奥日光湯元温泉の旅館のご主人は、「梅雨時に、日光山内(日光東照宮のあるエリア)では小雨でも、中禅寺湖を越える辺りから晴れていることが多い」と語るのを耳にします。旅行サイトやブログでも「奥日光に梅雨がない」という記述を見かけますが、本当でしょうか?
「じめじめ蒸し蒸しがない奥日光」というのが正解
奥日光は日光連山(男体山、女峰山など)が雨雲をブロックするからという説もありますが、梅雨前線は、太平洋側から押し寄せ、かつ梅雨前線付近や南側では垂直に成長する積乱雲、前線の北側では高層雲や高積雲が広がり、標高2500m程度の山脈では雨雲は遮断できません。
環境省の出先機関である日光湯元ビジターセンターに確認すると、梅雨時の降雨日数を宇都宮と奥日光で比較しても「大きな差はない」とのこと。
そもそも北関東は、西日本、南日本ほど梅雨時の大雨がないエリアということもあって(梅雨時の大雨をもたらす湿った暖気が吹き込まないエリア)、むしろ8月のほうが夕立や雷雨などの大雨が多いとのことです。
気象庁のデータで確認すると、気象庁が記録する1991年~2020年における梅雨時の6月の期間の雨量は、東京167.8mm、日照時間124.2時間、宇都宮175.2mm、日照時間118.5時間、奥日光228.8mm、日照時間107.8時間とすべてのデーターが奥日光が最悪という結果に。
6月〜7月の降雨日数は、宇都宮に比べて奥日光が多いという傾向があり、日照時間を比較してもむしろ宇都宮よりも少ないくらいなのです。
ただし、最強時間雨量を比較すると、宇都宮の方が多いので、宇都宮でドバドバ降っているときにも奥日光では小雨や霧というケースがあるのかも知れません。
では、なぜ、「奥日光に梅雨がない」といわれるのでしょうか?
湯ノ湖湖畔にある「日光湯元レストハウス」の梅雨時のデータです。
日光山内=曇り、いろは坂=小雨、中禅寺=濃霧、湯元温泉=日差しあり。
こんなイメージは奥日光湯元温泉関係者には共通する感想です。
ひとつは、もともと北関東は、湿った風の入りやすい南関東ほど梅雨時の土砂降りがないこと、それに加えて、「下界は雨でもいろは坂を登ると晴れ間もあった」という印象深い経験が「奥日光に梅雨がない」というイメージを定着させたのではないかと推測されています。
もし奥日光に梅雨がなければ、中禅寺湖の水位が下がり、華厳の滝への放水もなくなってしまいます。
奥日光湯元温泉の旅館の主人は、「一日中雨が降り続くようなことはめったになく、幻想的な霧に覆われることはよくあるので、上下セパレートの雨具を着て、戦場ヶ原を歩けば、ワタスゲが出迎えてくれます。運が良ければ青空も」と、実は梅雨は旅慣れた常連が多いおすすめのシーズンだと語ります。
「前線が少し南に下がれば晴れ間が出ることもある」、「土砂降りが少なく、しとしと降る雨と霧が多い」、「梅雨時も気温が低く肌寒いくらいなので、じめじめ蒸し蒸し感がない」というのも、奥日光には梅雨がないという伝説を生んだおおきな要因だといえるでしょう。
結論をいえば、奥日光にもしっかり梅雨はあるけど、じめじめ蒸し蒸し感はない、しかも戦場ヶ原の花が出迎えてくれるということに。
「奥日光に梅雨がない」は本当!? | |
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