収穫を迎えた秋に掘り忘れた人参を、翌春に食べてみたら意外に美味しかった! なんて失敗談が転じて、今や人気の特産になっているのが新潟県津南町の「雪下人参」、津南町は、雪の多い新潟でも豪雪で知られる町。そんな雪を活かした「氷温熟成」で糖度を増した人参を生み出す仕掛けが雪の下の貯蔵です。
雪下での野菜貯蔵は、冷蔵庫の貯蔵より、効果がある!?
もともと、大根などを雪室(ゆきむろ)に保存することは、津南など雪国の生活の知恵としてあったもので、秋に収穫する人参をわざと3~4mという雪の下で越冬させます。
すると、糖度が2倍になり、しかも「人参特有のクセがなく、人参嫌いの子も食べられるほどになる」(生産者の解説)のです。
今回取材した高橋農園、高橋正人さんが昨年8月に撒いた人参はハマベニという品種。
「にんじんを雪の下に入れて置くと遊離アミノ酸が増え、糖度が増すんです」とのことで、実際に雪下人参の収穫を体験(とはいえ除雪からだと重労働になるので、除雪された畑で人参を収穫します。実にラクチン)。
津南町にある新潟県農業総合研究所高冷地農業技術センターでは、「雪室貯蔵した食材の外観及び成分変化」を科学的に分析していますが、「雪室貯蔵した馬鈴薯(ばれいしょ)、人参、日本なし、玄米、味噌などの品 質は冷蔵庫と同等あるいはそれ以上の例もある」(平成24年度の研究)。
たとえば、馬鈴薯を雪室で貯蔵することにより遊離糖(グルコース、フルクトース、スクロース)が冷蔵庫での貯蔵よりも大きく増加することもわかっています。
しかも電気代も不要だから、多雪地帯にとっては朗報!
雪の下で越冬させた人参は、甘味・旨味成分であるアスパラギン酸、グリシン、セリンなどのアミノ酸の含有量が大きく増加。
香りの成分のカリオフィレンも増加することがわかっています。
実は、雪の下は温度が一定(0度)で、しかもほどよい湿気があるので、冷蔵庫のチルドルーム以上の効果が期待できるのです。
実際には、雪を除雪し、手作業で人参を掘り出すという大変な作業があり、「その割には出荷の価格が高くない」というのが生産農家にとっては歯がゆい部分かもしれません。
まだまだ知られていない「雪下人参」というのがその背景にあるのでしょう。
雪下人参の収穫は、3月中旬から4月頃の残雪期(新潟県JA津南町にんじん部会の出荷量は350トンほど)。
高橋農園でも4トンほどを掘り出しているのだとか。
事前の予約で新潟県JA津南町にんじん部会と津南町観光協会の連携による企画「雪下人参の収穫体験」も可能です(津南町観光協会に問い合わせを)。
お土産1kg(にんじん8本ほど)付きで2000円(平成30年の料金)。
収穫後には高橋農園オリジナルの「ゆきがくれにんじんジュース」もおすすめです。
取材協力/新潟県観光協会、雪国観光圏
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