鳥取県因幡地方では「いもこん鍋」という郷土料理があります。実はこの鍋、鳥取藩の下級武士が「因幡の半知」(いなばのはんち)といわれる貧乏生活を強いられた時に生み出した庶民派の料理。手軽な材料で、美味しくいただけるということで、気軽にチャレンジすることができます。
「因幡の半知」と「いもこん鍋」の関係は!?
かつて「因幡の半知」(いなばのはんち)という言葉があったほど、貧乏だった鳥取藩。
自称32万石の大名ですが、実は16万石の石高しかないので石高を倍に水増し。
格式を重んじた鳥取藩士たちですが、実は質素倹約の生活を強いられていたのです。
半知は、江戸時代、切迫する藩財政救済のため、藩主が借り上げた形にして家臣の知行・俸禄を半分に減じた施策のこと。
今風にいえば「サラリー半減」といった感じです。
その対策で下級武士は庭を野菜畑にして、里芋やこんにゃくを自家栽培。
それに賀露村(かろそん=現在の鳥取港)で揚がるイワシの干物の3品が酒の肴でした。
「いもこん・干鰯(ほしか)」は、こんな鳥取藩の下級武士の食生活を表す言葉。
イワシを天日で干した干鰯は、本来は土に混ぜる肥料とするもの。
もったいなくて土に混ぜずに食するくらいですから、かなり生活が困窮していたと推測できます。
明治法律学校(後の明治大学)を創立した岸本辰雄(きしもとたつお)は23俵4人扶持という最下級武士の家の次男ですが、この「いもこん鍋」を食べながら育ち、自由民権運動のなか活躍したのです。
伝統の「いもこん鍋」には、鳥取市の教育委員会体育課が発表している学校給食のレシピ、鳥取県食のみやこ推進課の提供するレシピの2通りの「公的レシピ」がありますが、今回、実際に作ってみたのは簡単な学校給食のレシピをベースに、ネギの切り方は鳥取県食のみやこ推進課方式を採用しました。
鳥取市の学校給食の「いもこん鍋」レシピ
(鳥取市教育委員会体育課)
【材料】(4人分)
- こんにゃく=60g
- 若鶏もも肉=80g
- 里芋=150g
- 大根=1/6本
- 人参=1/4本
- ゴボウ=1/4本
- 白ネギ=1/2本
- 和風だしのもと=少々
- こいくち醤油=小さじ4
- 味醂=小さじ1
- 砂糖=小さじ2
【作り方】
- 若鶏肉はこま切れ、里芋、こんにゃくは一口大に、大根、人参はいちょう切り、ゴボウは乱切り、白ネギは斜め切りにしておきます。
- 里芋、こんにゃくは、さっと茹でておきます。
- 鍋に白ネギ以外の材料と水を入れて煮ます。
- 材料が柔らかくなってきたら、和風だしのもと、醤油、味醂、砂糖を入れて調味し、白ネギを加えてさらに煮込みます。
- 味がしみ込んだらでき上がりです。
家庭でつくる「いもこん鍋」レシピ その2
(資料提供:鳥取県食のみやこ推進課・鳥取県東京事務所)
【材料】(4人分)
- こんにゃく=300g
- 大根=300g
- 里芋=300g
- 人参=100g
- ゴボウ=50g
- 鶏もも肉=170g
- ネギ=適当量
- サラダ油=大さじ1
- B調味液
だし汁=3カップ
醤油=50cc
酒=大さじ1
味醂=大さじ1
酢=大さじ2分の1 - A調味液
醤油=大さじ2
砂糖=大さじ3分の2
一味唐辛子=お好みで少々)
【作り方】
- 大根は大きな乱切りに
- 里芋は皮をむき、丸のままさっと湯がいて大きなものは半分に切る
- こんにゃくはさっと湯がいてアクを取り、手で大きめにちぎり、から炒りにして水分を飛ばした後、A調味液で汁気がなくなるまで炒り煮する
- 人参、ゴボウを乱切りにし、さらに鶏肉も同じくらいの大きさにカット
- 鍋にサラダ油を熱して、鶏肉とゴボウを炒める
- 出汁(だし)を加えて加熱し沸騰したら、大根と人参を入れて煮る。大根が柔らかくなったら、里芋も加える
- 里芋が半煮え(切り口を見て色の変わった部分が半径の半分に達したくらい)になったら、B調味液を入れ、弱火でゆっくり味を含ませる
- 最後に(3)のこんにゃくを加える。ネギは椀にいれる前に散らす
鳥取の郷土料理「いもこん鍋」を家庭で作る! 【レシピ付解説】 | |
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