江島神社・奥津宮

江島神社・奥津宮

神奈川県藤沢市、江の島に鎮座する江島神社(えのしまじんじゃ)ですが、島の入口から頂に向かって、辺津宮(へつみや)、中津宮(なかつみや)があり、最後の社が奥津宮(おくつみや)。それぞれに三姉妹の女神が祀られ、奥津宮には最年長の多紀理比賣命(たぎりひめのみこと)が祀られています。

神仏習合時代には本宮の一部で、御旅所だった社

明治初年の神仏分離、廃仏毀釈で江島神社になっていましたが、それ以前の神仏習合時代には仏教色の強い弁財天信仰の島でした。
本宮(御窟)が、参詣の目的である弁才天(弁財天)を祀る現在の江の島岩屋で、上之宮(現・中津宮)、下之宮(現・辺津宮)の三宮からなり、それぞれを岩本院、上之坊、下之坊が別当(神社を管理する坊)になっていました(江戸時代半ばに岩本院が全島の権益を掌握)。
奥津宮のある場所は、本宮の一部で、御旅所(おたびしょ)。
実は、4月〜10月頃は、海蝕洞を利用した本宮(御窟=現在の江の島岩屋)に海水が入りこんでしまうため、岩屋本宮に祀られる本尊の弁才天が、御旅所に遷座していたのです。
現存する社殿は、天保12年(1841年)の火災で焼失翌年に再建されたもの(平成23年に改修)。

拝殿天井に描かれた亀は、どこから眺めてもこちらを見ているように描かれているため「八方睨みの亀」と呼ばれています。
江戸琳派を代表する絵師・酒井抱一(さかいほういつ=姫路藩主で酒井雅楽頭家・酒井忠恭の孫)の作で、平成6年に片岡華陽が復元したもの(実物は社務所で保管)。

奥津宮社殿に向かって右側の灯籠には竜宮の乙姫、左側の灯籠には亀に乗った浦島太郎が精巧に彫り込まれています。
江戸時代に、江戸市中や周辺の村には百味講(ひゃくみこう=神仏に百味を奉納する講)と呼ばれる講中が組織され、江の島弁才天、成田不動尊などを参詣しました。
その百味講が奉納した灯籠も現存。

奥津宮に隣接して平成5年に創建の龍宮(わだつみのみや)があり、ちょうど江の島岩屋の真上に位置しています。

弁天小僧は江の島出身!?

江島神社・奥津宮
豊原国周『白浪五人男 弁天小僧 尾上菊五郎』(明治7年)

歌舞伎の名演目『弁天娘女男白浪』(べんてんむすめめおのしらなみ)、浜松屋の場、江ノ島の稚児上がりの弁天小僧菊之助の有名な台詞にも江の島が登場します。

「知らざあ言って聞かせやしょう。浜の真砂(まさご)と五右衛門が、歌に残した盗人(ぬすっと)の、種は尽きねぇ七里が浜。その白浪の夜働き。以前を言やァ江の島で、年季勤めの稚児ケ淵(ちごがぶち=奥津宮から江の島岩屋へと下った先の淵)。百味(ひゃくみ=百味講)で散らす蒔銭(まきせん)を、当てに小皿の一文子(いちもんこ)。百が二百と賽銭の、くすね銭せえ段々に、悪事はのぼる上之宮(現在の中津宮)。岩本院(江の島を統括した坊)で講中の、枕捜しも度重なり、お手長講と札付きに、とうとう島を追い出され、それから若衆の美人局(つつもたせ)。此処や彼処の寺島で、小耳に聞いたとっつぁん(音羽屋)の、似ぬ声色で小ゆすりかたり。名さぇ由縁の弁天小僧菊之助たァ、俺がことだ」(浜松屋の場での弁天の見顕し)。

『白浪五人男』(しらなみごにんおとこ)と通称されていますが、正式名は『青砥稿花紅彩画』(あおとぞうしはなの にしきえ)で、文久2年(1862年)に江戸三座のひとつ市村座で初演された歌舞伎の演目。
市村座が寄進した灯籠が中津宮(かつての上之宮)に現存するように、歌舞伎役者たちも江の島弁才天に芸能上達祈願をし、密な関係から、こんな話が生まれたのです。
弁天小僧の弁天とは江の島弁天のことだったのです。

江島神社・奥津宮
名称 江島神社・奥津宮/えのしまじんじゃ・おくつみや
所在地 神奈川県藤沢市江の島2-3-8
関連HP 江島神社公式ホームページ
電車・バスで 小田急線片瀬江ノ島駅から徒歩25分
ドライブで 横浜横須賀道路朝比奈ICから約14km
駐車場 江の島なぎさ駐車場(232台/有料)
問い合わせ 江島神社 TEL:0466-22-4020
掲載の内容は取材時のものです。最新の情報をご確認の上、おでかけ下さい。
江島神社

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