日本三大桜、日本五大桜といわれる巨桜、古桜には、ソメイヨシノはありません。病虫害、そして風雪に耐え抜いて、数百年、さらには1000年以上を生き抜くには、それなりの進化を遂げなければならなかったと推測できます。ソメイヨシノは人間が生み出したクローン。自然界の桜は、たくましく、そして美しく、長生きです!
樹齢数百年のご長寿桜にはソメイヨシノはない
桜の代名詞ともいえるソメイヨシノ(染井吉野)は、江戸の染井村(東京都豊島区駒込5丁目の染井霊園周辺)の植木職人が、江戸時代の末頃に日本原産種のエドヒガン系の桜とオオシマザクラの交配で生み出した園芸用の品種。
当初の名前だと売れ行きが悪いので、有名な吉野桜をちゃっかり冠して売ったところ大人気となったというもので、実は、ヨシノとはいうものの吉野桜(ヤマザクラ)とは全く関係がない、「偽物」。
DNAがひとつで、実生(種からの発芽)ができないので、全国にわーんさか植えられているソメイヨシノは、すべて人の手で接木(つぎき)したもの。
現代的に言い換えればクローン。
だから病気などに弱く、樹齢は80年ほど。
弘前城(弘前公園)には樹齢120年を超えるソメイヨシノがありますが、これが最長老なのです。
前置きが長くなりましたが、豊臣秀吉の「吉野の花見」で有名な吉野桜は、当然、ソメイヨシノであるはずがなく(まだ開発されていない)、すべてヤマザクラなど。
そのあたりを頭に入れておいていただいて、まずは日本三大桜(大正11年に同時に3本が国の天然記念物に指定)をご長寿順に紹介しましょう。
まずは日本三大桜
というわけで、ご長寿ナンバーワンの桜は、高原に咲くエドヒガンザクラ(江戸彼岸桜)。
日本三大桜は、樹種でいえばエドヒガンザクラ(江戸彼岸桜)が2本、ベニシダレザクラ(紅枝垂桜)1本。
(1)ご長寿ナンバーワン! 山高の神代桜
推定樹齢1800年~2000年のエドヒガンザクラ (江戸彼岸)
山梨県北杜市武川の実相寺境内、標高570mほどの高原に咲きます。
エドヒガンはソメイヨシノより早く花が着き始めるので周囲の開花より早いのが特徴。
ちなみにエドヒガンザクラの日本の南限は栗野岳(鹿児島県姶良郡湧水町)なので寒冷地が好きということもなく、全国で「野生のパワー」を示してくれます。
また、この桜の巨樹がある土地が、まさにパワースポットといえるかもしれません。
【見頃は例年4月上旬】
(2)淡墨色が最高に素敵! 根尾谷の淡墨桜
推定樹齢1500年以上のエドヒガンザクラ(江戸彼岸桜)で、根尾断層で有名な岐阜県本巣市根尾に咲きます。 蕾のときは薄いピンク、満開時には白色、散りぎわには特異の淡い墨色を帯びてくるのがその名の由来。 【見頃は4月上旬〜中旬】
(3)滝のように咲き匂う 三春の滝桜
推定樹齢1000年超のベニシダレザクラ(紅枝垂桜)
福島県田村郡三春町の滝地区に咲き、四方に広げた枝から薄紅の花が流れ落ちる滝のように咲き匂うことが名の由来。
三春藩主の御用木として保護されたためもあって、シダレザクラでは唯一の三大桜入りを果たしています。
【見頃は4月中旬〜下旬】
2本足して日本五大桜
以上の日本三大桜にふたつの桜が足されて、五大桜といわれています。
三大桜を知っている人も五大桜となるとグンと知名度が落ちます。
樹種は、ヤマザクラ(山桜)とカバザクラ(樺桜)です。
(4)源頼朝ゆかり 狩宿の下馬桜
推定樹齢は800年の日本最古級のヤマザクラ(山桜)。 静岡県富士宮市の白糸の滝近くに咲き、菜の花とのコラボも見事。 1193(建久4)年、源頼朝が富士の巻狩りを行なった際に、下馬した場所に咲くので「狩宿(かりやど)の下馬(げば)桜」の名があります。 【見頃は4月中旬】
(5)世界で1本の品種 石戸蒲ザクラ
推定樹齢800年以上のカバザクラ(樺桜)の古木。
埼玉県北本市の東光寺の境内に咲くヤマザクラとエドヒガンの自然雑種。世界で東光寺のこの1本しか存在しません。
義経追討などにも活躍した源範頼が源頼朝から謀反の疑いを受けた際に、石戸宿に逃げ、隠れて生き延びたという伝説が名の由来。
開花時期はソメイヨシノより数日遅く、ソメイヨシノの散り桜を楽しみながら石戸蒲ザクラの見頃を楽しめます。
【見頃は4月上旬】
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