全国を取材で飛び回っていると、時たま「いよっ! 日本一」と声をかけたくなる意外な場所に出くわすことがあります。
今回などはその典型。意外に知られていない「日本一長い地名」です。
日本一長い地名には釣具店が建つ
長い地名というと一般的に京都市街を思い浮かべます。
たとえば京都府庁は、京都市上京区下立売通新町西入薮之内町といった具合。でも「下立売通新町西入」は地名ではなく「京都風のナビゲーション」ですので、地名とはいえません。これをYahoo!地図で検索すると、親切にも「京都府京都市上京区藪之内町」と教えてくれます。
というわけで番地を除けば13文字となりますから最長というレベルではありません。
「日本一長い地名」は、愛知県海部郡(あまぐん)飛島村(とびしまむら)にあります。
村境を流れる日光川を渡れば名古屋市なんですが、この飛島村、最寄り駅の蟹江駅(海部郡蟹江町)から飛島公共交通バス蟹江線でアクセスという交通も不便でちょっとした秘境地帯となっています。
で、日本一長い地名は、「愛知県海部郡飛島村大字飛島新田字竹之郷ヨタレ南ノ割」。
伊勢湾に面した飛島村は、村の大部分が埋め立て地。1693(元禄6)年に大宝新田、1801(享和元)年に飛島新田、明治12年に政成新田が誕生しています。
飛島村大字飛島新田という地名から、1801(享和元)年に誕生した土地であることがわかります。飛島新田は767haもある大干拓地。熱田奉行で船奉行も務めた津金文左衛門(津金胤臣)が尾張藩主の命を受けて開墾したものです。津金文左衛門は1800(寛政12)年に現在の荒子川緑地一帯に熱田前新田を開墾しています。
つまり、埋め立てで誕生した村であるため、全体が教科書にも登場の「ゼロメートル地帯」(海抜ゼロメートル地帯=地表標高が満潮時の平均海水面よりも低い土地)になっています。
さて、飛島村大字飛島新田まではこれで解明されました。竹之郷という字名(あざめい)は、飛島村には松之郷、竹之郷、梅之郷と松竹梅が揃っています。
ただし、松之郷と梅之郷は大字となります。
その次に続く「ヨタレ」は、新田開発時の区割りの名残りです。
区割りをイロハで分けたため、飛島新田にはイロノ割、ハニノ割、ホヘノ割、トチノ割、リヌノ割、ルヲノ割、ワカノ割、ヨタレ割が存在します。
ご丁寧にもヨタレだけ南ノ割と北ノ割に分かれるので、「愛知県海部郡飛島村大字飛島新田字竹之郷ヨタレ南ノ割」が日本一長い地名として君臨できるわけです。
北ノ割も文字数的には一番ですが「きた」「みなみ」とかなにしたときに南ノ割が1文字多いため、「愛知県海部郡飛島村大字飛島新田字竹之郷ヨタレ南ノ割」に軍配が上がるというというわけなのです。
名四国道沿いにある「明徳屋」(愛知県海部郡飛島村大字飛島新田字竹之郷ヨタレ南ノ割979-3)は日本一長い地名の地に建つ釣具・釣餌店です。国道23号を隔てた北側がヨタレ北ノ割。
飛島村は日本一裕福な自治体!
飛島村にはもうひとつ、日本一があります。それが日本一豊かな自治体ということ。
自治体の財政力を示す指標として財政力指数があります。平成25年度で飛島村の財政力指数は2.08。泊村(2.01)、六ケ所村(1.58)など原発立地自治体を押さえて例年首位を維持しています。
100億円必要な自治体の税収が200億円あれば、財政力指数が2.0となりますが、多くの自治体は赤字経営なので1.0以下。
「もともと飛島村は貧乏な村で、貧乏ゆえに合併もできない状況でした。高度成長以降の工業化で税収が増えたのにもかかわらず、住民が増えないので財政が豊かなんです」
とは、とある行政関係者の話。
名四国道、伊勢湾岸自動車道が通るという地の利を生かし、中部電力西名古屋火力発電所、トヨタ自動車飛島物流センター、三菱重工業名古屋航空宇宙システム製作所飛島工場、川崎重工名古屋第二工場、三菱自工名古屋部品センターなどが村内に建ち、豊かな税収をもたらしてくれています。
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