殺人の滝という恐ろしい名前の滝が落ちているのが、群馬県吾妻郡中之条町の世立地区。川底から湧き出す温泉で尻を温めて痔を治すという尻焼温泉に向かう国道405号途中にある、世立八滝(よだてはったき)のひとつで、正式な呼び名は「さつうぜんのたき」とのこと。
江戸時代に、行者が村人に殺された現場!?
白砂川上流の八石沢川に懸かる滝で、「草津温泉から最も近く、最も美しい滝が集まっているところが世立八滝」(浅間・吾妻エコツーリズム協会)とPRしています。
もともと冬の厳しい草津を逃れ、湯治場を閉めて六合村(くにむら/平成22年3月28日に中之条町に合併)で暮らす人もいたという近さで、国の伝統的建造物群保存地区に選定される養蚕農家集落「赤岩地区」(平成18年7月5日に群馬県初の重伝建に選定)、本州ではここだけという珍しいコケの生育するチャツボミゴケ公園、廃墟が人気の旧太子駅、抱き合う姿の抱擁道祖神などがありますが、観光的には尻焼温泉が知られるくらいでまだまだ無名の存在。
世立八滝には平成24年に遊歩道が整備され、目下売出中の存在です(それゆえ、ロープを頼りに下るという秘境感は薄れました)。
瀑布群から少し離れた場所にある殺人の滝についても殺人の滝遊歩道が整備され、探勝が可能。
国道405号側を起点にすると2km以上歩くことになるので(上の地図を参照)、殺人の滝だけが目的地なら、少し遠回りですが国道から町道暮坂引沼線側に入り。町道側から(東側から/上図の右側から)のアプローチがおすすめです。
国道入口の駐車場から400mほどですが、登坂もあるので軽ハイキング程度の装備は必要です。
世立八滝への道の途中に分岐があり、ここから殺人の滝遊歩道(急坂で、手すりの付いた階段も)を歩けば観瀑台。
落差も20mと、世立八滝のなかでも最大で大迫力で迫りますが、不思議な名前に関しては「かつてこの滝で殺人があったと伝えられることが名の由来」と案内板には記されています。
「昔、旅の行者が入山村(後に合併して六合村、現・中之条町)に立ち寄った際、貧しい村人達が金品目当てに行者を菰(こも)にくるんでこの滝に突き落として殺したという逸話が残されています」(中之条町観光協会)というからあながち眉唾な話ではないようです。
『続六合村村史』(平成27年)には「サツウゼンはサツウセンが濁った」とあり、「セン」は六合村で滝を表す言葉(仙とも)なので、もともとは「さつうせん」(殺人仙、殺人滝)だったことがわかります。
現在の暮坂峠へと通じる「新道」が開削される以前、江戸時代には殺人の滝が落ちる諏訪の下地区を暮坂とを結ぶ旧道が通り、滝近くの諏訪神社には江戸時代の旅人が記した落書きも残されています(旧道が神社脇の尾根を横断)。
こうしたことから、行者を殺害したという話にも信憑性が高まり、秘境感とともに、ゾクゾク感が増すのです。
【関東の秘境】その名もズバリ、殺人の滝へ! | |
名称 | 殺人の滝/さつうぜんのたき |
所在地 | 群馬県吾妻郡中之条町六合世立 |
ドライブで | 関越自動車道渋川伊香保ICから約60km |
駐車場 | あり/無料 |
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