東山道の水場「弁天の清水」|長野県小諸市

古代に京の都と最北の陸奥国(むつこく)を結ぶ幹線ルートだった東山道(とうさんどう)。その水場が、小諸市の中心市街地近くの諸地区に残されています。それが弁天の清水。水場のすぐ上に水神を祀る弁財天神社があることが名の由来。

近くには古代の道・東山道の「清水駅」跡も

馬に与える水を汲みに来たという酪農家も
馬に与える水を汲みに来たという酪農家も

硬度63の清水(軟水)は毎分2斗(約36リットル)も湧出。かつては上水道・生活用水・農業用水など様々な用途に利用されていました。
そしてその水場の近くには、東山道の清水の駅(うまや)が設置されていました。

東山道は律令制度が整備された7世紀以降に完成した宿駅の制度。東山道、山陽道、山陰道、東海道、北陸道、南海道、西海道の七道が制定されていました。
東山道は、京から近江(滋賀県)、美濃(岐阜県)に入り、東山道最大の難所といわれた神坂峠(みさかとうげ/恵那山の肩)を越え、さらに網掛峠を超えて伊那谷に入ります。信濃国(しなののくに=長野県)の国府が置かれた筑摩郡(現在の松本市)から小県(ちいさがた)を通り、佐久地方へと入りました。

東山道には30里(約16km)ごとに駅家(えきか/うまや)が置かれ、信濃国内には15の駅が設置されています。
平安時代の10世紀ごろに編集された『延喜式』(えんぎしき)には、佐久地方を通る東山道の駅家(えきか/うまや)と駅馬(えきば)が記されています。

駅家の名前と保有した馬の頭数は、浦野(10疋/現・青木村)、亘理(わたり/10疋/現・上田市)、清水(10疋/現・小諸市)、長倉(15疋/現・軽井沢町)、坂本(15疋/現・群馬県安中市松井田町坂本)と記され、浅間山麓を通っていたことがわかっています。

浦野、亘理、清水の駅の場所は判明していますが、次の長倉駅(ながくらのうまや)については中軽井沢の長倉神社付近が有力視されていますが、根拠とするた資料が見つかっていません。

公的な目的で旅する役人の便宜を図るため伝馬制度もつくられたため、水の確保も駅を置く場所の条件になります。
清水の駅が置かれた浅間山の豊富な伏流水が湧く諸地区は、駅を設置するには願ってもない場所だったのです。

国道18号と国道141号が合流する西原交差点のすぐ北側に、東山道清水駅跡があります。
清水の駅は全長が270mほどあり、道路をはさんで両側に、間口22m、奥行45mの地割を行なって役人たちの屋敷を確保。
道路の中央に「駒飼の堰」(水路)を通し、また屋敷北側の後ろには飲堰を流して、それに沿って「夜盗道」という小道が通しています。

この地区には朝廷に献上する馬を育てる御牧(みまき)のひとつ、「菱野牧」もあったので馬の確保も容易だったと推測できます。

東山道は、清水の駅からさらに東国を目指し、軽井沢からは入山峠あるいは碓氷峠を越えて(『群馬県史』には両論を併記し特定していません)上州(群馬県)に入り、下野国(栃木県)から陸奥国(現在の福島県、宮城県、青森県、岩手県、秋田県北東部)に抜けました。

今も行列をなして水を汲みに来ます
今も行列をなして水を汲みに来ます
皆さん大量に水を汲むので駐車場は常に満車状態
皆さん大量に水を汲むので駐車場は常に満車状態
弁天の清水
名称 弁天の清水/べんてんのしみず
所在地 長野県小諸市諸
電車・バスで JR・しなの鉄道小諸駅から徒歩20分
ドライブで 上信越自動車道小諸ICから約1km
駐車場 3台/無料
問い合わせ 小諸市役所商工観光課 TEL:0267-22-1700
掲載の内容は取材時のものです、最新の情報をご確認の上、おでかけ下さい。

 

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