大須観音

正式には、真福寺寶生院(ほうしょういん)といい、一般には大須観音の呼び名で親しまれる寺。もともと尾張国長岡庄大須郷(現在の岐阜県羽島市桑原町大須)にあった寺を徳川家康がそのあらたかなる霊験ゆえに名古屋に移したもの。以後、門前に大須商店街が発展し、名古屋屈指の繁華街となったのです。

名古屋随一の大須商店街は観音様の門前町!

浅草観音(浅草寺/東京都台東区)、津観音(観音寺/三重県津市)と並んで「日本三大観音」に数えられる観音霊場。そして真言宗智山派の別格本山にもなっています。

1324(元亨4)年、後醍醐天皇が尾張国長岡庄大須郷(岐阜県羽島市桑原町大須)に北野天満宮を創建。
1333(元弘3)年、別当寺(神社を管理する寺)として創建した真福寺が始まり。

1612(慶長17)年に徳川家康の命で、犬山城主・成瀬正茂が現在地に移転させています。
これは当時大須にあった真福寺が荒廃していたものの貴重な鎌倉時代からの文書を保管していることに家康が注目したから。

大須地区は木曽川と長良川に囲まれた島のような場所で(大きな洲が転じて大須)、家康は度重なる洪水で貴重な文書と霊験あらたかなる観音様が流失するのを恐れたのです。
そのため犬山城主・成瀬正茂に命じて名古屋城下に移転させたというのが真相です。

羽島市桑原町大須地区には今も大須という地名と大須観音(真福寺)が残されている(洪水で旧地から数度の移転をくり返し現存するのは昭和34年の再建)。

一方、名古屋城下に移転した大須観音の七堂伽藍は戦災で焼失し、現存する堂宇は戦後の再建。
収蔵する大須文庫には日本最古の古事記写本(国宝)も収蔵しています。

境内には徳川宗春をテーマにしたからくり人形も

境内に「大正琴発祥の地」碑が立っていますが、大正琴は、大須の住人、森田五郎が明治45年に創案したもの。
「いざ行む雪見にころぶ所まで」の芭蕉句碑は1687(貞享4)年に『笈の小文』の旅において名古屋を再訪した芭蕉が名古屋城下の書林風月堂を訪問した際に詠んだ句。
当初の「いざ出む雪見にころぶ所まで」が後に「いざ行む雪見にころぶ所まで」に改案されています。

また境内には8代将軍・徳川吉宗の享保の改革(質素倹約令)に反し、商業や遊芸を奨励した徳川宗春をテーマにしたからくり人形『宗春爛漫』もあり、1日5回の上演時間には6分間のからくりを楽しむことができます。
東照宮祭・尾張祇園祭(若宮祭・三之丸天王祭)なども奨励し、全国から職人が名古屋に集まり、名古屋のものづくりの基礎を築いた人物とされています。
「名古屋の繁華に京(興)がさめた」などといわれたのもこの頃です。

毎月18日・28日の骨董市は大須名物。
昭和30年に誕生した「尾張三十三観音霊場」の第一番。

大正琴発祥の地碑

大須文庫

仁和寺、根来寺の文庫と合わせて「本朝三文庫」とも呼ばれる「大須文庫」は、日本最古の古事記写本(国宝『古事記賢瑜筆』三帖)など国宝4点・重文37点を含む貴重な文書を保存しています。伽藍は戦災で焼失しましたが「大須文庫」は奇跡的に焼失を免れています。

大須観音のおもな年中行事

1月1日〜3日/新年初詣り=1月1日0:00〜元朝護摩・除夜の鐘(鐘付き券配布/有料)、新春開運初護摩祈祷会
1月第2月曜(成人の日)/左義長火祭り=お札、お守り、注連縄(しめなわ)、正月飾りなどを焚きあげ。14:40〜法要・火入れ
1月18日/初観音=毎月18日は観音様の縁日ですが、年の始の観音様のご縁日は盛大に執り行なわれます
2月3日/節分会=10:00〜豆まき厄除祈祷(豆まき券は有料)。大須観音は寺宝の鬼面に由来し「福は内、福は内」。
3月彼岸中日/春季彼岸会=14:00〜法要
3月21日/弘法大師御正当=9:00〜法要、参詣者に御供え物を接待
4月8日/花まつり=お釈迦様の誕生日を祝います。境内の御釈迦様のご尊像に甘茶を掛けて、ご供養
5月18日/馬の塔=桶狭間の合戦での織田信長の勝利を祝った地元民の祭りが起源。川の氾濫から多くの什物を救われた故事から、馬に感謝する行事で、地元の子供たちが馬の頭のお御輿を担いで商店街を練り歩きます
7月下旬/大須夏祭り=大須商店街連盟主催の夏祭り
8月8日/歯歯塚供養=9:00〜法要。古くなった入れ歯に感謝し、供養します。本堂、普門殿にて「納歯袋」授与
8月9日/九万九千功徳日=この日参詣すると9万9000日分のご利益があるという大功徳日。18:00〜大般若転読会
8月13日~15日/孟蘭盆会=先祖の霊を迎え供養の法要が執り行なわれます
9月9日/大正琴大祭=大須で生まれた郷土芸能、大正琴の奉納演奏。10:00〜法要・奉納演奏
9月彼岸中日/秋季彼岸会=14:00〜法要。永代経の御法要
10月第1木曜日/人形供養=10:00〜古くなったお人形に、感謝を込めて供養
10月25日/開山記念祭=大須観音開山・能信上人の命日
11月第2土曜日/扇供養=11:00〜芸道上達を祈念しながら扇塚の前で扇を供養
12月31日/懺悔会=19:00〜1年間の罪を、山内の僧侶総出で信者になり代わって御本尊懺悔します

