「ワイングラス型の漁港」(正式名は島式漁港)なる言葉を知る人は、かなりの土木通でしょう。遠浅で干満の激しい海岸だと、漁港を造っても砂で埋もれたり、観潮の時に沖までの長い砂浜ができて漁船の上げ下ろしに難儀します。そこで、海岸の沖合に人工島のような漁港を造り、海岸と橋で結ぶというのが「島式漁港」です。
千歳空港から一路長万部へ、目指すはワイン型の国縫漁港
日本初登場は、10年の歳月を掛けて平成6年に完成した北海道長万部町の国縫漁港(くんぬいぎょこ)です。
穴場スポット大好きな取材班は、「島式」とか、「おしゃまんべい」(長万部BAYのつもりのさえないギャグ)を車中に放ちながらレンタカーを長万部方向に走らせたのです。
目指すは函館本線の国縫駅。
駅近くに噂の島式漁港があるからです。
カーナビにもなんかイマイチ表現されない島式漁港ですが、ここで、スマホでGoogle地図を眺めて、「どひゃー」となったのです。
空からや地図からなら「おおーっ」と感動できるでしょう。
まさに『珍日本紀行』にピッタリのユニークな形状です。
後から裏付け取材をして判明したのですが、防波堤が弧を描くのは海流に与える悪影響を最小限に抑えるためとか。
しかも穏やかになった背後の海に、浅海生物を育む場としたいという構想もあるそうで、意外にスグレモノです。
防波堤が浜から離れた位置にあるため、砂浜を消失することがないというのが島式漁港のメリットというわけで、砂浜部分でも立派な漁港が建設できるということに。
好漁場である噴火湾に新しい港を、でも砂浜の海岸で無理という難題を一挙に解決したのが島式漁港。
建設に当たっては、地域が砂浜海岸であり、漂砂や海浜の変形に充分配慮することと、生態系を守るという環境保全が求められ、着工前の昭和57年10月に第一種漁港(長万部漁業協同組合管轄)に指定、昭和59年度に着工、平成6年3月に完成しています。
総工費は50億円というので、一大土木工事だったことがよくわかります。
現在、周辺は国縫漁港海浜公園として整備され、漁港内はカレイなどの釣りを楽しむことができます。
ちなみに、長万部は、アイヌ語のオ・シャマン・ペ(川口に・カレイが・ある)に由来するといわれ、昔からカレイがよく穫れたことがわかります。
名称 | 【知られざるニッポン】vol.43 「ワイングラス型の漁港」(島式漁港) |
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