神田明神(神田神社)前の明神甘酒の店。1846(弘化3)年創業という老舗で、地下6mにある明治37年改築という輸入レンガ造りの室(むろ)でつくる米麹(こめこうじ)をベースにした昔ながらの味。江戸時代の慶長の始めに今のかたちの甘酒となりましたが、江戸庶民にとっては、貴重な甘みだったとか。自然の甘味を伝える希少な店です。
初代は弟の仇討ちで江戸に出、敵に会うために神田明神脇に出店!
神田明神の鳥居側が販売店、その横が喫茶部となっています。時間がなければ、土産用に購入もいいですが、できれば骨董の並ぶ店内でのんびりとくつろぎましょう。ただし、初詣や神田明神の祭礼などの際には混雑するのでご注意を。
初代の天野新助は、京丹後の宮津藩出身。弟の仇討ちで江戸に出てきて千葉道場で腕を上げます。店の前を江戸と京を結ぶ中山道が通り、参拝者も多い「江戸総鎮守」、神田明神の鳥居の脇に店を出せば敵(かたき)に会えるだろうと天野屋を出店したのだとか。時代劇さながらの開店話。
結局敵には会えず、その代わりに会得していたどぶろくの製法をアレンジして甘酒屋が家業になったのだとか。
江戸時代のエネジードリンクといえば、甘酒。
必須アミノ酸やビタミン類はもちろん、デンプンをブドウ糖に分解するアミラーゼ、タンパク質をアミノ酸に分解するプロテアーゼという麹菌独特の酵素など100種の酵素を含有。今でも「飲む点滴」といわれますが、江戸時代にはおもに夏バテ防止の特効薬として重宝されたのだとか。
地下6mの麹の室で、6日間かかって甘酒がつくられる!
地下の室は明治時代にレンガで補強はされてはいますが、200年以上前のもので、天野屋出店以前からあったと推測されています。年間を通して16度に保たれ、関東ローム層は、吸湿と保湿作用に優れているのです。
江戸時代、湯島台地では100軒以上の糀屋(こうじや)があり、関東ロームを掘り下げた地下に室があったのだとか。
そんな室も、今では天野屋1軒になってしまったのです。
原料から製品になるまで6日間かかり、その気の遠くなるような繰り返しが、砂糖が貴重だった時代の爽やかな「天然の甘み」を後世に伝えているのです。
「本物の甘酒の美味しさと優れた栄養価をもっともっと広めたい」と6代目となる当主・天野亀太郎(本名・天野博光)さんは、「作り方は昔とまったく同じで変えようがない。原料から製品になるまで6日間。この繰返しです」と代々伝わる真摯な姿勢を崩していません。
夏には氷甘酒も登場。
神田明神のみやげとして江戸時代から有名だった芝崎納豆や生糀、「久方味噌」(ひさかたみそ)も販売。
納豆は神田明神の傍にあった芝崎道場の修業僧が食べていた「金含豆(こんがんず)」が原形。
久方味噌も「上質の小麦麹があればこその『なめ味噌』」なんだとか。
店内には骨董品、掛け時計、鉄道模型などが飾られていますが実は、ご主人の趣味で集めたものだとか。
店の地下6mにある天然の土室(むろ)は、平成21年に千代田区の有形文化財に指定。現在の建物は、昭和20年3月の空襲で焼失した後の再建ですが、神田明神門前の風景とマッチして千代田区景観まちづくり重要物件に選定されています。
天野屋 | |
名称 | 天野屋/あまのや |
所在地 | 東京都千代田区外神田2-18-15 |
関連HP | 天野屋公式ホームページ |
電車・バスで | JR・東京メトロ丸の内線御茶ノ水駅から徒歩7分 |
駐車場 | 周辺の有料駐車場を利用 |
問い合わせ | 天野屋 TEL:03-3251-7911/FAX:03-3258-8959 |
掲載の内容は取材時のものです、最新の情報をご確認の上、おでかけ下さい。 |
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