千葉県銚子市にある江戸時代末期から明治時代にかけて、ヒゲタ醤油の醸造用水として用いられた湧水井戸が竜の井(玄蕃井戸)。生産量の増加を背景に、幕末の慶応4年(1868年)、玄蕃山と呼ばれる田中玄蕃(田中家当主の名)保有の山に湧く水を醸造用に利用したもので、レンガ造りの遺構が現存しています。
レンガ造りの水屋遺構は、近代化産業遺産に認定
日本酒の醸造と異なり、醸造段階で塩を使う醤油醸造では、それまであまり仕込み水を重視しませんでしたが、10代・田中玄蕃となる、田中貞短の代になって、生産量の増加、品質の向上を目指して玄蕃山に奥行100間(180m)もの横穴を掘削し、地下水を集めて、竜の井と名付けたのです。
現在は深井戸を掘って仕込み水としているので、この竜の井(玄蕃井戸)の水は使用されていません。
レンガ造りの遺構、祀られる竜神などが残りますが、わかりずらい山中にあり、観光目的での探勝はおすすめできません。
江戸の食文化を生んだ、ヒゲタの濃口醤油
ヒゲタ醤油5代・田中玄蕃が、それまでの「溜醤油」(たまりしょうゆ)から、江戸の食味に合うように、小麦、米麹を利用して醸造法を改良した結果、現在の濃口醤油の基礎ができ、これが江戸で大評判となって、銚子の醤油醸造が発展したのです(それまでの江戸で消費する醤油は紀州などから運ばれる「下り醤油」が大半でした)。
ヒゲタ醤油が「関東風の醤油」を生み、それが元になって、18世紀後半から江戸の食文化が花開くのです。
こうして江戸時代後期には、銚子の醤油生産が増加し、あらたな井戸の掘削が急務となり、竜の井(玄蕃井戸)の開削となったのです。
竜の井(玄蕃井戸)は、日本遺産「北総四都市江戸紀行 ~江戸を感じる北総の町並み~」の構成資産にもなっています(北総四都市=佐倉、成田、佐原、銚子)。
また、銚子市の醸造関連遺産として経済産業省の近代化産業遺産「激しい産地間競争等を通じ近代産業へと発展した利根川流域等の醸造業の歩みを物語る近代化産業遺産群」にも認定されています(銚子市の醸造関連遺産では唯一の認定です)。
竜の井(玄蕃井戸) | |
名称 | 竜の井(玄蕃井戸)/たつのい(げんばいど) |
所在地 | 千葉県銚子市前宿町 |
電車・バスで | 銚子電鉄観音駅から徒歩5分 |
ドライブで | 銚子連絡道路横芝光ICから約39km |
問い合わせ | 銚子市教育委員会生涯学習スポーツ課 TEL:0479-24-8739 |
掲載の内容は取材時のものです。最新の情報をご確認の上、おでかけ下さい。 |
最新情報をお届けします
Twitter でニッポン旅マガジンをフォローしよう!
Follow @tabi_mag