世界遺産知床を目ざして、知床半島にやって来る旅人にはいろんな人がいます。取材中に出会った旅人のなかでも、ちょっぴり異色の人が、Sさん。
本名は伏せさせて頂き、便宜的に「猫山」さんと呼ばせて頂きます。
その「猫山」さん、知床に来た目的が、「猫山に登るため!」とキッパリ。
北海道唯一の正統派「猫山」が羅臼に!
全国の猫の付く山を踏破しているということで、わざわざ知床には猫山登山を目的に来たのだとか(しかもはるばる遠くから電車とバスを乗り継いで・・・)。
福島県いわき市の猫鳴山、磐梯山近くの猫魔ケ岳、後立山連峰の猫又山、岡山県阿哲郡哲西町の猫山、香川県綾歌郡綾歌町・満濃町の猫山など全国には猫の付く山が数多くあるのだとか。ところが広い北海道は、アイヌ語の地名が大部分ということもあって、猫の付く山は、知床の猫山の一峰だけなんだそうな。
「いろんな人を泊めてきたけど、猫山を目的に知床羅臼に来た人は初めてだな」
と驚くのは、「猫山」さんがお世話になった羅臼の宿まるみの主人・湊謙一さん。
取材スタッフがもっと驚いたのは、
「昔、残雪の時に登ったことがあるけどな、夏に山頂に立つのはヤブ漕ぎでダメだ。残雪の時に登らないと・・・」
と湊さんが断言したこと。
湊さん、行ってない場所はないんじゃないの!
三角点がある山頂は天然の要塞!?
国土地理院の地形図にもしっかりと猫山という山名と、553.1mの三角点が記されています。
羅臼と標津を結ぶ国道335号の茶志別橋(ちゃしべつばし)の上からなら車窓からも猫山がしっかりと猫のかたちだとみてとれます。茶志別は、アイヌ語ではチャシウシベツ(chasi・us・pet)=砦・ある・川。もしくはチャシベツ(chas-pet)で走る(流れの速い)・川。
「猫山の左の猫耳は巨大な岩。さらに山頂直下もよじ登れないような岩壁。だから要塞のような地形なんだ。雪のあるときに尾根沿いに登るしかないから」と湊さん。
猫山から流れ出す川が茶志別川。アイヌは、この山を天然の要塞にしていたのかもしれません。
(かつて根釧東部森林管理署の人もそんな話をしていました)
最新情報をお届けします
Twitter でニッポン旅マガジンをフォローしよう!
Follow @tabi_mag