日本三大水仙群生地とは!?

厳寒の時期になると日本各地に水仙が咲きます。中国からどんぶらこと、海を渡って漂着したと推測されるニホンスイセンは、海岸の傾斜地に群生します。日本三大水仙群生地は、一般的に淡路島、越前海岸、南房総・鋸南町の3ヶ所。関東、関西、北陸とバランス良く散らばっています。

地中海原産の水仙が、中国から日本に!

水を好むという習性から水仙とよばれるニホンスイセンですが、寒さに強いという特長をいかして、寒波に震える日本列島でも可憐な花を咲かせています。
ニホンスイセンは、一本の茎に芳香のある花を房のようにつけるのが特徴(花は花茎に5個~8個)。

ニホンスイセンは、地中海沿岸のフサザキスイセンが突然変異したと推測され、結実せず、種子ができないことから球根が分かれることで増えたもの。
紀伊半島の海岸部に自生する水仙は、淡路島から球根が潮流で運ばれたといわれています。

中国から日本に伝来したもので、中国にも同種の水仙が咲きます(中国から日本への経路は、球根の漂着説、遣唐使が薬草としてもたらした、観賞用などとして運ばれたなど諸説あります)。
ニホンスイセンが冬場に花を咲かせ、夏に咲かないのは、地中海沿岸の気候(とくに夏場は乾燥が厳しい)に適応した特徴なのです。
日本国内では「冬も比較的温暖で、水はけが良い土地」という条件から、暖流の流れる海岸沿いの傾斜地が自生地、栽培地になっているのです。

淡路島|兵庫県

淡路島の海岸沿いの斜面に広大な水仙畑が!

淡路島には、江戸時代後期の文政年間(1818年〜1831年)、紀州から漂着した球根を黒岩の漁師が山に植栽したと伝わる灘黒岩水仙郷、紀淡海峡を一望にする斜面に500万本の水仙が咲く私営の観光花園が立川水仙郷の2ヶ所が代表的な群生地となっています。

  • 灘黒岩水仙郷
    兵庫県南あわじ市灘黒岩2
    例年12月下旬〜2月下旬に開園
    7ha・500万本
  • 立川水仙郷
    兵庫県洲本市由良町由良2877-22
    例年12月〜3月に開花(花のピークは1月~2月で、ヨーロッパ産の早咲き、寒咲きのニホンスイセン、ラッパスイセンが順に開花)
    6ha・500万本
灘黒岩水仙郷

灘黒岩水仙郷

淡路島最高峰で、淡路島の南東部に連なる諭鶴羽山(ゆづるはさん/標高607.9m=一等三角点)から海へと落ちる急傾斜の斜面7haにわたって水仙が自生する自然の花園が灘黒岩水仙郷。一帯は瀬戸内海国立公園に指定され、温暖な気候と断層による地形的な

立川水仙郷

立川水仙郷

洲本市街と南淡町を結ぶ県道76号(南淡路灘水仙ライン)沿いにあり、紀淡海峡を一望にする斜面に500万本の水仙が咲く私営の観光花園が立川水仙郷。急斜面で石ころが多い立川地区は営農には適さない地。その地を戦後、個人の力で美しい水仙郷に変えたのが

越前海岸|福井県

越前水仙を鑑賞して越前ガニを味わう

福井県の越前海岸、なかでも越前岬周辺は、日本海側随一のニホンスイセンの群生地となっています。
「越前水仙」のブランド名で有名ですが、ニホンスイセンのことです。
越前岬背後の高台に位置するニホンスイセンの畑「越前岬水仙ランド」、日本海をバックに咲く水仙畑という絶景を目にできるのが梨子ヶ平園地、大正10年、梨子ヶ平地域に自生していた水仙を名古屋の生花市場に出荷したことから、農家の間で水仙の栽培が本格的に開始されたという梨子ヶ平台地(梨子ヶ平園地)、「日本の棚田百選」にも選定の梨子ヶ平千枚田水仙園(以上は福井県越前町)と福井市側の越前水仙の里公園で群生する水仙を鑑賞することができます。

