東京都奥多摩町にある東京の水瓶、奥多摩湖。かつてこの湖を渡るロープウェイが運行されていたことをご存知だろうか。小河内観光開発が「東京唯一のロープウェイ」として運行した奥多摩湖ロープウェイで、わずか5シーズンで廃止されたため、知る人ぞ知るロープウェイになっているのです。
奥多摩湖周辺の観光開発の夢を乗せてゴンドラが運行!
昭和30年4月1日、氷川町、古里村、小河内村が合併し奥多摩町が生まれ、昭和32年11月26日、小河内ダム竣工し、東京都の水瓶として奥多摩湖が誕生すると東京オリンピック開催を前に、奥多摩にも熱海同様に観光ブームが到来します。
小河内ダム建設の物資運搬のために昭和27年11月、氷川駅(現・青梅線奥多摩駅)〜水根駅間に東京都水道局小河内線(正式名・東京都専用線小河内線)が開通。
この線をそのまま観光用に転用すれば、奥多摩への観光客の送客に使えるとあってダム竣工後は西武鉄道へ譲渡されています。
西武鉄道は拝島線を青梅線に乗り入れさせる計画があり、そのまま水根駅まで直通運転できればという、バラ色の計画があり、湖畔と倉戸山頂上を結ぶケーブルカーの免許も取得。
実現すれば、湖畔に奥多摩プリンスホテルが建ち、奥多摩西武園が営業していたのかもしれません(水不足の懸念などもあって計画は断念、水根線も昭和53年に奥多摩工業へ譲渡されています)。
西武が奥多摩開発に乗り出すという計画もあったため、小河内観光開発は、奥多摩湖の観光客と、三頭山の登山者を当て込んで(当時は登山ブームでした)、川野駅と対岸の三頭山口駅を結び、奥多摩湖を渡る全長622mの奥多摩湖ロープウェイの営業を昭和37年1月29日に開始。
ところが奥多摩湖横断する都道大月奥多摩線(現・国道139号)の深山橋が昭和32年9月に架橋され、対岸に渡る道路もあったので、さほどの利用者もなく、すぐに営業不振となり、昭和41年12月1日、「冬季休業」という名目で運行を停止、そのまま廃止となっています。
1964年東京オリンピックの開催を控え、高度成長期のバラ色の観光計画が奥多摩にもあり、ゆらゆらと湖上を揺れながら、4分30秒で対岸へと渡ることができたのです。
現在は、川野駅、三頭山口駅の廃駅が森の中に隠れ、その歴史を伝えています(奥多摩周遊道路川野駐車場横に三頭山口駅跡があります)。
京王よみうりランド駅(東京都稲城市)〜よみうりランド(神奈川県川崎市)間のアクセスとして使われるゴンドラリフトの「スカイシャトル」は、東京都唯一の索道ともいえますが、国土交通省鉄道局が監修する「鉄道要覧」では、神奈川県川崎市の扱いとなっていて、「東京都唯一のロープウェイ」といえるのか、微妙な感じです。
かつて、東京都内にも湖を渡るロープウェイがあった! | |
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