【知られざるニッポン】vol.40 日本一のタンチョウ飼育県、岡山

【知られざるニッポン】vol.40 日本一のタンチョウ飼育県、岡山

野生のタンチョウ生息数が日本一なのはもちろん北海道ですが、飼育数となるとなぜか岡山県。実はそれには、国内のタンチョウ生息の歴史が秘められているのです。タンチョウは江戸時代までは日本各地で観察され、後楽園のある備前国にも飛来していました。でも、なぜ、岡山県が飼育数一番なのでしょう!?

『鶴の恩返し』に登場する鶴は、タンチョウ!?

タンチョウ
自然繁殖する道東のタンチョウ

江戸時代には、日本各地に生息していたタンチョウ。
昔話の『鶴の恩返し』に登場する鶴も、実はタンチョウのことだといわれています。

すでに人口100万ほどの世界屈指の大都会だった江戸にもタンチョウは飛来していました。
歌川広重が安政4年(1857年)に描いた『名所江戸百景 蓑輪金杉三河しま』 には見事なタンチョウが描かれていますが、三河島や三ノ輪は、タンチョウの飛来地で、江戸時代の将軍鷹狩りでは、タンチョウがもっとも上物だったのです。
当時三河島村の農民はタンチョウの餌付けを務めとし、毎年11月になると、竹の囲いをめぐらして、餌付けが行なわれていました。

明治以降は、銃による乱獲と開発に伴う湿原の減少で、本州に飛来するタンチョウは絶滅。
北海道でも一時は絶滅したと思われていましたが、大正13年10月に釧路湿原で十数羽を確認。
その後、昭和10年8月、釧路湿原が「釧路丹頂鶴繁殖地(2700ha)」として国の天然記念物に指定され、昭和27年にはタンチョウが「特別天然記念物」に指定。
さらにトウモロコシによる冬の給餌に成功し、現在1000羽まで回復しています。

『名所江戸百景 蓑輪金杉三河しま』
歌川広重『名所江戸百景 蓑輪金杉三河しま』

岡山県内に60羽以上のタンチョウが生息

岡山後楽園・タンチョウ
岡山後楽園のタンチョウ

貞享3年(1686年)、備前岡山藩第2代藩主・池田綱政(いけだつなまさ)は、家臣・津田永忠に命じて岡山後楽園の築庭に着手し、迎賓館として機能を有した御茶屋(後の「延養亭」)が建築されます。

「千代やへん空とぶ鶴のうちむれて庭におりいる宿の行末」は、池田綱政が御茶屋(後の「延養亭」)の前庭に降り立ったタンチョウをみて、瑞兆(めでたい出来事の兆し)と喜び詠んだ歌。
文久3年(1863年)のに岡山後楽園を描いた絵図には、「ツルベヤ」12部屋が記載され、芝生に5羽、砂利島に2羽の鶴の姿が描かれています。

現在、後楽園で飼育されるタンチョウは、昭和30年、岡山の旧制第六高等学校で学んだ中国科学院院長・郭沫若(かくまつじゃく)氏から贈呈された2羽の末裔。
さらに岡山県自然保護センターでは、平成3年の開設時にタンチョウ飼育施設を設けて、後楽園から9羽を移動させ、保護増殖に努めています。
岡山県では、総社市にタンチョウの保護と繁殖を目的に「きびじつるの里」を整備、平成17年には後楽園から譲り受けた卵で人工ふ化も行なわれています。
岡山県におけるタンチョウ将来構想の飼育・繁殖計画に沿って、さらに真庭市の三木ケ原に蒜山タンチョウの里を整備。
現在、岡山県は合計60羽以上と、「日本一のタンチョウ飼育県」となっているのです(北海道に棲息する1000羽は自然繁殖)。

そんなタンチョウは、国の特別天然記念物(文化財保護法)に指定されるほか、国内希少野生動植物種(種の保存法)、環境省レッドリストの絶滅危惧2類(VU=絶滅の危険が増大している種)にもなっています。

岡山県自然保護センター・タンチョウ
岡山県自然保護センターのタンチョウ

岡山後楽園 DATA

名称 岡山後楽園/おかやまこうらくえん
所在地 岡山県岡山市北区後楽園1-5
関連HP 岡山後楽園公式ホームページ
電車・バスで JR岡山駅から岡山電気軌道(路面電車)東山線で5分、城下駅下車、徒歩10分
ドライブで 山陽自動車道岡山ICから約8.5km
駐車場 250台(後楽園専用駐車場)/有料
問い合わせ TEL:086-272-1148
FAX:086-272-1147
掲載の内容は取材時のものです、最新の情報をご確認の上、おでかけ下さい。
岡山後楽園『タンチョウの園内散策』

岡山後楽園『後楽園初春祭/タンチョウの園内散策』

2018年12月31日

岡山後楽園

2017年2月14日
 

 

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ラジオ・テレビレジャー記者会会員/旅ソムリエ。 旅の手帖編集部を経て、まっぷるマガジン地域版の立ち上げ、編集。昭文社ガイドブックのシリーズ企画立案、編集を行なう。その後、ソフトバンクでウエブと連動の旅行雑誌等を制作、出版。愛知万博公式ガイドブックを制作。以降、旅のウエブ、宿泊サイトにコンテンツ提供、カーナビ、ポータルサイトなどマルチメディアの編集に移行。

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