越前海岸の水仙の栽培面積は、越前町、福井市、南越前町あわせて60haとその広さは日本一。
「越前海岸の水仙畑の文化的景観」という単なる観光地ではない風情があり、「越前水仙」の開花期が越前ガニのシーズンと一致することも大きな魅力です。

  • 越前岬水仙ランド
    福井県丹生郡越前町血ケ平27-1-2
    12月下旬〜2月に開花し、1月上旬〜2月頃に見頃を迎えます
    6ha・1500万本
  • 梨子ヶ平台地(梨子ヶ平園地・梨子ヶ平千枚田水仙園)
    福井県丹生郡越前町梨子ヶ平
    12月下旬〜2月に開花し、1月上旬〜2月頃に見頃を迎えます
  • 越前水仙の里公園
    福井県福井市居倉町43-25
    開花は12月初旬~2月初旬頃(年によって変動あり)
    常時500本〜2000本の水仙が花を咲かせ甘い香りが漂う水仙ドームも完備
梨子ヶ平園地

梨子ヶ平園地

越前海岸の突端、越前岬背後の高台には水仙畑が広がっていますが、日本海をバックに咲く水仙畑という絶景を目にできるのが梨子ヶ平園地。入口の駐車場から遊歩道を使って到達することからちょっぴり秘境的な場所になっていますが、ポスターなどに使われること

梨子ヶ平台地

梨子ヶ平台地

越前海岸の越前岬背後には越前水仙の花畑が広がっていますが、梨子ヶ平地区もっとも北端に位置するのが梨子ヶ平台地。梨子ヶ平集落近くには日本の棚田百選に選定の梨子ヶ平千枚田水仙園もありますが、その北側にも水仙畑が広がり、眼下に海岸線を眺望。水仙は

梨子ヶ平千枚田水仙園

梨子ヶ平千枚田水仙園

越前町の越前海岸の高台、梨子ヶ平(なしがだいら)地区の世帯(農家数15戸)は、そのすべてが水仙栽培農家で、周囲の傾斜地にはいたるところに水仙畑が広がっています。しかも千枚田のような景観なので、梨子ヶ平千枚田水仙園と呼ばれています。「日本の棚

越前水仙の里公園

越前水仙の里公園

越前水仙が群生することで知られている越前海岸の一角、国道305号沿いにある公園が越前水仙の里公園。常時500本〜2000本の水仙が花を咲かせ甘い香りが漂う水仙ドームと、水仙にまつわる歴史や文化などが学べる水仙ミュージアムがあり、一年を通して

南房総・鋸南町|千葉県

鋸山(のこぎりやま)の南というのが鋸南町の町名の由来ですが、鋸山から南は、上着をひとつ脱ぐことができるという避寒の地。
房州の花づくりは、安政年間(1854年~1860年)に保田地区に咲く元名水仙(もとなすいせん=「元名の花」)と呼ばれる日本水仙が、船で江戸に運ばれ、武家屋敷や町家に売られたのが始まり。
鋸南町には江月水仙ロード、をくづれ水仙郷と2ヶ所の水仙の名所があり、開花シーズンには『水仙まつり』も開催されています。

  • 江月水仙ロード
    千葉県安房郡鋸南町江月地先
    11月〜2月に開花し、出荷時期を過ぎ、観賞用となった時期の12月上旬〜2月上旬頃には『水仙まつり』も開催
    3km・数千万本
  • をくづれ水仙郷
    千葉県安房郡鋸南町大崩地先
    12月中旬~1月中旬に開花
    5ha・球根数は6000万球ほど

江月水仙ロード

昔から「鋸山を越えると肌着が一枚いらない」といわれるほど南房総は暖かく、北国で雪の便りが聞かれるときでも安房地域は花でいっぱい。なかでも注目は鋸南町の江月水仙ロード(鋸南は鋸山の南の意)。開花時期は11月〜2月。出荷時期を過ぎ、観賞用となっ

