きしめんといえば、名古屋めしの代表格ですが、実は近年、若者を中心にきしめん離れが進んでいるのだとか。そのきしめん離れを押し戻すブームとなっているのが、きしころ、うどんころという名古屋独自の冷やし麺文化。冷やしぶっかけうどんに似て非なる「ころ」を紹介します。
手打ちきしめんのコシ、味を堪能するなら、「ころ」で!
「ころうどん」のルーツは、実は名古屋ではなく、岐阜県多治見市という説が有力。
中京圏の猛暑地帯として知られる多治見市近郊では、冷たいうどんのことを「ころ」と呼び、昔から味わっていたというのがルーツだという多治見市の主張。
多治見に近い瀬戸物の町・瀬戸市でも「ころ」は夏の定番で、暑い窯場作業には冷たい「ころ」が欠かせなかったのだと思われます。
名古屋市内の「ころ」は、各所にあった公設市場で、生麺を売る店が店内で夏場に冷たいきしめん、うどんが味わえるようにしたのが普及の始まり。
麺文化の名古屋では、公設市場には必ず生麺を売る店があり、そこにはカウンター席が併設されていました。
当時は、市場内に冷房があるわけでもなく、湿度が高くうだる暑さで知られる名古屋なので、「昼はさっぱりとした冷たいうどんが味わいたい」というのは自然な成り行き。
店頭にコロリと並ぶ生麺を茹でた後、流水で冷やし、繊細なムロアジ出汁とたまり(醤油溜まり)ベースの冷たい汁を少しかけ、好みで天ぷらなどをのせて味わったのが当時の「きしころ」、「うどんころ」。
氷がのってギンギンに冷えたというわけでもなかったのですが、手打ち麺のコシがいいので美味しい味わいだったのです。
「露が香る」から香露(ころ)という説もありますが、うどん玉、きしめん玉がコロっとのっているので「ころ」という説が有力。
なぜなら、「名古屋人はそんな上品じゃにゃ」から。
名古屋で「ころ」文化が発達したのは、名古屋人は手打ちにこだわり、うどんの味とコシにうるさいから。
手打ちうどんは、冷やしてこそ「うどんの味、コシが活きる」ので、夏場に「ころ」を頼む人はツウといえるのです。
手打ちだとうどんに比べてきしめんは伸ばすのも大変で、しかも12時間~24時間寝かしてようやくコシが生まれます。
「本当はきしめんをやりたくない」というのがうどん屋さんの本音ともいわれますが、そのきしめん独特のコシを堪能するためにもぜひ「きしころ」に挑戦を。
「きしめん文化」の復興をかけて、名古屋市内では平成27年から7月〜8月限定で、うどんの名店が参加する『きしころ スタンプラリー』を開催。
ちなみに、きしめんの汁も赤い(黒い)通常のつゆ以外に、卵とじうどん、名古屋独自の「志の田うどん」は白い澄んだ汁が使われます。
残念ながら「きしころ」は、通常のたまりベースの店が大半ですが、名古屋市東区泉2丁目の「チトセ屋」では「赤つゆ」、「白つゆ」の両方を用意しています。
刈谷市の「きさん」では「いもかわうどんころ」を提供
東京で生活する名古屋人が、追い鰹つゆなどで、自宅で故郷の味に迫るも、なかなかピンとくる味にならないのは、どうやら「名古屋では、麺が手打ちだからうまいんだがね」ということになるようです(つまりはうどんにかける情熱の違い)。
きしめんのルーツ、刈谷市の「いもかわうどん」を再現した「きさん」(愛知県刈谷市一ツ木町)のでは、「きしころ」ならぬ「いもかわうどんころ」が夏場のメニューに登場。
「うちでは、ざるたれに若干濃い目のかえしを混ぜ合わせどんぶりにかけてお出ししております。関東の『ぶっかけ』を知らないので良くわかりませんが、想像するに似たようなものかも知れませんね。なんにせよ、食べられる方が、おいしく食べていただけるのことが一番です」とは、きさんのご主人、都築晃さんの解説。
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