洲崎神社

房総半島西の突端、浦賀水道に突き出したのが洲崎(すのさき)の岬。そんな岬に鎮座する洲崎神社の祭神は、天比理乃咩命(あまのひりのめのみこと)。安房神社(あわじんじゃ)祭神の天太玉命(あめのふとだまのみこと=阿波から移住し安房を開いたと伝わる忌部一族の祖神)の后神(きさきがみ)です。

社伝によれば役行者が開いたという古社で源頼朝も尊崇

白河藩主松平定信の書による扁額がかかる拝殿

土地に伝わる伝承や807(大同2)年完成の『古語拾遺』によれば、古代に忌部氏(いんべうじ)は阿波(あわ=現在の徳島県)から黒潮にのって東上し、安房を開いたのだとか。

洲崎の沖合は浦賀水道(広義の東京湾)の南端で、内湾と外洋の分岐点となっており、海上交通の難所。
潮の境目にもなる沖を見つめるように建つ神社は、船乗りや漁民の尊崇を受けてきました。

社伝によれば、717(養老元)年、修験道の祖・役小角(えんのおづの=役行者)が開いたという古社。

源頼朝が伊豆で挙兵して敗れ、真鶴(まなづる)から海路安房へ逃れたときにも、洲崎明神に祈願しています(『吾妻鏡』に記載)。
また、『吾妻鏡』の1182(寿永元)年旧暦8月11日の条では、頼朝の妻・北条政子の安産祈願のため、安房国の豪族・安西三郎景益が奉幣使として洲崎神社へ派遣されたことが記されています。

航海神としての信仰は、中世に品川神社(東京都品川区/源頼朝が勧請)、洲崎大神(横浜市神奈川区/源頼朝が勧請)、太田道灌が江戸神田に洲崎大明神を祀ったなど江戸湾内に広がっています(洲崎神社から分霊を勧請)。

平安時代の927(延長5)年に編纂された『延喜式』神名帳では安房国安房郡に「后神天比理乃咩命神社大元名洲神」と記載されており、この「元名洲神」が洲崎神社ではと推測されています(洲宮神社とする説もあり定かでありません)。

浜の鳥居は富士山を眺める絶景の地

延宝年間(1673年〜1681年)築で、江戸時代中期以降に大規模な修理が施される本殿、宝永年間(1704年〜1710年)築の随神門など、江戸時代の建築物が現存。
海岸に立つ浜の鳥居からは、毎年7月15日前後には富士山頂に日が沈むダイヤモンド富士を眺めることが可能です。

三浦半島にある安房口神社に祀られている石と対を成す「神石」が海岸にあり、安房口神社が「阿形」、洲崎神社が「吽形」で、阿吽(あうん)とされています。

洲崎神社の鎮座する御手洗山に残る自然林は、スダジイ、ヤブニッケイ、タブノキ、ヒメユズリハが茂る手つかずの鎮守の森で、千葉県の天然記念物「洲崎神社自然林」に指定。
神社に隣接する真言宗の寺、養老寺(正式名は妙法山観音寺)は、明治の神仏分離まで洲崎神社の社僧を務めた寺で、洲崎神社同様に役小角が開祖。
滝沢馬琴(曲亭馬琴)の長編伝奇小説『南総里見八犬伝』の舞台にもなっています。

洲崎神社
浜の鳥居から富士山を眺望
洲崎神社
名称洲崎神社/すのさきじんじゃ
所在地千葉県館山市洲崎1334
関連HP洲崎神社公式ホームページ
電車・バスでJR館山駅からJRバス洲崎方面行きで洲の崎神社前下車、徒歩5分
ドライブで富浦館山道路富山ICから約16.5km
駐車場7台/無料
問い合わせ洲崎神社 TEL:0470-29-0713
掲載の内容は取材時のものです、最新の情報をご確認の上、おでかけ下さい。
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