江戸時代の「鮒寿司」(なれ寿司)を当時のレシピ本通りに再現

現存する最古の寿司が湖国・近江に伝わる「鮒寿司」といわれ、琵琶湖の二ゴロブナ、近江米、塩を原料に塩漬けした魚と米を漬け込み発酵させたもの。琵琶湖博物館と龍谷大学発酵醸造食品機能性研究センターでは、江戸時代の製法での『江戸時代のフナズシの再現実験』を実施。

江戸時代のレシピ本に記載の方法で鮒寿司を再現

『合類日用料理抄』
『合類日用料理抄』(個人蔵)

現在の鮒寿司の一般的な製法は、春に獲った二ゴロブナを塩漬けにし、夏の暑い時期になると取り出して、ご飯とともに丸ごと漬け込み、正月までの4ヶ月と長期にわたっての乳酸発酵させるのが「鮒寿司」(正月には食べ頃を迎えます)。
発酵が進むにつれて「馴れる、熟れる」ことから「なれ寿司」とも呼ばれています。

産生する乳酸によって骨が軟らかくなり、骨まで食べることができる保存食で、琵琶湖博物館の2024年調査では、滋賀県民の76%が「食べたことがある」と回答しています。
近江では、古くから腹痛や体調不良の際は、薬の代わりに「鮒寿司」を食す習慣があったといい、滋賀県の無形民俗文化財「滋賀の食文化財」にも選ばれています。

江戸時代初期、元禄2年(1689年)編纂の料理書『合類日用料理抄』(ごうるいにちようりょうりしょう)には、現在とは異なる冬季の一番寒い時期に漬ける(旧暦12月に漬ける)という前提で、寒鮒を用いて(二ゴロブナを塩漬けすることなく)、頭を叩いて壊し、1匹丸ごとを蒸した糯米(もちごめ)の玄米に折敷(おりしき=四角いお盆)を利用して70日漬け込むと記されています。

この製法で果たして鮒寿司ができるのか、琵琶湖博物館ではサントリー文化財団の助成金を活用して江戸時代の鮒寿司の再現実験に挑んだのです。

2025年3月15日(土)13:30〜17:00には、滋賀県立琵琶湖博物館 セミナー室(滋賀県草津市下物町1091)で、『江戸時代のフナズシの再現実験』の報告会『江戸時代のフナズシに、挑戦する』も開催予定です。

ちなみに、低温の冬場に漬けた場合も発酵に時間は要するものの鮒寿司にはなりますが、現在食されている鮒寿司とは少し異なる性質だったことが判明。
江戸時代の鮒寿司は塩味が強く酸味と甘味が弱い、米粒が残る、フナが硬いなどの特徴があり、やはり、食べやすいように変化してきたのだと推測できます。

実験を行なった龍谷大学農学部生命科学科・ラボラトリー専門助手の吉山洋子氏によれば「米・魚・道具などの技術の進歩、より甘く、酸っぱく、飯・骨は柔らかくといった味の嗜好の変化、そして、温暖化による気温上昇といった環境の変化が考えられる」としています。

詳細に関しては、『江戸時代のフナズシの再現実験』の報告会にご参加を。

鮒寿司
現代の鮒寿司
江戸時代の「鮒寿司」(なれ寿司)を当時のレシピ本通りに再現
関連HP 琵琶湖博物館公式ホームページ
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滋賀県立琵琶湖博物館

滋賀県立琵琶湖博物館

琵琶湖の南東岸、滋賀県草津市にある滋賀県立琵琶湖博物館。琵琶湖に突き出た烏丸半島に建てられ、「湖と人間」をテーマに、琵琶湖の誕生から現在までの歴史や、湖の環境と、人や生き物のかかわりについて学ぶことができます。令和2年10月10日にリニュー

 

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