富山城(富山城址公園)

富山城は戦国時代に「冬の立山越え」で有名な佐々成政(さっさなりまさ)の居城だったもので、江戸時代には富山前田家の居城として、富山藩政の中心となった城。旧神通川と鼬川(いたちがわ)の合流する地の西、自然堤防の上に建っています。江戸時代以前は神通川が城の北側を流れ、水に浮いたように見えたことから「浮城」とも呼ばれました。

室町時代の領主居館が、江戸時代に近世城郭に修築

富山城は、1543(天文12)年、越中守護代・神保長職(じんぽうながもと)が創建。
最近の発掘調査により室町時代前期の遺構が発見され、創建はそれ以前に遡ると推測されています。
1560(永禄3)年、上杉謙信の富山攻めにより追われ、戦国時代には上杉と一向一揆衆(いっこういっきしゅう=浄土真宗本願寺教団)との激突の場となりました。

1581(天正9)年、佐々成政が大規模な改修を加えて居城とし、神通川の蛇行した川筋を「早瀬の石垣」(はやせのかいき)で固定。
1585(天正13)年、羽柴秀吉の富山攻めの際には、10万の大軍に取り囲まれて降伏(富山の役)。秀吉が富山城に入城しています(秀吉の富山城入城は諸説あって定かでありません)。
その後、富山城はいったん破却されています。

そんな富山城を近世城郭として整備したのは1605(慶長10)年、加賀藩主・前田利長(まえだとしなが)。
前田利長は富山城を隠居所としましたが1609(慶長14)年の火災で焼失し、高岡城に移っています。

1639(寛永16)年、加賀藩第3代藩主・前田利常は次男・前田利次に10万石を与えて分家させ、富山藩が成立。
こうして富山城は富山藩の藩庁となります。
1661(万治4)年に幕府の許可を得て、富山城を本格的に修復。城下町を整備しています。

2代藩主・前田正甫(まえだまさとし)は、富山の反魂丹などの製薬業を奨励して諸国に広め、越中売薬の基礎を築いた藩主とされ、富山城址公園内に銅像が立っています。

富山城の模擬天守と内堀
2代藩主・前田正甫の像

富山城址公園は富山城の本丸・西の丸一帯

富山城の縄張り図。堀が取り囲んでいたことがわかります

富山城址公園として整備された公園東側が本丸跡、西側が西の丸跡です。江戸時代には富山藩の藩主が暮らす本丸御殿が建っていた場所です。
本丸御殿は、明治時代に県庁としても使われましたが残念ながら明治32年に焼失しています。

本丸御殿の北東側に奥御殿北側の縁側から眺める構造の大名庭園が配されていましたが、1714(正徳4)年の火災で焼失後の再建御殿では台所の用地に変わっています。

本丸庭園跡地に和風の庭園が築かれていますが、往時の姿とは異なり、イメージを伝える庭となっています。

城の周囲を巡っていた水濠は、本丸と西の丸の南側部分を除き、埋め立てられています。
本丸の玄関口(大手)と搦手(からめて=裏口)は石垣造りでしたが、それ以外の部分は土塁で囲まれていました。

模擬天守東側に石垣が新造されていますが、これは昭和・平成に築かれた石垣で往時のものとは大きく異なっています。
現存する鏡石と称する2mを超える巨石6個は、加賀前田家の財力を背景として前田利長が運んだ石です。
熟練した専門的石工(金沢穴生=かなざわあのう)が積んだと推測されます。

ちなみに、富山城の玄関となる大手門は、現在の富山市民プラザあたりにありました(金属プレートが歩道にはめこまれています)。

本丸鉄門石垣通路面には平成21年に岡山県犬島産の石が敷かれています
加賀藩の隠居所時代に運ばれた巨大な鏡石

模擬天守内部は「富山市郷土博物館」

富山城址公園は、お花見スポットとしても有名。
春には濠の水面に満開の桜が映し出され、多くの見物客で賑わいをみせます。

富山城址公園内の模擬天守閣は、昭和29年に開催された『富山産業大博覧会』のシンボルとして犬山城や彦根城を参考に再建されたもの。国の登録有形文化財になっています。

内部は「富山市郷土博物館」として鎧や古文書などが展示されています。

実は、富山城に天守はありませんでした。
本丸の南東隅の土塁上に天守を建てる計画があったものの、寛文元年の幕府の天守建築の条件は、天守台を石垣づくりとすることでしたが、予算不足のためか石垣が築かれることはありませんでした。
つまり、富山城は天守がない城だったのです。

現存する千歳御殿の門は、富山藩10代藩主・前田利保の隠居所として東出丸に隣接して建てられたもの。
明治維新で豪農・赤祖父家の手に渡りましたが、平成19年、富山城址公園に再移築されました。

また、富山は『全日本チンドンコンクール』の開催地で、その審査会場が富山城址公園。
例年4月上旬には、全国からの参加者によるパフォーマンスが繰りひろげられています。

4月には桜が花咲く富山城址公園
富山城址公園本丸跡に築かれた和風庭園
富山城(富山城址公園)
名称 富山城(富山城址公園)/とやまじょう(とやまじょうしこうえん)
所在地 富山県富山市本丸1
関連HP 富山市郷土博物館公式ホームページ
電車・バスで JR・あいの風とやま鉄道富山駅から徒歩10分
ドライブで 北陸自動車道富山ICから約4km
駐車場 市営城址公園地下駐車場(108台/有料)
問い合わせ 富山市公園緑地課 TEL:076-443-2111
掲載の内容は取材時のものです、最新の情報をご確認の上、おでかけ下さい。
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