松尾鉱山・緑ヶ丘アパート跡

岩手県八幡平市、八幡平アスピーテライン途中、御在所園地（御在所湿原）近くにあるのが、松尾鉱山・緑ヶ丘アパート跡。昭和47年10月に閉山となった松尾鉱山の鉱山関係者とその家族のための住居として昭和26年に建設されたアパート群で、廃墟となって残され、車窓から眺めることができます。

水洗トイレ、セントラルヒーティング完備の鉱山住宅

明治15年頃に露頭が発見され、大正3年に松尾鉱業が創立、硫黄の採掘と精錬を本格的に開始。
大正末ごろには国内需要の約半分を生産する一大硫黄鉱山へと成長しています。
昭和10年代には生産量が急増し、国内需要の約8割を占める「東洋一の硫黄鉱山」と呼ばれるまでに成長、最盛期には精錬硫黄約10万トン（昭和42年）を生産していますが、石油精製時にできる回収硫黄に押されて昭和47年10月に閉山となっています。

標高1000mほどの採掘地・元山（もとやま）に近い緑ヶ丘（標高900m前後）には新たに活気あふれる鉱山町が誕生し、最盛期には鉱山従事者4500人、家族を合わせて「ヤマ」の人口は1万3000人を数えるほどになったのです。
大正5年6月1日には寄木小学校元山分教場が開校、戦後は、松尾鉱山小学校、松尾鉱山中学校となっています（昭和24年には松尾鉱山高校も開校）。
鉱山町には小学校、中学校、高校、郵便局、映画館、芸能人を招いてショーもできる会館、そして病院、スーパーマーケット的な商店を備え、「雲上の楽園」と呼ばれるほどに。
松尾鉱山中学校は花巻中学校とともに、当時、岩手県で2校しかない鉄筋校舎の中学校で、モダンな町だったことがよくわかります。

緑ヶ丘アパートは、鉱山の発展と戦後のベビーブームを背景に、昭和26年に6棟、昭和26年に5棟が建設。
煙突がある建物はアパート全体に暖房を供給するボイラー棟で、少し離れた八幡平アスピーテライン沿いには、管理職クラスの独身寮「至誠寮」の建物も残されています。

緑ヶ丘アパートも岩手県内では初となる4階建て鉄筋コンクリート造り（各棟は「いろはにほ・・・」で分類）で、当時まだ珍しかった水洗トイレやセントラルヒーティングなどの最新設備を完備し、上流生活のような暮らしがあったのです（光熱費、水道代は無料でした）。
山麓の人々は、松尾鉱山へ買い物や映画・演劇観賞に出かけるのが楽しみだったとのことで、まさに「雲上の楽園」が、この地に。

大正3年には硫黄輸送と日用物資搬入のための松尾鉱業鉄道も創業し、昭和23年には花輪線大更駅（おおぶけえき）〜東八幡平駅（屋敷台）が地方鉄道として開業、上野駅から臨時夜行急行列車「八幡平」が乗り入れるなど、旅客輸送も行なわれました（昭和47年10月10日全線廃止）。

負の側面としては、鉱毒水問題を抱え、今も鉱毒水の流出は続いているため、中和処理施設で処理（バクテリア酸化・炭酸カルシウム中和方式）が続けられています（中和処理施設は見学が可能）。

緑ヶ丘アパート跡は国有地内で、しかも危険があるため、立ち入りはできません。
廃墟探検も厳禁。

松尾鉱山・緑ヶ丘アパート跡
名称	松尾鉱山・緑ヶ丘アパート跡／まつおこうざん・みどりがおかあぱーとあと
所在地	岩手県八幡平市松尾寄木第2地割5−11

ドライブで	東北自動車道松尾八幡平ICから約13km
問い合わせ	八幡平市観光協会 TEL:0195-78-3500／FAX:0195-78-3838
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