東京都北区岸町1丁目にある北区立の公園が、名主の滝公園。園内に落ちる名主の滝は、江戸時代に王子七滝に数えられた景勝地で、今もその風情を残しています。落差は8mほどですが、東京23区にある滝のなかでは最大の瀑布。滝の水は地下水のポンプアップですが、自然地形に落ちる滝となっています。
当面の間、名主の滝が見られなくなります!

幕末の安政年間(1854年~1860年)、ペリー浦賀来航、日米和親条約締結という動乱の時代に、王子村(当時)の名主・畑野孫八が、滝を築き、茶を栽培し、一般に開放したのが、名主の滝のルーツ。
標高20m〜30mの武蔵野台地(本郷台)と標高10m以下の沖積平野である荒川低地との間の崖線(がいせん)に、滝が懸かるもので、台地上には日光例幣使街道(にっこうれいへいしかいどう)が通っていました。
徳川将軍が日光社参で使った日光御成道(岩槻街道=赤羽岩淵宿で荒川を渡船で渡河)で、将軍の鷹狩りの際も休憩所に使用したと伝えられています。
明治時代の中頃に垣内徳三郎の手で有料の庭園となり、夏場は納涼で大いに賑わいをみせました。
当時はまだ崖線からの湧水が豊富でしたが、周辺の市街化で水の量が減ったため、大正時代頃には電気を使って水をポンプアップするようになったのです。
渓流には鯉などが放流され、それをすくい獲る「魚すくい」も人気だったとか。
往時には落差8mの男滝(おだき)、女滝(めだき)をはじめ、独鈷の滝(どっこのたき)、湧玉の滝(ゆうぎょくのたき)という、4つの滝が配された池泉回遊式庭園でしたが、現存する滝は男滝のみ。
昭和13年、フランス料理で名高い上野「精養軒」が買収し、食堂や「名主水泳場」(湧水プール)などがあるレジャー施設に。
昭和15年には温泉も湧いて、大浴場を築き、戦後も、「名主の滝遊園地」として「精養軒」が夏季営業を行なっていました。
昭和35年、都立名主の滝公園として開園(有料)、昭和50年に北区に移管され、日中のみ無料開放されています。
そんな歴史を知る人も今では少なくなりましたが、滝周辺の静寂さと、涼しさは今も変わりありません。
渓流沿いに下流に歩けば、東京23区内とは思えないような異空間となっています。
男滝の稼働時間は10:00~16:00なので、開園直後や閉園間近には水が流れていません。
しかもグリーンシーズン(5月〜10月)には第2・4月曜が清掃日(11月〜4月は第4月曜)なのでご注意を。
名主の滝公園再生整備工事に伴い、2025年8月4日〜2028年年3月末まで 男滝は停止となります。

【東京の異空間】 23区最大の滝で、納涼! (2025年8月3日まで、その後、工事で断水) | |
名称 | 名主の滝公園/なぬしのたきこうえん |
所在地 | 東京都北区岸町1-15-25 |
関連HP | 北区公式ホームページ |
電車・バスで | JR・東京メトロ王子駅から徒歩10分 |
ドライブで | 首都高速王子北ランプから約1.2km |
駐車場 | なし |
問い合わせ | 名主の滝公園 TEL:03-5980-9210 |
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