妙法山阿弥陀寺

妙法山阿弥陀寺

和歌山県東牟婁郡那智勝浦町、那智山スカイライン、熊野古道・中辺路(なかへち)途中にある真言宗御室派の寺(女人高野)が、妙法山阿弥陀寺。那智大社から那智山スカイラインを走った妙法山の山上に位置し、那智の滝が神聖視されたのは妙法山に登るための禊祓の地だったからともいわれる聖地中の聖地です。

『那智参詣曼荼羅』で黄泉の国への入口とされた聖地

熊野那智大社から熊野本宮へ向かう熊野古道・中辺路の最大の難所、舟見峠を経て、大雲取越え・小雲取越えへの起点にもなっている寺。
那智山青岸渡寺と妙法山阿弥陀寺を結ぶ熊野古道「かけぬけ道」は、世界文化遺産「紀伊山地の霊場と参詣道」の構成資産にもなっています。

『紀伊国名所図会』熊野篇によれば、大宝3年(703年)、唐・ 天台山の蓮寂上人が法華三昧を修し、妙法蓮華経を写経して山頂に埋めたのが始まりという古刹で、その妙法蓮華経が山名の由来になっています(山頂には奥之院があります)。

空海(弘法大師)が高野山開山の前年、弘仁6年(815年)、妙法山で修行をした際に、極楽浄土への入口として山腹に堂を建てて阿弥陀如来を本尊として安置したと伝えられ、紀州藩の編纂した地誌『紀伊続風土記』ではこれを開山としています。

阿弥陀寺の存在が史料で確認できるのは、鎌倉時代以降で、永正6年(1509年)、本堂から奥の院(浄土堂)への山道の途中に大師堂が建立されています。
『那智参詣曼荼羅』(なちさんけいまんだら)には黄泉の国(よみのくに)の入口(生と死の境の地)として妙法山詣が描かれていることから、江戸時代初期には熊野詣の重要な聖地となっていたことがわかります。
境内に残された熊野参詣者のための標石(しるべいし)も江戸時代のもの。

神仏習合時代、熊野詣の巡礼者は、まず熊野本宮(西方極楽浄土)に参詣、熊野川を下って新宮(東方浄瑠璃浄土=現・熊野速玉大社)、そして那智(南方補陀落浄土)に至り、阿弥陀寺を参拝後、「かけぬけ道」を通って大雲取越・小雲取越を経由して再度、熊野本宮へお詣りして帰るのいうのが順序でした。

明治初年の神仏分離、廃仏毀釈で廃れましたが、明治17年に再興。
昭和56年の火災で本堂、数多くの文化財を失っています。
山門が熊野大鳥居門なのは神仏習合時代(熊野十二所権現を祀った時代)の名残りです。

現存する本堂は、昭和59年の再建。
永正6年(1507年)築の大師堂は和歌山県の文化財。
妙法山山頂には奥の院浄土堂が建っています。

また、北西にある色川富士見峠( いろかわふじみとうげ )は、富士山の見える最遠の地(富士山頂から322.9km)ですが、妙法山富士見台東屋(那智高原公園から徒歩20分)からも、富士山を眺望し、距離的にはほんのわずか及ばず富士山頂から322.6kmです。
まさか空海もこれを知っていたとは思えませんが、聖地中の聖地に、もうひとつ加わる希少性です。

ちなみに、烏帽子に似た烏帽子岩がある烏帽子山(909.5m)、那智大社の真東にあり、那智権現(熊野夫須美大神)が降臨したと伝わる光ヶ峯(685.8m)、そして妙法山(749.5m)が那智三峯です。

妙法山阿弥陀寺
名称 妙法山阿弥陀寺/みょうほうさんあみだじ
所在地 和歌山県東牟婁郡那智勝浦町南平野2270-1
関連HP 妙法山阿弥陀寺公式ホームページ
ドライブで 那智勝浦新宮道路那智勝浦ICから約14km。または、阪和自動車道南紀田辺ICから約118km
駐車場 10台/無料
問い合わせ 妙法山阿弥陀寺 TEL:0735-55-0053/FAX:0735-55-0726
掲載の内容は取材時のものです。最新の情報をご確認の上、おでかけ下さい。
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