【知られざるニッポン】vol.35 新潟県唯一の国宝は「火焔型土器」

火焔型土器

新潟県には重要文化財が80件以上ありますが、実は国宝に指定されるのは1件。その1件が実は風変わりな形をした縄文土器だということは、あまり知られていません。実は、この火焔型土器、そのほとんどが新潟県内の縄文遺跡から出土し、しかも信濃川流域の河岸段丘上にある縄文遺跡に集中するというご当地性もたっぷりな特殊なデザインだったのです。

火焔型土器は、十日町市博物館に常設展示

十日町市博物館
博物館入口のレプリカで解説する佐野誠市館長

国宝が1件と紹介しましたが、正式な国宝の指定名称は「新潟県笹山遺跡出土深鉢形土器」。
実は、メインとなる火焔型土器を含む928点の出土品で構成されている国宝の総称だったのです。

収蔵展示するのは、新潟県十日町市にある十日町市博物館。
「十日町市内の笹山遺跡から出土した深鉢形土器(注/縦の長さ=深さが横の長さ=広さに勝る鉢)のなかに火焔型が14点、王冠型が3点含まれています」
とは、十日町博物館館長の佐野誠市さんの解説。
ちなみに、「火焔型土器」、「王冠型土器」とは信濃川流域の縄文遺跡から出土するの独特なスタイルに付けられた名称です。

笹山遺跡は、信濃川の河岸段丘上に位置する、縄文時代中~後期の集落跡と、鎌倉時代から戦国時代の居館跡(ないし集落跡)。
竪穴住居跡13基(炉跡を伴う)、炉跡105基、配石遺構1基、土坑10基、埋設土器(埋甕)30基以上が発見されているのです。
「皆さんが注目されるのは、やはり縄文時代中期中葉(注/5300~4800年前)の火焔型土器。火焔型土器を中心とする土器、石器、ベンガラ塊合計928点が平成11年に国宝に指定されています」(佐野誠市館長)。

指定番号1の火焔型土器(「縄文雪炎ーじょうもんゆきほむらー」、「火焔型土器No.1」、「ナンバーワン」などの愛称があります)は、そのプロポーションと残存率の高さから「縄文土器の白眉」とまでいわれ、平成4年にアーサー・M・サックラー美術館(ワシントンD.C.)、平成10年に日本文化会館(パリ)、平成13年には大英博物館(ロンドン)にも出展され、「日本の原始美術を代表する土器」として欧米でも話題に。

火焔型土器からはお焦げが見つかっているので、煮炊きに使われたことが判明していますが、祭祀など非日常的な用途に供された可能性も・・・。

ちなみに国宝に指定されている土器は多数あるため、十日町市博物館では随時入れ替えながら展示しています。
指定番号1の火焔型土器の展示期間は、ホームページに掲載されているので、指定番号1にこだわる人は、まずは展示期間の確認を。

岡本太郎が、「なんだ、コレは!」と驚いた

火焔型土器

信濃川流域の縄文遺跡に集中して出土する特異な火焔型土器。

周辺の関連市町村で信濃川火焔街道連携協議会(十日町市、津南町、長岡市、新潟市、三条市で組織)が結成され、2020年の東京オリンピック・パラリンピックには、「火焔型土器をモチーフにした聖火台を」という運動を展開中なんだとか。

「日本固有の文化として誇るべき縄文文化を世界へ発信し、その代表として火焔土器を発信する」
というわけなのです。

2016年4月、「『なんだ、コレは!』信濃川流域の火焔型土器と雪国の文化」は文化庁が認定する「日本遺産」(JAPAN Heritage)にも新潟県内としては初認定と、信濃川火焔街道連携協議会では力を入れてPRしています。

縄文文化大好きといえば、諏訪の『御柱祭』で「縄文の血が騒ぐ」と言った芸術家・岡本太郎氏ですが、その岡本太郎が、「なんだ、コレは!」と驚いたというのが実はこの火焔型土器だったのです。

「縄文土器の荒々しい、不協和な形態、紋様に心構えなしにふれると、誰でもがドキッとする。なかんずく爛熟した 中期の土器の凄まじさは言語を絶するのである」(岡本太郎『伝統との対決』ちくま学芸文庫)。

なぜ縄文時代の土器が国宝なのか、お分かりいただけましたよね。

十日町市博物館
名称 十日町市博物館/とおかまちしはくぶつかん
所在地 新潟県十日町市西本町1-382-1
関連HP 十日町市博物館公式ホームページ
電車・バスで JR飯山線・北越急行ほくほく線十日町駅から徒歩10分
ドライブで 関越自動車道六日町ICから約17.7km。越後川口ICから約19km
駐車場 10台/無料
問い合わせ 十日町市博物館 TEL:025-757-5531/FAX:025-757-6998
掲載の内容は取材時のものです、最新の情報をご確認の上、おでかけ下さい。
十日町市博物館

【南魚沼・十日町取材レポート】No.5 十日町市博物館

2018年5月21日
十日町市博物館

十日町市博物館

2018年5月21日

 

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ラジオ・テレビレジャー記者会会員/旅ソムリエ。 旅の手帖編集部を経て、まっぷるマガジン地域版の立ち上げ、編集。昭文社ガイドブックのシリーズ企画立案、編集を行なう。その後、ソフトバンクでウエブと連動の旅行雑誌等を制作、出版。愛知万博公式ガイドブックを制作。以降、旅のウエブ、宿泊サイトにコンテンツ提供、カーナビ、ポータルサイトなどマルチメディアの編集に移行。

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