三角点は知っているけど、水準点は知らないという人も多いかもしれません。水準点は、国土の高さを測るための基準で、全国の幹線道路(国道など)に沿って約2kmごとに設置され、土木工事などの測量の基準に使われています。水準点のなかで最高所にあるのが、上信国境(群馬・長野県境)の渋峠にあります。
2010年8月20日に生まれた新しい水準点

まずは、三角点と水準点の違いから。
基本的に、三角点の目的は水平位置の基準とすること、水準点の目的は高さの基準とすることで役割が異なります。
三角点は測量時(三角測量、後に三辺測量)に三角点同士を見通す必要があるので、高い山の山頂に設置されています。
水準点は100m程度ごとにものさし(標尺)を立てて、高さの差を測るという水準測量を行なうため、主要な道路沿いに設置されています。
高さ(標高)は、測量法により、東京湾の平均海面を0mとして定義されています。
測量のたびに、平均海面を求めることは非効率なので、あらかじめ日本における高さを決めるための基準となる点を決めています。
それが日本水準原点で、明治24年、当時の陸地測量部内(現・東京都千代田区永田町1丁目、憲政記念館の庭園内)に設置され、日本水準原点と日本水準原点標庫は、令和元年に国の重要文化財に指定されています。
この日本水準原点を設置した際に、原点数値は24.500mと定められましたが、関東大震災で沈降したため、昭和3年に24.414mに、さらに東北地方太平洋沖地震に伴い、原点数値は24.3900mに改定されています。
ここを起点に、日本国内には国土地理院が管理する水準点が約1万6000ヶ所あり、そのうちの最高所にあるのが、国道292号(志賀草津横断ルート)途中の渋峠近く。
最高水準点のある場所には「日本国道最高地点」の石碑が立っていて、そちらに目を奪われてしまいますが、実はこの場所、足元にあるのが、日本最高所の水準点です。
行政的には、上信国境から少し上州(群馬県)側に入った群馬県中之条町にあり、二等水準点10809号で、標高2170.6m。
日本国道最高点は、標高2127mとしているので、少し低いことになります。
2010年8月20日に造標作業が行なわれていますが、もともとは有料道路だったものが、無料化し1991年7月30日に国道292号となったため、水準点が新設されたのです。
それまでの最高所の水準点は野麦峠の一等水準点971号(1672.4793m)でした。
ちなみに、明治41年に陸地測量部が設置した尾瀬国立公園内の引馬峠(福島・栃木県境)「二等水準點徳二四号」 は標高1895.6mでしたが、国土地理院は見つけられなくなったため(亡失)、戦後廃点となり、地図からも消えています(2007年8月に有志の調査で藪の中から発見されています/現在、引馬峠への登山道はありません)。
「日本最高所の水準点」は上信国境の渋峠に! | |
所在地 | 群馬県吾妻郡中之条町入山 |
場所 | 渋峠 |
電車・バスで | 長野電鉄湯田中駅から長電バス白根火山線きで60分、渋峠下車 |
ドライブで | 上信越自動車道信州中野ICから約38km |
駐車場 | 渋峠駐車場(70台/無料) |
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