糸魚川市は「ユネスコ世界ジオパーク」のまち。マンホールにはマスコットキャラクターの「ジオまる」と「ぬーな」が描かれ、市の石ヒスイ(翡翠)も散りばめられています。「ようこそ世界ジオパークのまち糸魚川へ」「Welcome to Itoigawa」「Global Geopark」の文字も添えられています。
マンホールに隠された世界ジオパーク登録の理由
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平成21年8月22日、糸魚川ジオパーク(新潟県)、洞爺湖有珠山ジオパーク(北海道)、島原半島ジオパーク(長崎県)が世界ジオパークネットワーク(GGN)に加盟が認められ、日本で最初の世界ジオパークとなったのが糸魚川です。
日本ジオパークは国内に43ヶ所ありますが、世界ジオパークはわずかに8ヶ所(上記3ヶ所に加えて、山陰海岸、室戸、隠岐、阿蘇、アポイ岳)です。
世界ジオパークも世界遺産と同じユネスコの管轄。
ジオパークというと、何やら地質学的なイメージを感じますが、実は大間違いで、「大地の遺産」が正解。
糸魚川はまさに「大地の公園」というわけなのです。
世界遺産同様にジオパークも「世界」を冠にするにはかなりのハードルが立ちはだかります。
糸魚川がどうして日本で最初に世界ジオパークに認定されたのか?
実は、その秘密が、糸魚川市のデザインマンホールに隠されています。
登録の理由その1 「ジオまる」
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ジオパークをPRするゆるキャラの「ジオまる」は、糸魚川静岡構造線の断層とヒスイ(翡翠)をモチーフにしたキャラクター。丸い体を地球に見立てて、2色に色分けされ断層を表現、おでこに勾玉をのせています。
古代の糸魚川から現代に蘇った、キュートで不思議な生き物です。推定年齢はなんと5億歳、糸魚川ジオパークの知識が豊富で、ジオパークの「ものしり博士」なのだとか。
教科書にも登場する糸魚川静岡構造線。
親不知(新潟県糸魚川市)から諏訪湖を通って、安倍川(静岡市駿河区)付近に至る日本を二分する大断層。
その東と西では、カップ麺のダシの仕様(新潟県は鰹ダシ、隣の富山県は昆布ダシ)、消火栓の色(新潟県は赤色、隣の富山県は黄色)などなど、文化がまるで違うのだとか。
ゲンジボタルの点滅のサイクルもこの糸魚川静岡構造線で分かれるなど、文化だけでなく自然のサイクルも異なっているのです。
北アルプスが海に落ちる親不知(もやしらず)もフォッサマグナ(大地溝帯)西縁の糸魚川ならではの景勝。
北アルプスが断崖となって海に落ちるんですから、まさに海のアルプスです。
糸魚川には、糸魚川静岡構造線の露呈を間近に観察する「フォッサマグナパーク」もあって、まさに「大地の公園」といった感じです。
登録の理由その2 「ぬーな」
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奴奈川姫は高志国(古代の越の国=越前、越中、越後の全域で現在の福井県から新潟県)の姫・沼河比売(ぬかかわひめ=奴奈川姫)で、『古事記』にも登場。
『出雲風土記』では、出雲国(現・島根県)の大国主命(おおくにぬしのみこと)と結ばれ、御穂須々美命(みほすすみみこと)を出産したと記されています。
諏訪に鎮座する古社で、芸術家・岡本太郎が御柱祭などに「縄文の血が騒ぐ」といった諏訪大社の祭神は、建御名方神 (たけみなかたのかみ)。
この神様、出雲の大国主命が越国の奴奈川姫と結ばれて誕生した御子神。
つまり、出雲族の盟主が高志国の姫君と結婚。
フォッサマグナに沿って信濃国へと進出したとも考えられる古代の政略結婚を思わせる古代史になっているのです。
そんな歴史ドラマ(あくまでも神話の世界ですが・・・)を背景に、白馬村を源流とし、フォッサマグナに沿って流れ、糸魚川で海に出る一級河川・姫川の「姫」は、奴奈川姫のこと。
そんな神話や伝承も貴重な「大地の遺産」だったのです。
登録の理由その3 ヒスイ(翡翠)
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昭和の初めまで、日本の遺跡から出土したヒスイは外国産と考えられていました。
早稲田大学校歌「都の西北」の作詞者でもある相馬御風(そうまぎょふう)が、古代に奴奈川姫(ぬなかわひめ)がヒスイの勾玉をつけていたという伝説から、糸魚川でヒスイが産出したのかもと推測。
それをきっかけに調査が行なわれ、小滝川に注ぐ土倉沢の滝壺で緑色のきれいない石が発見されました。
小滝川の河原にヒスイの岩塊が多数あることが確認されたのです。
北海道から九州にいたるまで縄文時代の遺跡から出土するヒスイは、科学的な成分分析から、すべて、糸魚川(姫川流域)産のヒスイと確認されています。
ヒスイは日本の「国の石」に指定されています。
まさに貴重な「大地の遺産」ですね。
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