水仙まつり|江月水仙ロード|鋸南町|2024-2025

2024年12月7日(土)〜2025年2月2日(日)、鋸南町の江月水仙ロードで『水仙まつり』。昔から「鋸山(のこぎりやま)を越えると肌着が一枚いらない」といわれるほど南房総は温暖、避寒の地。しかも西高東低の気圧配置で、海岸では西風が吹き抜け

をくづれ水仙郷

房州(千葉県南部)の花づくりは、安政年間(1854年~1860年)、元名村(鋸南町元名)に咲く日本水仙が「元名の花」と呼ばれ、船で江戸に運ばれたのが始まりといわれています。今や越前海岸、淡路島と並んで「日本三大水仙群生地」に数えられる千葉県

水仙まつり/をくづれ水仙郷|鋸南町|2024−2025

2024年12月7日(土)〜2025年2月2日(日)、鋸南町のをくづれ水仙郷で『水仙まつり』。避寒の地、鋸南町(きょなんまち)。鋸山(のこぎりやま)の南というのが町名の由来ですが、鋸南町には江月水仙ロード、をくづれ水仙郷と2ヶ所の水仙の名所

番外 南伊豆・爪木崎|静岡県

下田市須崎半島先端の景勝地、爪木崎には野水仙の一大群生地があります。
12月下旬〜1月には海岸の段丘一帯、10万平方メートルのエリアに300万本以上の水仙が咲きます。
番外としましたが、この爪木崎を「水仙の日本三大群生地」に数える人もいます。

  • 爪木崎
    静岡県下田市須崎
    12月下旬〜2月上旬が開花期で、例年12月20日〜1月31日は『水仙まつり』も開催
    300万本
爪木崎

爪木崎

南伊豆・下田市にある岬が爪木崎で、須崎半島の先端部の名称。突端に爪木埼灯台が建つ一画が爪木崎自然公園として整備されています。夏は風光明媚なビーチとして海水浴で賑わいますが、12月下旬〜2月上旬にかけては水仙が咲き、『水仙まつり』が開催されま

爪木崎『水仙まつり』|下田市|2024−2025

2024年12月20日(金)〜2025年1月31日(金)、下田市の爪木崎(つめきざき)で『水仙まつり』を開催。下田市須崎半島先端の景勝地、爪木崎には野水仙の一大群生地があります。12月下旬〜1月には海岸の段丘一帯、10万平方メートルのエリア

日本三大水仙群生地とは!?
掲載の内容は取材時のものです。最新の情報をご確認の上、おでかけ下さい。
日本三大カキツバタ自生地

日本三大カキツバタ自生地とは!?

アヤメ科アヤメ属の植物、カキツバタ。日本列島各地の湿原や池沼に自生する植物ですが、開発などで群生地は希少に。小堤西池のカキツバタ群落(愛知県刈谷市)、大田ノ沢のかきつばた群落(京都市北区、大田神社)、唐川のカキツバタ群落(鳥取県岩美町、唐川

日本三大あやめ園

日本三大あやめ園とは!?

長井あやめ公園(山形県長井市/100万本)、水郷潮来あやめ園(茨城県潮来市/100万本)、水郷佐原あやめパーク(千葉県香取市/150万本)が日本三大あやめ園、そして新潟県新発田市の五十公野公園(いじみのこうえん)が300種60万本で「日本四

日本三大桜名所

日本三大桜名所とは!?

日本三大桜名所といわれるのは、吉野山、弘前城公園、高遠城址公園。吉野山は山桜、弘前城公園はソメイヨシノ、そして高遠城址公園はタカトオコヒガンザクラが咲きます。江戸時代まで桜といえば吉野の山桜で、弘前城も高遠城も藩庁としての機能を有した城郭だ

水仙

【知られざるニッポン】vol.30 水仙の秘密

日本各地で自生し、栽培されるニホンズイセン(Narcissus tazetta var. chinensis)。ニホンズイセンとはいうものの、実は中国から伝来したもの。それがなぜ、国内各地に自生し、はたまた日本三大水仙自生地(淡路島、越前海

 

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