芦ノ湖に浮かぶ「箱根海賊船」、どうやって浮かべた!?

芦ノ湖に浮かぶ「箱根海賊船」。小田急グループの小田急箱根が運航する遊覧船で、中世ヨーロッパの帆船をモチーフにした初代海賊船「パイオニア」が1964年に就航以来、7隻の海賊船が就航しています。7代目の「クイーン芦ノ湖」は定員541名。そんな大型の遊覧船をどうやって浮かべているのしょう。

過去7隻の海賊船が芦ノ湖に浮かぶ

【箱根海賊船】クイーン芦ノ湖ができるまで

芦ノ湖は、箱根カルデラのカルデラ湖。
7代目で水戸岡鋭治デザインの「クイーン芦ノ湖」(2019年4月デビュー)は、全長35.00m、幅10.00mとかなり大きなサイズで、山上の湖に大型の遊覧船を運ぶためには、超巨大なトレーラーに載せるしかありません。

東海道・山陽新幹線のN700Sは、車体長27.35m x 車体幅3.360mで、長さはありますが、幅が狭いため陸上輸送が可能です。
「箱根海賊船」は、幅も高さもあるため、陸上輸送はできません。

そのため、大型のトレーラーで運べる大きさにまで船体を細かく分割、芦ノ湖の湖尻、桃源台ターミナルすぐ横あるドックまで運んでいるのです。

小田急グループが芦ノ湖の遊覧船事業に参入したのは、実は後発。
箱根遊船が明治44年に遊覧船の運航を開始、大正9年に箱根土地(現在の西武・プリンスホテルグループ)が買収し、芦ノ湖の観光船事業を独占したという歴史があります。

日本初の双胴旅客船「くらかけ丸」が就航したのに対し、小田急グループは、海賊船「パイオニア」を投入して、現在の箱根ゴールデンコースが誕生したのです。

日立造船神奈川工場で、「パイオニア」、「ビクトリア」、「ロワイヤル」、「バーサ」、「ビクトリー」、「ロワイヤルⅡ」と歴代の6隻を、そして後継のジャパン マリンユナイテッドで、「クイーン芦ノ湖」を建造し、「ビクトリー」、「ロワイヤルⅡ」、「クイーン芦ノ湖」が現役で就航。

神奈川県内の工場で製造した船体を分割して、芦ノ湖湖畔・桃源台のドックに運び込み、船体の接合や艤装工事を実施。
その後、進水し、湖上での試運転を経て営業運航にたどり着くというプロセスです。
現役で就航する船の修理や定期点検もこのドックで行なわれています。

家族やグループ、カップルで箱根・芦ノ湖に出かける機会があったらぜひ、「芦ノ湖にどうやって海賊船を浮かべたのでしょう?」の問題を出してみてください。
案外、「トレーラーに乗せて深夜運んだ」という回答も多いかと思います。

実は「トレーラーに乗せて深夜運んだ」は一部正解で、分割した船体は深夜や早朝の時間帯に大型のトレーラーで運んでいるのです。
ブロック工法と呼ばれるもので第二次世界大戦の最中、アメリカで大量生産された輸送船「Liberty ship」(リバティ船)の製造がルーツ。
5年間ほどの間に18の造船所で2710隻もの船が進水しましたが、ブロック工法と溶接結合で量産、戦後はこの工法がポピュラーとなっているのです。
世界各地で湖に浮かぶ大型の遊覧船は、すべてこの方法で浮かんでいるのです。

芦ノ湖に浮かぶ「箱根海賊船」、どうやって浮かべた!?
掲載の内容は取材時のものです。最新の情報をご確認の上、おでかけ下さい。
芦ノ湖

芦ノ湖

神奈川県足柄下郡箱根町、箱根火山のカルデラ湖が、芦ノ湖(あしのこ)。かつて「箱根の海」とも呼ばれていた芦ノ湖は、今から数千年前の火山活動でできた三重式火山の火口原湖。標高723m、面積7.1km、最大深度43.5mの湖で、ニジマス、ワカサギ

箱根海賊船(箱根観光船)

箱根海賊船(箱根観光船)

神奈川県箱根町、小田急系の「箱根フリーパス」で乗船できる箱根ゴールデンコースの一部となっているのが箱根海賊船(箱根観光船)。箱根観光船が正式名ですが、箱根海賊船と通称されています。箱根ロープウェイから桃源台で乗り継ぐことができます。箱根町、

 

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