岩手県花巻市、花巻温泉を流れる台川に懸る滝が、釜淵の滝(かまぶちのたき)。落差8.5m、幅30mの滑滝(なめたき)で、丸みを帯びた岩の上を流れ落ちています。『台川』にも記される宮沢賢治ゆかりの滝で、国の名勝「イーハトーブの風景地」のひとつ。
宮沢賢治の『台川』に、生徒たちと訪れた光景が描かれる
花巻温泉郷から徒歩10分ほどの位置にあり、滝見台、さらには周回する遊歩道も設けられているので、散策にも絶好。
宮沢賢治は、郡立稗貫農学校(ぐんりつひえぬきのうがっこう/大正12年から 岩手県立花巻農学校、現・花巻農業高等学校)の教師時代(大正10年~大正15年の4年3ヶ月)、生徒たちと何度かこの滝を訪れ、地質調査も行なっています。
宮沢賢治の『台川』に、
「これから又こゝへ一返帰って十一時には向ふの宿へつかなければいけないんだ。『何処さ行ぐのす。』さうだ、釜淵かまぶちまで行くといふのを知らないものもあるんだな。〔釜淵まで、一寸ちょっと三十分ばかり。〕」
「『釜淵だら俺ぁ前になんぼがへりも見だ。それでも今日も来た』うしろで云ってゐる。あの顔の赤い、そしていつでも少し眼が血走ってどうかすると泣いてゐるやうに見える、あの生徒だ」
「もうずんずん瀑(たき)をのぼって行く。cascadeだ。こんな広い平らな明るい瀑はありがたい。上へ行ったらもっと平らで明るいだらう」
と記されています。
滝の名は、この岩が炊飯に使う釜を伏せた姿に似ているから、釜淵の滝と呼ばれています。
深く大きな滝壺(淵)が釜状だからという説もあり、釜滝ではなく、釜淵の滝と称することから、こちらも説得力があります。
ちなみに、花巻温泉は、台温泉から温泉を引湯し、宮沢賢治が岩手県立花巻農学校教師だった大正12年、新温泉として開業。
宮沢賢治設計の南斜花壇はバラ園に変わっています。
国の名勝「イーハトーブの風景地」に指定される宮沢賢治作品の源泉となった場所は、釜淵の滝のほか、花巻市のイギリス海岸、岩手郡雫石町の七ツ森(7つの連なった低山の総称)、狼森(おいのもり/小岩井農場内の森)、滝沢市の鞍掛山、花巻市、遠野市、奥州市の五輪峠(ごりんとうげ)、奥州市、気仙郡住田町、遠野市にまたがる種山ヶ原(種山ヶ原モナドノックス)があります。
釜淵の滝 | |
名称 | 釜淵の滝/かまぶちのたき |
所在地 | 岩手県花巻市湯本 |
関連HP | 花巻観光協会公式ホームページ |
電車・バスで | JR花巻駅から岩手交通バスで22分、釜淵の滝入口下車、徒歩10分 |
ドライブで | 東北自動車道花巻ICから約5km |
駐車場 | 5台/無料 |
問い合わせ | 花巻温泉総合予約センター TEL:0198-37-2111 |
掲載の内容は取材時のものです。最新の情報をご確認の上、おでかけ下さい。 |
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