確実に誤解を生む! まさかの天守閣(16)浜松城|静岡県

地元、静岡県浜松市では「徳川家康の出世城」とPRするのが、徳川家康が29歳から17年間居城し、天下統一の基盤を築いた場所、そして江戸時代には幕府の重臣の居城となったことが名の由来です。浜松城公園となった本丸には、鉄筋コンクリートの天守がそびえ立っていますが、実は復元天守ではなく、模擬天守なのです。

戦国時代末期に堀尾氏が天守を建築

浜松城公園に立つ若き日の徳川家康像

浜松城は、徳川家康が元亀3年12月22日(1573年1月25日)、武田信玄との三方ヶ原の合戦で手痛い敗北を喫し、命からがらに逃げ込んだという城。
逃げ込んだ後、城門を開いて篝火を焚き、武田軍を惑わす作戦に出て九死に一生を得たともいわれる大ピンチでした。

家康にとっては本能寺の変後の堺脱出(伊賀越え)と並んで人生最大級の危機だったことが知られていますが、浜松城の強固な城郭が武田軍のさらなる追走を阻んだとも推測できます。

家康が居城を岡崎城から浜松城に移したのは、元亀元年(1570年)。
駿河侵攻を目論む武田信玄への対策としてです。
三方ヶ原合戦後、当然、城を拡張充実させていますが、武田氏滅亡後の天正14年(1586年)には駿府城(静岡市)に居城を移しています。

江戸時代には浜松藩の藩庁となり、老中や京都所司代など幕府の要職を多数輩出した譜代大名が入城していますが、本丸にあった二重櫓が天守代用とされていたため、天守はなかったと推測されています。

最新の発掘調査で、本丸、二の丸の全貌が明らかとなり、徳川家康時代には土造りの城で、石垣の多くが築かれたのは近世になってからということも明らかになっています。
ただし、天守曲輪に高さ3mの石塁(石垣)、瓦などが見つかっており、天正18年(1590年)から豊臣秀吉の家臣・堀尾吉晴と、その次男・堀尾忠氏が合わせて11年間在城した時代に、天守らしき瓦葺きの建物が創建されたことが判明しています。

藩政時代には天守がなかった!?

天守曲輪入口に復元された天守門

現在の浜松城公園にそびえる天守は、昭和33年4月26日に完成した復興天守。
コンクリート造り、地上3階地下1階建てで、最上階は展望室、それ以外は出世城を解説する資料館となっています。
造りもなかなか精緻で、外観的にも石落としなども再現され、あたかも往時の天守を復元したかの趣があります。

実は、この天守、江戸時代の絵図など史料がまったくないために、名古屋工業大学名誉教授・城戸久が、丸岡城の現存天守をモデルに設計したもの(丸岡城をモデルにした模擬天守はほかにもあります)。
しかも天守台に対し、その大きさの3分の1ほどしか使っていないため、戦国時代の天守の規模はさらに大きかった可能性も有しているのです。

実際に、浜松城に天守があったとしても江戸時代のごく初期までのこと。
藩政時代を通じて、天守がなかった時代の方が多く、しかも現在の復興天守も史料的な裏付けがないため、単なる博物館・観光施設という位置づけになってしまうのです。

天守と同時に築かれたと推測される天守門は、幕末まで存続。
発掘調査、史料を活かして復元されているので、ぜひ天守門にも注目を。

「出世城」のシンボルとして機能する浜松城の天守ですが、実は出世とはまるで結びつきがない建物ということに。
それでも資料館、観光施設としては十分に楽しめる内容となっています。

近年、精力的な調査が行なわれているので、将来、浜松城天守再建の際には、堀尾時代の天守が復元されるかもしれません。

見上げる天守曲輪には天守門と模擬天守が
確実に誤解を生む! まさかの天守閣(16)浜松城|静岡県
名称 浜松城/はままつじょう
所在地 静岡県浜松市中区元城町100-2
電車・バスで JR浜松駅から遠鉄バスで6分、浜松城公園入口下車、徒歩すぐ。または、遠州鉄道鉄道線遠州病院駅から徒歩13分
ドライブで 東名高速道路三方原スマートICから約5.5km
駐車場 浜松城公園駐車場(55台/1時間30分まで無料、以降有料、施設利用による無料サービスあり)
掲載の内容は取材時のものです。最新の情報をご確認の上、おでかけ下さい。

浜松城

1570(元亀元)年、武田信玄の西侵に備えるため、徳川家康は本拠地を三河国岡崎城(現・愛知県岡崎市)から遠江国浜松荘へ移します。さらに当時の地名、曳馬という名が「馬を引く」(敗北)に通じることから浜松荘(荘園の名)に因んで浜松と改めています

出世にご利益大! 浜松城に登城せよ!

「徳川家康が17年間在城した浜松城は、江戸幕府300年の原点となった出世城なんです!」と、強調するのは浜松市の観光関係者。しかも浜松市のキャラクター「出世大名家康くん」は、浜松市で開催の『ゆるキャラグランプリ2015』では地の利を活かして4

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