福島県福島市、飯坂温泉に9ヶ所ある共同湯(共同浴場)のなかでもっとも有名なのが鯖湖湯(さばこゆ)。元禄2年5月2日(1689年6月18日)、『奥の細道』途中の松尾芭蕉、曾良が入浴したと推測されるのもこの鯖湖湯だといわれています。現在の建物は平成5年の再建で、欅(けやき)、檜(ひのき)などを使い、明治時代の共同湯を再現したもの。
湯船の周囲に蛇口、鏡はありません!
福島交通飯坂温泉駅から湯沢通りを5分ほど歩いた湯沢地区にある共同湯。
鯖湖湯に寄り添うように建っている鯖湖神社境内には、「飯坂温泉発祥の地」の碑があり、一帯の湯沢地区が飯坂のルーツであることを示しています。
旧堀切邸、国の登録有形文化財に指定される白壁土蔵造りの木造三階建ての「なかむら屋旅館」(日帰り入浴も可能)も同じ湯沢地区にあるのでお見逃しなく。
木造りの鯖湖湯の浴室は御影石(みかげいし)の石張り、アルカリ性単純温泉が湯船に源泉かけ流しで注がれています(飯坂温泉の共同湯はすべて源泉かけ流し)。
明治時代の共同湯がコンセプトのため、洗い場に鏡はもちろん、蛇口もありません。
体を洗うより、風情とお湯を楽しむという目的で入浴を。
「共同湯の中では最も温(ぬる)い」といわれていますが、それでもかなり熱めの設定です。
外に置かれる貯湯槽も樽型なのにも注目を。
源泉は湯沢分湯槽(源泉温度:51度)で、泉質は単純温泉(アルカリ性低張性温泉)。
芭蕉が入浴したのは鯖湖湯!?
鯖湖湯近くには「芭蕉と曽良入浴の地」碑も立っていますが、現在の芭蕉研究で、芭蕉たちが入浴したのは滝の湯ではなく、鯖湖湯あるいは当座湯であろうとの結論から。
『奥の細道』の飯坂の記述は、「其夜飯塚にとまる。温泉あれば、湯に入て宿をかるに、土坐に筵を敷て、あやしき貧家也。灯もなければ、ゐろりの火かげに寝所をまうけて臥す」(その夜は飯塚に宿泊。温泉があるので入浴後に宿を探したが、宿は土間に筵を敷いただけの薄汚い貧乏家。灯火もないので、囲炉裏のそばに寝床を取って寝る)というもので、あまり良い評価とはいえません。
飯坂を飯塚と誤記しているのは、意図してなのか、ミスなのかも定かでありません。
芭蕉が飯坂に寄り道したのは、医王寺参詣も大きな目的。
医王寺は、源平合戦で活躍した源義経の家臣・佐藤継信、忠信ら佐藤一族の菩提寺。
義経に思い入れのある芭蕉にとっては、平泉訪問の前にぜひ寄りたい場所だったのです。
名称 | 飯坂温泉・鯖湖湯/いいざかおんせん |
所在地 | 福島県福島市飯坂町湯沢32 |
関連HP | 飯坂温泉公式ホームページ |
電車・バスで | 福島交通飯坂温泉駅から徒歩5分 |
ドライブで | 東北自動車道福島飯坂ICから約3.5km |
駐車場 | 飯坂町若葉町公共駐車場 |
問い合わせ | TEL:024-542-5223 |
掲載の内容は取材時のものです。最新の情報をご確認の上、おでかけ下さい。 |
最新情報をお届けします
Twitter でニッポン旅マガジンをフォローしよう!
Follow @tabi_mag