開山記念祭
大須観音
名称大須観音/おおすかんのん
所在地愛知県名古屋市中区大須2-21-47
関連HP大須観音公式ホームページ
電車・バスで地下鉄鶴舞線大須観音駅から徒歩2分
ドライブで名古屋高速都心環状線白川ランプから約300m
駐車場なし
問い合わせ大須観音 TEL:052-231-6525/FAX:052-231-9333
掲載の内容は取材時のものです、最新の情報をご確認の上、おでかけ下さい。
大須夏まつり

第73回大須夏まつり|名古屋市|2024

2024年8月3日(土)~8月4日(日)、愛知県名古屋市で『第73回大須夏まつり』が開催。名古屋随一の商店街を誇る大須商店街、ふれあい広場、大須観音、万松寺で伝統芸能「大須太鼓」奉納やサンバ・コスプレパレード、盆踊り大会などの多彩なイベント

青柳総本家大須本店

青柳総本家大須本店

愛知県名古屋市中区大須2丁目、明治12年創業の老舗ういろう店が「青柳ういろう」のブランドで全国的にも有名な青柳総本家。本社は名古屋市守山区ですが、そのルーツとなるのは、青柳総本家大須本店。青柳という屋号は、初代・後藤如休が、尾張藩最後の藩主

仁王門通り(大須商店街)

仁王門通り(大須商店街)

愛知県名古屋市中区大須2丁目、大須商店街のうち、仁王門本町から西の大須観音・仁王門前へと通じるのが、仁王門通り。明治以降の大須商店街繁栄のルーツ的な場所で、老舗の青柳ういろう、大須ういろもこの通りで開業。飲食店・居酒屋、衣料店が多く、最近で

大須観音通り(大須商店街)

観音通り(大須商店街)

愛知県名古屋市中区大須2丁目、万松寺通りに連続し、大須観音本堂横へと通じる大須商店街のメインストリートが、観音通り。尾張名古屋三名水に数えられる清寿院の柳下水など昔ながらの大須のイメージをもっとも残した通りで、商店街散策に絶好。大須のレトロ

万松寺通り(大須商店街)

万松寺通り(大須商店街)

名古屋市中区大須3丁目、大須仁王門通りの一本北にあり、大須観音本堂横(大須観音通り)へと通じる大須商店街の中でも最も人通りが多い通りが、万松寺通り(ばんしょうじどおり)。商店街の北側に万松寺(萬松寺)があることが名の由来で、名古屋で最初に整

名古屋スポーツセンター

名古屋スポーツセンター

愛知県名古屋市中区、大須にある「大須スケート場」、「大須スケートリンク」、NSCとして地元では知られるスケート場が、名古屋スポーツセンター。時間帯によっては一般向けのアイススケート場として利用できますが、世界的なフィギュアスケート選手を多数

赤門通・裏門前町通信号機

赤門通・裏門前町通信号機

愛知県名古屋市中区大須3丁目、大須観音の門前町、赤門通と裏門前町通が交わる交差点の信号機が、赤門通・裏門前町通信号機。あまり知られていませんが全国的にも稀という不思議な信号機で、南北・東西の車両用信号と、南北・東西の歩行者用信号をひとつにま

総見寺

総見寺

愛知県名古屋市中区にある臨済宗妙心寺派の寺、総見寺。本能寺で無念の死を遂げた織田信長の菩提寺で、慶長16年(1611年)の「清洲越し」(清洲から名古屋への城下町の大移転)で、現在地・大須に移っています。寺の名も織田信長が安土城内に築いた摠見

日本三大観音

日本三大観音とは!?

「観音様」とは観音菩薩(かんのんぼさつ)のこと。本来の寺名ではなく、〇〇観音と通称されるように、庶民の願いを聞き届けてくださるありがたい仏様。日本三大観音と通称されるのは、浅草観音(金龍山浅草寺/東京都台東区)、大須観音(北野山真福寺寶生院

浅草寺

浅草寺

東京都台東区浅草(あさくさ)にある東京で最古の寺が浅草寺(せんそうじ)。本尊は聖観世音菩薩で浅草観音とも通称されています。浅草のシンボル雷門から参道の仲見世を抜けると宝蔵門、左手には五重塔、そして正面に大本堂があります。今も「浅草の観音様」

津観音(観音寺)

津観音(観音寺)

三重県津市大門にある真言宗醍醐派の古刹が津観音。正式名は恵日山(えにちざん)観音寺大宝院で、浅草寺(東京都台東区)、大須観音(愛知県名古屋市)とともに日本三大観音に数えられています。本尊は聖観音菩薩ですが、「国府阿弥陀如来」と呼ばれる三尊像

万松寺

名古屋市中区大須3丁目、万松寺(ばんしょうじ)は、1540(天文9)年に、織田信長の父、織田信秀により織田家の菩提寺として開基された古刹。曹洞宗(禅宗)・大本山總持寺の末寺で十一面観音菩薩が本尊。正式の寺号は亀嶽林山萬松寺。徳川家康が竹千代

 

この記事が気に入ったら
いいね!しよう

最新情報をお届けします

Twitter でニッポン旅マガジンをフォローしよう!

よく読まれている記事

こちらもどうぞ