10群馬県
プレスマンユニオン編集部
伊香保御用邸跡
群馬県渋川市にある伊香保御用邸跡は、ベルツ博士がその環境を賞賛した伊香保温泉に明治26年に建設された木造2階建てだった皇室の離宮。皇室の御料地(夏の避暑地)として、明治23年に選定されたもの。もともとは元老院議官・金井之恭(かないゆきやす)の別荘と周辺を買い上げて「伊香保御料地」としたもの。
皇室が避暑に訪れた離宮の跡
明治20年に発行された『諸国温泉一覧』(江戸時代の温泉番付を踏襲しながらも、明治19年の内務省の全国温泉効能調査『日本鉱泉誌』を反映させたもの)で、東の関脇に番付されたのが伊香保温泉(東の横綱は草津温泉)。
「日本の近代医学の父」といわれるベルツ博士(Erwin von Bälz)は、日本の温泉の状態と、温泉地の改善案を内務省に建白していますが、その文書が翻訳され、明治13年7月に『日本鉱泉論』として出版。
その後、江戸時代には湯治客を受け入れた温泉旅館の主人たちは、「内務省とベルツ博士のお墨付き」ということを巧みに使い、旅行書や錦絵を使い、伊香保温泉の温泉の効能、転地療法をPRします。
こうして明治20年代には、混雑する夏を避け、4月〜6月に温泉療養するのがおすすめという記載が出るほどの繁栄を迎えます。
こうした、文明開化、温泉の効能分析、伊香保温泉の賑わい、明治17年の日本鉄道高崎駅延伸などを背景に、明治23年、宮内省は皇室の御料地(夏の避暑地)として伊香保温泉を選定しているのです。
明治44年には、迪宮裕仁親王(みちのみやひろひとしんのう=昭和天皇)、淳宮雍仁親王(あつのみややすひとしんのう=秩父宮雍仁親王/ちちぶのみややすひとしんのう)、光宮宣仁親王(てるのみやのぶひとしんのう=高松宮宣仁親王/たかまつのみやのぶひとしんのう)も避暑のために滞在しています。
大正9年に亀屋旅館2階から出火し、伊香保温泉全焼という大火がありましたが、その際には焼失を免れています。
昭和26年に、文部省に払い下げられ、その後、昭和27年7月20日に残念ながら建物は焼失しています。
現在は、群馬大学伊香保研修所の敷地となっていますが、敷地の一部に沓脱石(くつぬぎいし)が保存され、見学することが可能。
沓脱石は北側の玄関にあった靴を脱ぐための石で、その場所は往時のまま。
古来、日本人は大地を穢れ(けがれ)と考え、家を神聖なる場とする考え方があり、とくに宮廷には伝統的な思想から、沓脱石が配されていたと推測できます。
伊香保御用邸跡 |
名称 |
伊香保御用邸跡/いかほごようていあと |
所在地 |
群馬県渋川市伊香保町伊香保 |
|
電車・バスで |
JR渋川駅から関越交通バス伊香保温泉行きで27分、終点下車、徒歩5分 |
ドライブで |
関越自動車道渋川伊香保ICから約11km |
駐車場 |
渋川市営物聞駐車場(62台/有料) |
問い合わせ |
渋川伊香保温泉観光協会 TEL:0279-72-3151 |
掲載の内容は取材時のものです。最新の情報をご確認の上、おでかけ下さい。 |
この記事が気に入ったら
いいね!しよう
最新情報をお届けします
Twitter でニッポン旅マガジンをフォローしよう!
ABOUTこの記事をかいた人。

プレスマンユニオン編集部
日本全国を駆け巡るプレスマンユニオン編集部。I did it,and you can tooを合い言葉に、皆さんの代表として取材。ユーザー代表の気持ちと、記者目線での取材成果を、記事中にたっぷりと活かしています。取材先でプレスマンユニオン取材班を見かけたら、ぜひ声をかけてください!
-
日光東照宮・三猿
日光東照宮の神馬(しんめ)の厩舎(きゅうしゃ)である神厩舎の長押には、人間の人生を表す合計で16匹の猿が彫られています。そのうち、もっとも有名な猿が「見ざる、言わざる、聞かざる」の三猿(さんえん・さんざる)です。厩舎に猿...
-
5月29日【今日は何の日?】
5月29日は、与謝野晶子命日(白櫻忌・晶子忌)、登山家エドモンド・ヒラリーとテンジン・ノルゲイ(シェルパ)によってエベレストは初登頂されたエベレスト登頂記念日、5(ご)29(ふく)の語呂合わせで、「呉服の日」、5(こん)...
-
5月28日【今日は何の日?】
5月28日は、旧暦で在原業平(ありわらのなりひら)の忌日で業平忌、8代将軍・徳川吉宗が隅田川で花火を打ち上げた花火の日、屋久島で縄文杉発見の日、ゴルフの日、辰雄忌(堀辰雄命日)、豊臣秀吉が肥前名護屋城で「黄金の茶室」を披...
-
日光東照宮・眠り猫
日光東照宮の本社(本殿・石の間・拝殿)を取り囲む東西回廊(国宝)のうち、東回廊に備え付けられた奥社へと続く潜門(国宝)の蟇股(かえるまた=梁の上でカエルの股のように下方に開いて荷重を支える部材)に配された彫刻が有名な眠り...
-
面積の大きい湖 TOP10
日本最大の湖といえば琵琶湖ですが、では2番目というと、正解率は一気に下がります。東海地区の人は、浜名湖はベスト5入りしていると確信していますが、実は浜名湖は10位。大きさ順にいえば、琵琶湖、霞ヶ浦、サロマ湖、猪苗代湖、中...
-
日本三大聖天とは!?
聖天(しょうでん、しょうてん)とは、仏教の守護神の歓喜天(かんぎてん=歓喜自在天)のこと。四天王、帝釈天、吉祥天、弁財天、鬼子母神、大黒天などと同様に天部の神のひとつです。それを祀る日本三大聖天は、妻沼聖天(歓喜院)、待...
-
日本三大カルストってどこ!?
授業で習った「カルスト地形」。地表に露出した石灰岩が雨水などで浸食されて誕生した地形のこと。実は、日本各地にこの石灰岩地帯はあるのですが、日本三大カルストと呼ばれる大規模な奇観は、有名な秋吉台(山口県美祢市)、四国カルス...
-
国分寺(四国八十八ヶ所霊場第29番札所)
聖武天皇の勅願で全国に建てられた国分寺のひとつ、土佐国分寺として741(天平13)年、行基が創建という古刹で、本尊の千手観音像、脇侍の不動明王、毘沙門天ともに行基の作と伝わります。のちに空海が42歳の折に星供の秘法を修め...
-
日本三大稲荷とは!?
商売繁盛、芸能上達の神様として知られ、繁華街などにも祀られているのが「お稲荷さん」と通称される稲荷神(いなりのかみ、いなりしん)。日本三大稲荷とされるのが、伏見稲荷大社(京都市)、笠間稲荷神社(茨城県笠間市)、そして豊川...
-
赤城神社
赤城山への自然崇拝がルーツで、平安時代編纂の『延喜式神名帳』に名神大社「勢多郡 赤城神社」として記載される古社、赤城神社。上毛野国(かみつけのくに/現在の群馬県)二之宮(一之宮は貫前神社)。赤城山頂、大沼(おの)の小鳥ヶ...