「鳴門の渦潮」(なるとのうずしお)で知られる鳴門海峡。有名な渦潮は直径20~30mに達して、日本最大の潮流。これに続くのが来島海峡(くるしまかいきょう)。そして平家が滅んだ源平合戦で有名な壇ノ浦の戦いも1日に4回潮流の向きが変わるという関門海峡で、この3ヶ所が日本三大潮流(日本三大急潮)です。
まず初めに海流と潮流の違いから
はじめに、海流と潮流の違いを知っておきましょう。
海流=常に一定方向に流れる大きな流れ
潮流=海の干満により、周期的に流れの方向がほぼ180度変わる海水の流れです。
海流でいえば太平洋を北上する黒潮は時速2〜3ノット(3.7km〜5.6km)。
日本海を北上する対馬海流は時速1〜1.5ノット(1.9km〜2.8km)です。
潮の満ち引きは、月と太陽との引力による海水位の変化が原因です。
月の引力で海面が引っ張られれば、満潮に、逆であれば干潮で、これが6時間周期で繰り返されます。
潮流は、月の引力の影響が大きいので、「干満により起こる海水の周期的な流れ」で、干潮時から満潮時にかけての潮流を「上げ潮流」、逆に満潮から干潮への移行時は「下げ潮流」と呼んでいます。
日本三大潮流が、すべて瀬戸内海にあるのは、瀬戸内海は干満差が大きく、また、狭い水道や瀬戸などが多く地形が複雑なため、流れの速い潮流が生まれる構造になっているのです。
瀬戸内海の主な潮流の速さは(海上保安庁のデータ)、最速の鳴門海峡が10.5ノット(時速19.4km)、来島海峡が10.3ノット(時速19.1km)、関門海峡が9.4ノット(時速17.4km)で、大畠瀬戸6.9ノット(時速12.8km)、明石海峡6.7ノット(時速12.4km)、速吸瀬戸5.7ノット(時速10.6km)と続いています。
この海上保安庁のデータからも日本三大潮流(日本三大急潮)が速さ的にも裏付けられます。
三大潮流1 鳴門海峡/鳴門の渦潮
淡路島(兵庫県南あわじ市)と四国(徳島県鳴門市)との間、瀬戸内海(播磨灘)と太平洋を隔てる海峡が、鳴門海峡。
幅は約1.3km、深さは最深部で200mの海峡ですが、ここが日本一の潮流、鳴門の渦潮の生まれる場所です。
太平洋側から満ちてきた潮は、紀伊半島と淡路島の間、紀淡海峡を通り、大阪湾を抜け、瀬戸内海(播磨灘)へと反時計回りに潮流は流れて、播磨灘が満潮になるまでには5時間〜6時間を有します。
この時間差で、「播磨灘が満潮になる」時間帯に、鳴門海峡の南側ではすでに「干潮」になっており、その高低差は、狭い海峡部分では最大1.5mにもなるのです。
この落差が日本一の速さの潮流を生み出しています。
世界一の大きさの渦潮を世界遺産にという運動も、南あわじ市などで展開されています。
三大潮流2 来島海峡
愛媛県今治市とその沖の大島との間にあるのが来島海峡。
潮流の早さは10ノットにもなるという海の難所で、古くから「一に来島、二に鳴門、三と下って馬関瀬戸(ばかんせと=関門海峡のこと)」と船乗りたちに恐れられてきました。
現在、海峡には本州四国連絡橋の尾道・今治ルート(瀬戸内しまなみ海道)の一部となる来島海峡大橋が架かっています。
ここを通過する船は、安全な通航のため、潮流の流向によって通航する経路を変更する「順中逆西」(じゅんちゅうぎゃくせい)というルールが海上交通安全法で定められています。
潮流に乗って航行する場合(順潮)の場合は短く屈曲の少ない中水道(馬島と中渡島の間)を、潮流に逆らって航行する場合は西水道(馬島と小島の間)を進むという決まりです。
瀬戸内海は東京湾などに比べて干満の差が倍の4mほどありますが、複数の島が狭い水道を挟んで連なるように存在する来島海峡は、とくに大潮の日にはそこを抜ける潮流が速度を増して10ノット(18.5km)にもなることがわかっています。
三大潮流3 関門海峡
本州(山口県下関市)と九州(福岡県北九州市)を隔てる関門海峡。
かつては下関が馬関と呼ばれたことから、馬関海峡という名で呼ばれることも。
もっとも海峡が狭まる壇ノ浦と和布刈の間は、幅がわずか600mという早鞆の瀬戸(はやとものせと)です。
潮流は1日4度も向きを変え、満潮時の流れは、瀬戸内海西端の周防灘(すおうなだ)から日本海・玄界灘側の響灘(ひびきなだ)への西方向で西流れといいます。
逆に干潮時は、響灘から周防灘への東方向でその流れを東流れと呼んでいます。
「平家、急潮に滅ぶ」という平家滅亡潮流説(大正8年『歴史と地理』発表、歴史学者で東京帝国大学教授・黒板勝美の研究)によれば、源平合戦時には、15:00頃に潮の流れの向きが変わり、西流れに変わったためといわれています。
合戦が行なわれた寿永4年3月24日は、黒板勝美教授の調査で、当時の月食の記録を手がかりにした月齢から大潮の日だったと推測したのです(近年、壇ノ浦合戦の日は小潮だったとする説もあって定かでありません)。
源平合戦から830年以上も経つ現在でも、関門海峡の潮流の速さと複雑さ、さらに通行量の多さなどから海峡を通過する船舶は水先案内人(パイロット)の同乗が義務づけられています。
海上交通センター(マーチス)が潮流放送、潮流信号などで海上事故を防いでいます。
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