山騒動八百八狸物語』。
物語としては享保の大飢饉で幕府から借りた多額の救済金を、家老・奥平久兵衛が着服、さらに松山藩お家乗っ取りの謀反を企てるというもの。
刑部狸は最大の邪魔もので、刑部狸が統率する八百八狸はいろいろな神通力で対抗しますが、ついに敗れ去るというもの。
最終的に、松山藩士・稲生武太夫が宇佐八幡神社から授かった神杖で刑部狸の神通力を封じ込め、ついに808匹の狸は久万山上の狭い洞窟に封印されてしまったというストーリーです。
隠神刑部は、松山藩への功績も大きかったことで、「供物を供え、毎年の祭りを欠かさない」という寛大な処置となり、その証が山口霊神社ということに。
講談話のため、話し手によってもストーリーは少しずつ異なりますが、隠神刑部が封印され、後に祀られたという話は共通しています。
ちなみに隠神刑部は、天智天皇の治世(7世紀)から松山の地で808狸を従えたという古狸です。
松山市内には、松山一の美女狸・お袖狸(松山市南堀端町)、毘沙門狸(大街道3丁目)、大宮八幡神社の宮司のお使い狸・金平狸(きんぺいだぬき/上野町甲)など、今でも市内各所の神社に祀られ、土地の信仰とも結びついています。
その筆頭が伊予八百八狸の総帥・隠神刑部を祀る山口霊神社です。
| 日本三大狸・「隠神刑部」を封印! 山口霊神社 | |
| 名称 | 山口霊神社/やまぐちれいじんじゃ |
| 所在地 | 愛媛県松山市久谷町135 |
| 駐車場 | なし |
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