三方を海に囲まれた千葉県銚子市、銚子半島の東端・犬吠埼(いぬぼうさき)にある、高さ31.15mの西洋式灯台が犬吠埼灯台。「灯台の父」と呼ばれるブラントンの設計で明治7年11月15日の初点灯以来、太平洋を行き交う船舶の航海の安全を見守ってきました。「世界灯台100選」、「日本の灯台50選」に選定、国の重要文化財に指定。
ブライトン設計の貴重な灯台は見学も可能

小島・岩礁が多く、昔から海の難所と称された犬吠埼。
江戸時代前期に東回り廻船の航路が開かれると、利根川の舟運の玄関口である銚子は東北と江戸を結ぶ重要な中継点となりました。
当時は、犬吠埼の沖合が危険のため、銚子から利根川に入ることを選択していました。
寛文11年(1671年)、河村瑞賢(かわむらずいけん)が房総半島を回って江戸湾に入るルートを開拓し、東北諸藩の藩米の輸送ルートとなると、犬吠埼をどうかわすかが、重要な問題点として浮上します。
戊辰戦争では、榎本武楊の率いる幕府軍艦「美加保丸」が、江戸から函館に回航する途中、 ここの黒生(くろはえ)の岩礁に乗り上げ、乗組員13名が死亡する事件も発生しています。
明治維新後もその重要度は変わらず、明治政府は、イギリス人技師のリチャード・ヘンリー・ブラントン(Richard Henry Brunton)に設計を依頼。
犬吠埼は、横浜・北米航路間の貿易船に対して必要な灯台ということになり、明治5年9月28日に着工しています。
灯台はレンガ造りで、内務省土木技師・中沢孝政によって生産が試みられた初の日本製レンガを19万3000枚使っています。
レンガは何度も失敗を重ねた後、良質な土を見つけた香取郡高岡村の源田河岸付近(げんたかし=現在の成田市高岡にある利根川河川敷、成田詣での玄関口のひとつ)で焼かれ、イギリスの高価なレンガに遜色のないできばえでした。
それでもブラントンはイギリス製でなければ適せぬと主張して譲らず、日本製のレンガを使用することに疑念を持ったため、灯台を二重構造にして強度をもたせています。
その結果、関東大震災などの地震にも耐えて現存。
灯台とともに旧犬吠埼霧信号所霧笛舎、旧倉庫も国の重要文化財になっています。
昭和20年8月10日には、7機の米軍戦闘機による攻撃を受け、灯台職員1名が殉職しています。
レンズは、当時フランス製の第1等8面閃光レンズでしたが、戦闘機の攻撃でレンズの一部が破損してしまい、現在は、第1等4面閃光レンズを使用しています(第1等レンズを備える現役の灯台の中では日本最古の灯台)。

99段の螺旋階段で灯火部分に上ろう




灯火部分まで上ることのできる参観灯台で、99段の階段を上ると、眼下に犬吠埼や君ヶ浜、銚子の町並み、太平洋を望むことができます。
99段というのはブラントンが九十九里にちなんで設計したともいわれています。
敷地内に犬吠埼灯台資料展示館があり、犬吠埼灯台の初代レンズ(フレネル式第1等8面閃光レンズ)などが展示され、犬吠埼灯台の歴史を学ぶことができる仕組み。
高さ20mほどの海食崖に建ち、塔高(地上〜塔頂)は31.30m、灯火部分から水面までは海抜51.8m。
光達距離は19.5海里(36km)で、毎15秒に1せん光。
周辺には海食洞や詩碑も点在し、散策に最適です。
ちなみに、日本国内で世界灯台100選に選ばれた灯台は、犬吠埼灯台のほか、姫埼灯台(新潟県佐渡市)、神子元島灯台(静岡県下田市)、美保関灯台(島根県松江市)、出雲日御碕灯台(島根県出雲市)の合計5灯台のみ。
「安全な船舶航行に貢献し我が国の海運業等を支えた燈台等建設の歩みを物語る近代化産業遺産群」として経済産業省の近代化産業遺産にも認定されています。
灯台入口には地域情報発信施設「犬吠テラステラス」があり、2階は展望テラスと、テラステラスマーケットになっています。

| 【見学ガイド】犬吠埼灯台 | |
| 名称 | 犬吠埼灯台/いぬぼうさきとうだい Inubosaki Lighthouse |
| 所在地 | 千葉県銚子市犬吠埼9576 |
| 関連HP | 燈光会公式ホームページ |
| 電車・バスで | 銚子電鉄犬吠駅から徒歩7分 |
| ドライブで | 東関東自動車道佐原香取ICから約45km |
| 駐車場 | 君ヶ浜海浜公園駐車場(300台/無料) |
| 問い合わせ | 燈光会犬吠埼支所 TEL:0479-25-8239 |
| 掲載の内容は取材時のものです、最新の情報をご確認の上、おでかけ下さい。 | |

























