岩手県滝沢市、岩手山の南東山麓にそびえる標高896.7mのピークが、鞍掛山。宮沢賢治の詩集『春と修羅』にある『くらかけの雪』の詩碑が相の沢キャンプ場の登山口にあり、宮沢賢治ゆかりの地ということで、国の名勝「イーハトーヴの風景地」のひとつにもなっています。
詩『小岩井農場』など宮沢賢治作品に数多く登場する山
新緑の季節から雪上ハイクまで楽しめる手軽な山ということで(野生生物に対する防疫の観点からペット同伴の登山は禁止)、年間3万人もの登山客を集める山で、毎年4月29日に、『鞍掛山開き』が行なわれ、5月~10月がベストシーズンです。
登山口(相の沢キャンプ場)から鞍掛山山頂へは、徒歩1時間20分。
相の沢キャンプ場の駐車場には、平成5年6月に建立された『くらかけの雪』詩碑が立っています。
鞍掛山麓には、鞍掛山麓遊歩道(相の沢牧野を望む「あいのさわ遊歩道」と、どんぐりの森の中の「くらかけ遊歩道」の2コース)があるので、鞍掛山登山で歩き足らない人は、鞍掛山麓遊歩道をプランに加えるのもいいでしょう。
とくに「あいのさわ遊歩道」では5月〜10月に放牧風景を目にすることができます。
一見すると岩手山の寄生火山(側火山)のように見えますが、実は岩手火山群中の古期の火山と推定され、地質に詳しい宮沢賢治も詩『国立公園候補地に関する意見』で、「大地獄よりまだ前の 大きな火山のへりですからな」と記し、詩『小岩井農場』で、「あれはきっと 南昌山や沼森の系統だ 決して岩手火山に属しない。 事 によったらやっぱり 石英安山岩かもしれない」と記し、岩手山ができる前の古い山体の一部だと考えていました。
なだらかな山容で、岩手山を馬の背とすれば、馬の鞍に見えることから鞍掛山という名が付いたと推測できます。
鞍掛山に関する宮沢賢治作品は、『くらかけの雪』のほか、『小岩井農場パート1』、『小岩井農場』下書、『滝沢野』、『白い鳥』、『一本木野』、『国立公園候補地に関する意見』、『春谷暁山』下書、『つめたい風はそれで吹き』などがあり、まさに賢治の心象風景になっていたことがわかります。
国の名勝「イーハトーブの風景地」に指定される宮沢賢治作品の源泉となった場所は、鞍掛山のほか、花巻市のイギリス海岸、釜淵の滝、岩手郡雫石町の七ツ森(7つの連なった低山の総称)、狼森(おいのもり/小岩井農場内の森)、滝沢市の鞍掛山、花巻市、遠野市、奥州市の五輪峠(ごりんとうげ)、奥州市、気仙郡住田町、遠野市にまたがる種山ヶ原(種山ヶ原モナドノックス)があります。
宮沢賢治『くらかけの雪』
たよりになるのは
くらかけつづきの雪ばかり
野はらもはやしも
ぽしゃぽしゃしたり黝(くす)んだりして
すこしもあてにならないので
ほんたうにそんな酵母(かうぼ)のふうの
朧(おぼ)ろなふぶきですけれども
ほのかなのぞみを送るのは
くらかけ山の雪ばかり
(ひとつの古風な信仰です)
誌集『春と修羅』より
鞍掛山 | |
名称 | 鞍掛山/くらかけやま |
所在地 | 岩手県滝沢市市有林22林班及び23林班 |
関連HP | 滝沢市公式ホームページ |
電車・バスで | JR小岩井駅からタクシー20分で相の沢キャンプ場 |
ドライブで | 東北自動車道盛岡ICから約19kmで相の沢キャンプ場 |
駐車場 | 登山口駐車場(相の沢キャンプ場) |
問い合わせ | 滝沢市観光物産課 TEL:019-656-6534/FAX:019-684-5479 |
掲載の内容は取材時のものです。最新の情報をご確認の上、おでかけ下さい。 |
最新情報をお届けします
Twitter でニッポン旅マガジンをフォローしよう!
Follow @tabi_mag