埼玉県川口市舟戸町、荒川のスーパー堤防上に建つ真言宗智山派の寺が、善光寺。鎌倉時代初期の建久8年(1197年)、定尊が善光寺如来のお告げで、笈(おい)に入れた阿弥陀三尊を携えて諸国を訪ね歩き、笈が動かなくなったことから開山したという古刹です。
江戸時代には江戸近郊の名所として賑わった寺
江戸時代、善光寺の建つ川口は、将軍が日光社参で使用した日光御成道(岩槻街道)沿いに位置し、しかも善光寺は荒川(入間川) を渡河する川口の渡し場に近かったこともあり、善光寺江戸近郊の名所として大いに信仰されたのです。
信濃の善光寺と同様「一光三尊阿弥陀如来」が本尊で、信濃の善光寺と同じ御利益があるとされたことから、江戸市民は手軽に参詣できる川口の善光寺を訪れたのです。
慶安2年 (1649年)には3代将軍・徳川家光から朱印状を拝領、江戸時代には信濃の善光寺、甲州の善光寺(甲斐善光寺)とともに日本三善光寺(日本三大善光寺)にも数えられたほどに隆盛しました。
とくに善光寺の御開帳では、参道には露店や見世物小屋が建ち並び、雑司ヶ谷の鬼子母神などを上回る人出を集めました。
あまりの人出で、渡船が転覆することもあったため、荒川に御開帳の時だけ、板橋を架橋したほどと、文化9年〜文政12年に津田敬順(江戸小日向廓然寺の僧、十方庵)の見聞記『遊歴雑記』には記されています。
歌川広重の『名所江戸百景 川口のわたし善光寺』、天保年間(1830年〜1844年)に刊行された江戸の地誌『江戸名所図会』にも描かれているのは、こうした江戸庶民の信仰と人気から。
鉄道博物館に保存されるSL「善光」の名は、川口の善光寺に由来!
鉄道博物館(埼玉県さいたま市)に展示保存される鉄道記念物1292号蒸気機関車「善光」(イギリスのマニング・ワードル社製造)は、日本鉄道の川口以北の日本鉄道第一区線(現・JR高崎線)敷設工事で活躍した蒸気機関車で、明治15年、隅田川から荒川を艀(はしけ)に乗せて運ばれ、善光寺裏で組み立てられたことから「善光」の名がついています。
しかも善光寺脇で陸揚げの際、あまりに重いため、艀が沈没し、機関車が水没。
水没した機関車を善光寺の檀家が総出で引き上げたというエピソードが残されています。
当初、日本鉄道は荒川に橋を架けることが遅れ、起点駅が品川であることも決まってなかったため、まずは川口〜熊谷の開通を目指し、善光寺で建設用のSLを組み立て、建設工事に投入し、実際の営業運転でも使用したのです。
善光寺(川口市) | |
名称 | 善光寺(川口市)/ぜんこうじ(かわぐちし) |
所在地 | 埼玉県川口市舟戸町1-29 |
関連HP | 善光寺公式ホームページ |
電車・バスで | JR川口駅から徒歩15分、埼玉高速鉄道川口元郷駅から徒歩25分 |
ドライブで | 首都高速東領家ICから約4km、鹿浜橋ICから約5km |
駐車場 | 50台/無料 |
問い合わせ | 善光寺 TEL:048-222-2124 |
掲載の内容は取材時のものです。最新の情報をご確認の上、おでかけ下さい。 |
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