日光東照宮・眠り猫

日光東照宮・眠り猫

日光東照宮の本社(本殿・石の間・拝殿)を取り囲む東西回廊(国宝)のうち、東回廊に備え付けられた奥社へと続く潜門(国宝)の蟇股(かえるまた=梁の上でカエルの股のように下方に開いて荷重を支える部材)に配された彫刻が有名な眠り猫。左甚五郎(ひだりじんごろう)の作という伝承があります。

眠り猫は、実は眠っていないという説も

日光東照宮・眠り猫

猫の彫刻の裏側(坂下門側)には、竹林に遊ぶ2羽の雀の彫刻が施されています。
東照宮の数ある彫刻の中で、重要な場所に配されたものにはそれぞれ意味がありますが、猫が寝ているからこそ、雀は楽しく暮らすことができるという、徳川政権下での太平の世を誇示しているとも。

春日大社蔵の国宝「金地螺鈿毛抜形太刀」は、平安時代作の名刀ですが、鞘(さや)に施された螺鈿(らでん)の装飾に林に群がる雀を猫が狙う構図あります。
日本の螺鈿表現の最高傑作と謳われる名品中の名品なのですが、その絵柄は、雀にこっそりと接近し、瞬時に飛び掛かり、仕留めて咥える様子という残酷なもの。

竹林などで猫が雀を追うモチーフは、中国の北宋時代頃から描かれ、禅宗文化とともに日本にも渡来した図様です。
絵画などにも多く描かれた猫が雀を追うモチーフの正反対の絵柄がこの眠り猫なのです。
眠り猫と竹林にのどかに遊ぶ雀が描かれた潜門と坂下門の先、奥社に祀られた徳川家康(東照大権現)がもたらした太平の世(平和な徳川の治世)というのを、再確認できる仕組みになっているのです。

平成29年6月〜11月には平成の修復が行なわれました。
その際、担当した彩色工が、「眠り猫は実は薄目を開けている」との伝承を意識した結果、目を表す線の中央部分の黒を濃くしたことで、わずかに黒目がのぞいているように見え、薄目を開けたような表現になったのです。
江戸時代から50年周期で修復が行なわれてきましたが、かつての眠り猫は「薄目を開けていた」という伝承もあるのですが、平成30年1月に、かつての図面通りに塗り直しが行なわれ、再び修復以前の目を閉じた「眠り猫」に戻されています。


家康の墓所への参道を守護する意味もある「猫」ですから、耳を立て、前足も踏ん張り、今にも飛びかかれる臨戦態勢で、前足と耳の状態を観察すれば眠っていはいないという解釈もできます。
家康を護るために寝ていると見せかけ、いつでも飛びかかれる姿勢をしているということで、狸寝入りをする徳川政権の威厳と恐ろしさを示すとも、外様大名への睨みとも解釈でき、何を意味しているのかは謎に包まれています。

眠り猫には牡丹の花も描かれていることから、『水月斎指月録』(中国・明代の瞿汝稷の禅僧の語録などを記した書)にある「牡丹花下眠猫児」(ぼたんかかすいびょうじ)を表したとも推測できます。
「牡丹の花の下で、猫の子が寝ているようだが、人の気配を感じると、すぐさま起きて逃げてしまった。さて、この猫は寝ていたのか。また、寝ている振りをしていたのか」。という禅問答です。
眠り猫は、現代においてもこんな禅問答を投げかけているのです。

日光東照宮・眠り猫
名称 日光東照宮・眠り猫/にっこうとうしょうぐう・ねむりねこ
所在地 栃木県日光市山内2301
関連HP 日光東照宮公式ホームページ
電車・バスで 東武日光駅から東武バス世界遺産めぐりで勝道上人像前下車、徒歩10分
ドライブで 日光宇都宮道路日光ICから約3km
駐車場 100台/有料
問い合わせ 日光東照宮社務所 TEL:0288-54-0560/FAX:0288-54-0061
掲載の内容は取材時のものです。最新の情報をご確認の上、おでかけ下さい。
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