松前城資料館

幕末の1854(安政元)年に完成した松前城の天守。日本で最後の和式天守の築城で、明治維新でも破却されずに残されましたが、昭和24年に城内にあった役場当直室からの失火で焼失。現在の天守は昭和36年の再建で、松前城資料館(有料施設)になっています。

松本家資料など松前藩の充実した資料を展示

展示は、地階がアイヌ関係資料、1階が松前藩関係資料、2階が松本家資料展、3階に夷酋列像・松前城写真・福山(松前)城出土陶器展という具合。
アイヌ関係の資料では、辨開凧次郎(べんかいたこじろう=アイヌ名:イカシパ)氏の活躍に注目。
青森歩兵第5連隊の八甲田山遭難事件の捜索にもアイヌの仲間を引き連れて3週間に参加しています。

松前藩関係資料では、『松前屏風』(小玉貞良筆/宝暦年間=1751年~1763年)が北前船の交易で賑わう松前城下を描いて秀逸。
小玉貞良は、江戸時代半ばに松前藩で活躍した絵師。蠣崎波響(かきざきはきょう)に先行して主にアイヌ絵を描いた草分け的存在。

『夷酋列像図』は必見!

2階の松本家資料展は、松前藩主の御座船だった「長者丸」(豪商藤野家「柏屋」の持ち船)の船頭を2代にわたって務めた松本家の資料(松前町が購入)を展示。

3階では蠣崎波響の描いた『夷酋列像図』(いしゅうれつぞうず)が、有名な展示。
1789(寛政元)年、国後島(くなしりとう)とメナシ(現在の目梨郡羅臼町一帯)のアイヌが和人商人の酷使に耐えかねて蜂起した「クナシリ・メナシの戦い」で、松前藩に協調したアイヌの首長12人を描いた図。
この絵は、「クナシリ・メナシの戦い」で失った松前藩の威信を回復する目的もあり、京で光格天皇(こうかくてんのう)の叡覧(えいらん)を仰いでいます。

最上階の3階部分は、展望台になっていて津軽海峡を一望に。
参勤交代の際、松前藩主は小舟に曳航されて「長者丸」で出帆しますが、実は津軽海峡は非常に潮流が激しく、藩主の船出は命がけだったとか。
藩主の出帆は、藩士総出で見送り、帰港も総出で迎えたほどだったとか。
展望台からの景観にはそんな歴史が秘められています。

『夷酋列像図』のイコトイ(乙箇吐壹)肖像画
蠣崎波響(かきざきはきょう)と『夷酋列像』
明和元年(1764年)5月、松前藩第7代藩主・松前資廣(まつまえすけひろ)の5男として福山城(松前城)に生誕。翌年、松前藩家老・蠣崎家の養子に。10歳から江戸の藩邸で過ごし、南蘋(なんびん:中国清時代の画家)派の画人・宋紫石(そうしせき)に弟子入りし最先端の細密画法を学び、やがて18歳で家老見習いで松前に戻りました。
寛政元年(1789年)、「クナシリ・メナシの戦い」で、松前藩の権威は失墜。
翌年、松前藩第8第藩主・松前道広は、藩の生き残りをかけて東蝦夷地のアイヌの首長たち12人の肖像を作成し、松前藩に服属している旨の解説を付記する『夷酋列像』を制作という奇抜な手段を考案します。
藩命により、アイヌの首長を描く『夷酋列像』の制作に着手したのが蠣崎波響。1年という時間をかけて12人の首長を1人ずつ、丁寧に描き上げ、京で大変な評判となって見事、藩の危急を救ったのです。
しかし、文化4年(1807年)、幕府は、松前藩の北方警備への不信から、ついに蝦夷全島(現・北海道)を直轄地とし、奥州梁川(現在の福島県)への転封を命じています。
その後、復領運動が行なわれ、文政4年(1821年)、幕府は蝦夷全島を松前藩に返還しています。
松前城資料館
名称 松前城資料館/まつまえじょうしりょうかん
所在地 北海道松前郡松前町松城
関連HP 松前町公式ホームページ
電車・バスで JR木古内駅から函館バス松前バスターミナル行きで1時間29分、松城下車、徒歩5分
ドライブで 函館空港から約106km
駐車場 50台/無料(さくらまつり期間は有料)
問い合わせ 松前城資料館 TEL:0139-42-2216
掲載の内容は取材時のものです、最新の情報をご確認の上、おでかけ下さい。

日本100名城 「北海道・東北13城」 完全ガイド

2018年5月20日

旧松前城本丸表御殿玄関

2017年5月1日

松前城本丸御門

2017年5月1日

松前公園

2017年5月1日

松前城

2017年5月1日

 

この記事が気に入ったら
いいね!しよう

最新情報をお届けします

Twitter でニッポン旅マガジンをフォローしよう!

ABOUTこの記事をかいた人。

アバター画像

日本全国を駆け巡るプレスマンユニオン編集部。I did it,and you can tooを合い言葉に、皆さんの代表として取材。ユーザー代表の気持ちと、記者目線での取材成果を、記事中にたっぷりと活かしています。取材先でプレスマンユニオン取材班を見かけたら、ぜひ声をかけてください!

よく読まれている記事

こちらもどうぞ