赤石岳

赤石岳

静岡県(静岡市葵区)と長野県(下伊那郡大鹿村)の県境にまたがる、南アルプス(赤石山脈)の深部に位置する高嶺が赤石岳(あかいしだけ)。深田久弥の『日本百名山』にも選定の山で、標高3120.5m、南アルプス第4位、日本国第7位の高峰です。

赤石山脈という名称は、この山から転用

大井川支流の赤石沢の源流にあることが山名の由来ですが、南アルプスが赤石山脈と呼ばれるのも、この赤石岳から。
赤石沢という名は、赤色のラジオラリアチャート(ラジオラリア=放散虫)が露出することで、沢が赤く見えることに由来します。
文政3年(1820年)に出版された、駿河国を実地調査を繰り返し、精緻な描写で記述する地誌『駿河記』(桑原藤泰編)にも「赤石嶽」と表記されているので、江戸時代からの呼称であることがわかります。

近代的登山では、明治12年、内務省陸地局・梨羽晴起、寺沢正明が登頂し、明治19年、敬神講の先達(せんだつ=ガイド役)・堀本丈吉が赤石岳への登山道を開拓し、講中登山が行なわれています。
明治22年には一等三角点が設置され、明治25年8月19日、ウォルター・ウェストンが小渋川からのルートで外国人として初登頂。

国内で最高地点の一等三角点が設置されることからわかるように、眺望も南アルプスでは屈指。
南アルプスの山々はもちろん、富士山、奥秩父連峰、八ヶ岳、北アルプスの槍穂高連峰、中央アルプス、御嶽山という大パノラマが展開します。

南アルプスで最南端となるカール(圏谷)が東側斜面発達。
これが北沢カールで、カール底にはモレーン(氷河堆積物の岩石塊)があり、ハクサンイチゲやシナノキンバイなど高山植物のお花畑になっています。

登山ルートとしては、南アルプス縦走ルート、そして椹島(さわらじま)からのルートがあり、椹島からが一般的ですが、それでも中級以上向けの登山コースとなります。
定番の登山コースでも、千枚岳~悪沢岳~赤石岳と時計回りに周回する山中2泊3日プラン(1泊目・県営千枚小屋、2泊目・県営荒川小屋、ともに食事も用意)。
コース途中には、県営千枚小屋、市営中岳避難小屋、県営荒川小屋、県営赤石岳避難小屋、県営赤石小屋があるので、宿泊、避難が可能。

畑薙夏季臨時駐車場までマイカー、バスで到達し、東海フォレストバスで椹島まで到達するというのがアプローチとなります(東海フォレストバスが宿泊予約者専用の送迎バスです=対象施設:さわらじまロッヂ、県営千枚小屋、県営荒川小屋、県営赤石小屋、県営赤石岳避難小屋、市営中岳避難小屋など、避難小屋は食事提供がありません)。

赤石岳は山全体が特種東海製紙の土地(私有地)で、大正15年8月7日には前身の東海紙料の創業者、大倉喜八郎(大倉財閥/明治28年、徳川幕府の重臣だった雅楽頭系酒井家宗家17代・酒井忠惇男爵から大井川上流域の山林を購入)が「自社の所有する土地の最高所へ」ということで、なんと駕籠(かご)で担がれての登頂を果たしています(大倉喜八郎88歳)。
登山口の椹島には、大倉喜八郎碑が立ち、山頂で詠んだ「赤石の山のうてなに万歳を唱ふる老いも有難きの世や」が刻まれています。

赤石岳
静岡県営赤石岳避難小屋
赤石岳
静岡県営荒川小屋と小赤石岳
赤石岳
名称 赤石岳/あかいしだけ
所在地 静岡県静岡市葵区田代・長野県下伊那郡大鹿村
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北岳

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