日本国内の普通鉄道(路面電車など軌道を除く)の線路の幅(軌間)がもっとも広いのは、新幹線や京成、京急、近鉄、阪急、阪神などの標準軌(1435mm)で、それ以外は狭軌(1067mm)、特殊狭軌(762mm)ですが、例外中の例外が、京王本線と都営新宿線で、馬車軌間(1372mm)という特殊なもの。
京王電気軌道として路面電車で創業の歴史を今に伝える

鉄道発祥のイギリスでは、4フィート6インチ軌間がこの馬車軌間で、スコットランドのラナークシャー地方の鉄道で採用されたため、英語圏ではスコッチゲージ(Scotch gauge)と称され、ルーツ国でも希少な軌間。
イギリスでは1846年、法律でこの4フィート6インチ軌間を禁じたため、1882年開業の日本の東京馬車鉄道がこの軌間を採用、これが「馬車軌間」と呼ばれるゆえんになっています。
東京馬車鉄道は、電化され東京市街鉄道と東京電気鉄道へ、さらに東京市電、東京都電へと変遷しますが、馬車軌間の変更はなく、実は都電荒川線(東京さくらトラム)は今もこの馬車軌間です。
明治28年、京都電気鉄道(京電)が運行した伏見線は、日本最初の路面電車ですが1067mmの狭軌を採用、なぜ東京馬車鉄道が4フィート6インチ軌間(1372mm)を採用したかは、今も謎に包まれています。
東急世田谷線も馬車軌間(1372mm)ですが、こちらは東急電鉄の軌道線で、路面電車と同じ。
実は玉川電気鉄道として敷設されたこの線は、当初、東京市電への乗り入れを計画していたため、馬車軌間が採用されたという経緯があります。
ではなぜ京王電鉄・京王線が馬車軌間なのかといえば、1913年、笹塚~調布開業時の社名は京王電気軌道。
つまりは鉄道ではなく、路面電車の軌道として開業しており、軌道としての先輩である東京市電を真似たから。
1914年の東京市電は営業キロ128.0kmという大路線網を有しており、京王も新宿~幡ヶ谷、仙川~柴崎は甲州街道を走った路面電車だったことで、この馬車軌間を採用したのです。
京浜急行電鉄も京浜電気鉄道時代の1904年〜1933年には、あえて馬車軌間に改軌して運行、京成電鉄も王子電気軌道(都電荒川線の前身)に乗り入れを計画していたため馬車軌間でしたが、結果として都営浅草線への乗り入れのため1959年に標準軌に改軌しています。
こうして京王線だけは私鉄唯一の馬車軌間となっていますが、京王線と直通する都営新宿線は、地下鉄で唯一の馬車軌間を採用することとなったのです。
同じ京王電鉄でも井の頭線は帝都電鉄(その前身は東京山手急行電鉄)の路線で、戦後の大東急解体以前は東京急行電鉄井の頭線だったため、軌間は小田急線と同じ狭軌となっています。
ちなみに京王線のお古の電車が富士急行などに譲渡される際には台車を交換して運用されています。

日本で唯一、「馬車軌間」を採用した私鉄&地下鉄が東京に! | |
掲載の内容は取材時のものです。最新の情報をご確認の上、おでかけ下さい。 |
最新情報をお届けします
Twitter でニッポン旅マガジンをフォローしよう!
Follow @tabi_mag