富士山には山頂が9峰もある!

富士山頂9峰

富士山の最高点はお鉢(山頂火口)の西側にそびえる剣ヶ峰で3776m。国土地理院の2万5000分の1地形図には、お鉢の北側に白山岳(3756.2m)があり、三角点があるのはこの2峰だけですが、富士講時代には八葉蓮華(はちようれんげ)に例えて大日如来(大日岳)を取り囲む8峰、計9峰が山頂に数えられていました。

お鉢巡りをすれば9峰完全踏破も可能

富士山頂9峰
左端が剣ヶ峰

富士山の山頂への登山ルートは、山梨県側唯一となる富士スバルライン五合目からの吉田ルート、静岡県側の須走口五合目からの須走ルート、御殿場口新五合目の御殿場ルート、富士宮口五合目の富士宮ルートがありますが、その登山道が山頂のお鉢の縁にたどりつく場所、あるいはその周辺のピークも頂上であるため、数多くの山頂が誕生します。

富士山を御神体とする神仏習合の富士講では、富士山頂の8峰は、仏陀が坐る8枚の弁をもつ八葉蓮華に例えられ、浅間岳(3722m/大日岳=大日如来・浅間大菩薩)を中心に配し、剣ヶ峰(二等三角点3776m/剣ヶ岳=阿弥陀如来・熊野三所大権現)、白山岳(3756m/釈迦ヶ岳=釈迦牟尼如来・白山妙理大権現)、久須志岳(3725m/薬師ヶ岳=薬師如来・鹿島金山大権現)、伊豆岳(3749m/観音岳=観世音大菩薩・伊豆大権現)、成就岳(3734m/大日岳〜大日如来・浅間大菩薩)、浅間岳(3722m/大日岳=大日如来・浅間大菩薩)、駒ヶ岳(3718m/浅間ヶ岳=文殊大菩薩・箱根大権現)、三島岳(3734m/文殊ヶ岳=宝生如来・三島大明神)が八蓮弁に座すという形をとっています。

この八葉は、時代により、また登山口によっても微妙に異なりますが、これらの八峰を一巡することからお八巡りが生まれ、お鉢巡りに転じたと推測できます(諸説あります)。

明治初年の神仏分離、廃仏毀釈で、富士山は仏教色が廃され、神仏分離令により仏教由来の名称である「八葉」から神道にふさわしい「八神峰」となり、山頂の8峰の名前も変わったものもあります。

それでも白山岳は本地垂迹説で釈迦の垂迹(仏が神の姿で現れること)が白山妙理大権現(加賀・白山の山岳信仰と修験道が融合した神仏習合の神)だったため。
久須志岳は、江戸時代には東方浄瑠璃世界の教主・薬師如来を祀る薬師堂があったため、薬師ヶ岳と呼ばれていましたが、明治の神仏分離で薬師堂は廃され、久須志神社(富士山本宮浅間大社東北奥宮)に変わっています。

大日岳(朝日岳)→成就岳、成就岳→朝日岳など、山名の変更は、現在富士山頂は富士山本宮浅間大社の神域であることから、その史料に従って変更されたもの。
山梨県と静岡県の富士山世界遺産センターとは異なる場合も生じています。

吉田ルートと須走ルートは本八合目で合流するため頂上は、久須志岳、成就岳、伊豆ヶ岳、朝日岳が該当します。
朝日岳はその名の通り、日の出の名所になっています。

御殿場ルートの山頂は、浅間岳(銀明水)、駒ヶ岳、富士宮ルートは三島岳、それに加えて白山岳(金明水)、剣ヶ峰があります。

お鉢巡りは一周2.5km、所要は1時間30分。
高低差も70ほどですが、稜線を歩くので滑落には注意が必要(とくに強風時)。

富士山頂9峰
富士山には山頂が9峰もある!
掲載の内容は取材時のものです。最新の情報をご確認の上、おでかけ下さい。
富士山 剣ヶ峰

富士山 剣ヶ峰

日本の最高峰、富士山の最高地点が標高3776mの剣ヶ峰。かつてはレーダードームがあり、新幹線の車窓などからも視認できましたが、現在は富士山特別地域気象観測所が設置されています。

富士山 富士宮口山頂

富士山の正式な山頂は最高点の剣ヶ峰(3776m)ですが、それ以外にも山頂火口(大内院)を取り囲む剣ヶ峰を含める8つのピークの八神峰があり、さらに各登山口の山頂も「〇〇口山頂」と称しています。富士山スカイラインの終点から登る表富士側の富士宮口

富士山頂上浅間大社奥宮

富士山頂上浅間大社奥宮

富士宮口山頂に鎮座するのが富士山頂上浅間大社奥宮。富士宮にある富士山本宮浅間大社の奥宮です。富士講全盛の神仏習合の時代から富士山の八合目より上部は神域でしたが、明治初年の廃仏毀釈後は仏教的な色彩が一掃され(山の名からも失われ)、代わって奥宮

オールコックが登った富士山 「大宮・村山口登山道」(世界遺産)

あまり知られていませんが、江戸時代には超有名な登山道で、参詣地だったというのが富士山大宮・村山口登山道。富士山世界文化遺産(「富士山-信仰の対象と芸術の源泉」)にも「大宮・村山口登山道」として登録されています。外国人初の富士山登頂はオールコ

 

この記事が気に入ったら
いいね!しよう

最新情報をお届けします

Twitter でニッポン旅マガジンをフォローしよう!

よく読まれている記事

こちらもどうぞ