新宿御苑

高遠藩主内藤氏の屋敷跡を4年の歳月をかけ整備し、明治39年に開園。昭和22年に国民公園として一般に開放されるようになった新宿の貴重なオアシスです。総面積約59haの広大な敷地の中央に、広い芝生を持つイギリス式風景庭園があり、それをはさむようにして、南東にフランス式整形庭園、南西に日本庭園が配されています。

フランス式、イギリス風景式、日本庭園を観賞!

バラが咲くフランス式整形庭園
芝生の緑がまぶしいイギリス式風景庭園

広さ58.3ha、周囲3.5kmの新宿御苑、都内の公園としては珍しい環境省自然環境局の管理。
広大な敷地ゆえに、入口も新宿門、大木戸門、千駄ヶ谷門の3ヶ所用意されています。

一年を通して四季折々の花を楽しむことが可能で、春の桜と、皇室の菊作りの伝統を受け継いだ秋(11月)の菊花壇展が有名。

プラタナス並木が美しいフランス式整形庭園、明るく伸びやかなイギリス風景式庭園、伝統的な日本庭園があり、「風景式庭園の名作」といわれています。

園内に熱帯・亜熱帯の植物のヤシやシダ、ランなど500種の植物を育成栽培する観賞温室には、絶滅危惧植物の保護増殖、ワシントン条約で保護されている洋ラン等の栽培を行う特別室が設置されています。

レストランやカフェ、売店で休憩できるほか、日本庭園に併設される翔天亭や茶室・楽羽亭(らくうてい)では、立礼席での呈茶サービスも行なっています。
注目は、園内唯一のレストランである「レストランゆりのき」。日本で初めて西洋野菜を栽培した歴史をもつ新宿御苑ということもあって、ゆかりの西洋野菜はもちろん、「内藤とうがらし」、「内藤かぼちゃ」、「滝野川ゴボウ」など、新宿の「地野菜」(江戸東京野菜)も用いた料理が楽しめるのです。

プラタナスの並木はフランス式整形庭園の一部
ベンチに座れば、気分はパリ郊外!

新宿御苑は東京を代表する桜の名所

新宿御苑の桜は、約75種1500本が植栽され、種類が豊富なため長い期間桜の花を楽しめます。
2月中旬頃のカンザクラに始まり、3月中旬のオオカンザクラ、カンヒザクラ、3月下旬のオオシマザクラ、コヒガン、シダレザクラ、ソメイヨシノ、4月下旬のカスミザクラまでお花見の時期は2月中旬〜4月下旬と長期間。

桜が見頃を迎える3月25日〜4月24日には例年『桜の特別開園』も開催されています。

広大な内藤家の土地が新宿御苑の誕生につながった!

徳川家康の江戸入封に伴い、三河国岡崎以来の譜代の家臣である内藤清成(ないとうきよなり/後の高遠藩内藤家初代)が豊島郡野方領に広大な土地を拝領して、下屋敷を築いたのが現在の新宿御苑(上屋敷は神田小川町)。江戸に幕府が開かれたのちに定められた甲州街道の宿場の名も、内藤新宿です。

当初は代々木から四谷、千駄ヶ谷から大久保に至る20万余坪の広大な敷地だったのですが、甲州街道の宿場・内藤新宿の誕生の際に、宿場の土地部分を返上などしています。

内藤清成は、東八州庶務奉行・関東総奉行・江戸町奉行、老中などを務め、江戸幕府初期に行政手腕を発揮しています。

明治5年に至っても、内藤家は新宿に10万坪もの土地を有していました。
明治5年、内藤家の土地9万5000坪余と、もとは内藤家の屋敷地であった隣接地を合わせた17万8000坪(58.3ha)の土地に近代農業振興を目的とする「内藤新宿試験場」が開設。

農事修学所となり、明治10年に駒場に移転したため(東京大学農学部の前身、駒場農学校が誕生)、明治12年、宮内省所管の「新宿植物御苑」としてオープンします。
現在の日本庭園だったところは、鴨池、養魚池、動物園(大正15年上野動物園に下賜)でした。

明治39年5月にベルサイユ園芸学校教授・アンリー・マルチネーに設計を依頼し、現在の新宿御苑が誕生しました。
昭和24年に「国民公園新宿御苑」として一般に開放され(昭和25年に厚生省管轄に)、昭和46年7月の環境庁の発足にともない、全国の国立公園を管理する環境省に移管されました。

環境省が管理するのは、東京に残された貴重で、大規模な自然だからです。内藤家が明治維新に至るまで、石高以上の広大な土地を維持し続けたため、今の新宿御苑が生まれたというわけなのです。

玉藻池は大名庭園時代の名残

高遠藩主内藤家の下屋敷の大名庭園の面影を残すのは、玉藻池です。江戸時代には玉川園と称して、江戸の名園のひとつに数えられていました。

なぜ、玉川園なのかといえば、玉川上水の余水を利用してつくったから。
新宿御苑北側の無料エリアには「玉川上水・内藤新宿分水散歩道」が整備されています(有料エリアからは入場できません)。

この玉川園、1772(安永元)年に完成し、現在の新宿御苑の日本庭園のルーツとなっているのです。

新宿御苑には上の池、中の池、下の池、そして玉藻池があり、大名庭園の名残があるのは、大木戸門に近い玉藻池です。

池畔には松の老木が茂る玉藻池。それが大名庭園の名残です

ここを見逃すな! 旧御涼亭

上の池近く、日本庭園エリア内にあるのが旧御凉亭(きゅうごりょうてい)。昭和天皇ご成婚記念に台湾在住の日本人が寄贈したもので、中国風の建物なのはそのため。昭和2年に完成。

実は、ここからの眺めは、新宿御苑一の絶景ともいわれています。

ここを見逃すな! 旧洋館御休所

皇族が温室を利用する際の休憩所として明治29年に建築されたのが旧洋館御休所。
アーリーアメリカン風の洋館で、あまり知られていませんが、国の重要文化財です。

建築当時は温室と渡り廊下でつながっていました。
皇室関係の庭園休息施設として唯一の遺構となっています。
基本的には毎月第2・4土曜しか公開されないので、公開日を新宿御苑公式ホームページの「行事カレンダー」で確認の上、お出かけを。

江戸切絵図に見る 高遠藩内藤家下屋敷(新宿御苑)

内藤新宿という宿場町だった現在の新宿。甲州街道が東の四ツ谷御門に向けて伸びています。
四谷三丁目界隈の寺の多くが廃仏毀釈の荒波を生き抜いて現存しているので、新旧の地図対比も楽しめます。

新宿御苑
名称 新宿御苑/しんじゅくぎょえん
所在地 東京都新宿区内藤町11
関連HP 新宿御苑公式ホームページ
電車・バスで 東京メトロ丸ノ内線新宿御苑前駅から徒歩5分
ドライブで 首都高速外苑ランプから約1.7km
駐車場 新宿御苑駐車場(200台/有料)
問い合わせ 新宿御苑 TEL:03-3341-1461/FAX:03-3341-1528
掲載の内容は取材時のものです、最新の情報をご確認の上、おでかけ下さい。
新宿御苑『秋の特別開園』(菊花壇展)

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