「有名だから行ってみたけど、ガッカリした」、というのが喧伝（けんでん）されて誕生したと推測される「日本三大がっかり名所」。有名税にも思える、ちょっぴり不名誉な3ヶ所は、札幌市時計台（北海道札幌市）、はりまや橋（高知県高知市）、そしてオランダ坂（長崎県長崎市）。がっかりの理由もあわせて紹介。
札幌市時計台（旧札幌農学校演武場）
札幌の市民の誇りですが、意外に小さい印象で「がっかり」!?
「日本三大がっかり名所」の札幌市時計台の正式名は、「旧札幌農学校演武場」。
明治11年10月16日に竣工した時計台は国の重要文化財、札幌市のカントリーサインのデザインにもなっています。
なぜがっかりかといえば、「思ったより小さい」から。
その原因は、周囲が都市化し、ビルに囲まれて小さく見えるため。
開拓時代に創建した建物が、札幌市街の中心部に現存しているという貴重な例で、塔部分は明治14年に開拓長官であった黒田清隆のもとに増築されているのです。
塔部分の増築の際に設置されたハワード製の時打重錘振子式四面時計（製造番号738）が現役で時を告げるなど、実際には「思ったより小さい」以外には、がっかりの要素は見当たりません。
札幌市民憲章にも前章で「わたしたちは、時計台の鐘がなる札幌の市民です」と記されているほど、札幌市民の誇りにもなっているのです。
所在地：北海道札幌市中央区北1条西2丁目
創建：明治11年10月16日
文化財指定など：国の重要文化財、日本の音風景100選、機械遺産
はりまや橋
「以前のように堀にかかっていないので」がっかり!?
藩政時代に、高知城下で堀で隔てられていた豪商・播磨屋（はりまや）と、櫃屋（ひつや）がお互いの往来のために堀川に架けた橋がはりまや橋（播磨屋橋）。
一帯は船着き場や米蔵、水主屋敷などが並ぶ高知の物流の拠点で、舟が行き交う賑やかな場所でした。
この橋が有名になったのは、昭和34年、ペギー葉山が歌った歌謡曲『南国土佐を後にして』（作詞・作曲：武政英策）の大ヒットで。
その前年に「南国博覧会」が開催され、その際に橋の欄干が朱色に塗装されています。
なんでガッカリかといえば「以前のように堀にかかっていない」から。
高知市は藩政時代の町割りが残される趣深い町ですが、昭和3年、土佐電鉄桟橋線延伸開業に伴う高知市の街路整備で目抜き通り脇の橋に環境が激変。
さらに太平洋戦争末期の空襲と昭和21年の昭和南海地震で、往時の街並みはすっかりきれいになり、さらに高度成長期に堀が埋め立てられてしまったのです。
ちなみに「土佐の高知のはりまや橋で坊さんかんざし買うを見た」と『よさこい節』で歌われるのは、江戸時代末期の安政年間（1855年〜1860年）、五台山竹林寺の僧・純信と、山麓に住む鋳掛屋の娘・お馬のロマンスが歌詞のもとになっています。
所在地：高知県高知市はりまや町1-1
創建：江戸時代
オランダ坂
「普通に生活道路として使われるただの坂道」でがっかり!?
安政6年6月2日（1859年7月1日）、箱館（函館）、神奈川（横浜）とともに開港された長崎。
出島から開放された外国人たちには、居留地が定められ、港に面した海岸通りには商社、銀行、領事館、ホテルが建てられました（条約改正により明治32年に廃止されるまで長崎居留地は存続）。
海を見下ろす高台の東山手地区には、当初は教会や領事館が、後に学校や住宅などが建てられ、学園の丘とも呼ばれる景観を呈していました。
外国人たちは輸送手段に馬車などを使うため、ぬかるみを嫌い、東山手地区の坂道に舗装することを要求します。
天草から石工が呼ばれて石畳となった坂道がオランダ坂です。
長崎では開国後も東洋人以外の外国人を開港以前の日蘭貿易（徳川家康が始めた日本とオランダの交易）を背景に、「オランダさん」と呼んでいたことから、オランダさんが通る坂という意味で「オランダ坂」と呼ばれてきたのです。
ガッカリの理由は、「普通に生活道路として使われるただの坂道」だから。
とはいえ開国の歴史を秘める貴重な石畳なので、まずはその歴史をチェックしてから探勝を。
坂道を開削した外国人技術者も、軍艦島に関わっているのですから。
所在地：長崎県長崎市東山手町
創建：江戸時代末期
文化財指定など：日本の道100選
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