火山列島で、「世界の活火山の1割がある」といわれる日本列島。東日本大震災以来、各地の火山が活発化していますが、世界の1割もの火山があるんだからしかたがないことなのかもしれません。では、日本一、ひょっとすると世界一「標高が低い」(あるいは「小さい」)火山はどこにあるのでしょう?
まずは火山(活火山)の定義から
火山噴火予知連絡会の定義では、日本には110もの活火山がある!
火山噴火予知連絡会によれば、活火山の定義を国際標準に揃えて「概ね過去1万年以内に噴火した火山及び現在活発な噴気活動のある火山」として平成15年に日本の活火山は108座(うち11座は北方領土にあります)と発表しています。
まあ偶然ではありますが、108は仏教でいう煩悩の数。
この活火山の定義の見直しは、昭和54年に起こった御嶽山の水蒸気爆発を受けてのこと。
かつてのように活火山、休火山、死火山という分類はなく、活火山と、その他の火山に区分されているのです。
日本列島の火山の数は煩悩の数とピッタリ同じ。
と思ったら、平成23年に北海道の雄阿寒岳、支笏湖カルデラの風不死岳(ふっぷしだけ)、そして知床連山の天頂山が火山に加わったので、現在では110になっています。
活火山110のなかには、ベヨネース列岩(東京都)、西之島(東京都)など海底火山が海上に現れたものも多数あり、日本列島が名高い火山列島であることがよくわかります。
世界一小さい火山は山口県萩市に
萩・城下町の北、日本海に突き出した陸繋島が笠山(112.0m)
平成27年に世界文化遺産に登録された「明治日本の産業革命遺産」。
その構成資産のひとつが、萩城下町(城跡・旧上級武家地・旧町人地)。
萩城下町の北、日本海に突き出した陸繋島が笠山(112.0m)です。
日本列島の活火山には、富士山を筆頭に、名だたる名山が名を連ねるなかで、山口県では「阿武火山群」(あぶかざんぐん/Abu Volcanoes)という聞き慣れない火山が入っています。
中国地方(山陰山陽)ではこの阿武火山群以外には、三瓶山が入っているだけなのがちょっと意外な感じです。
この阿武火山群、山口県萩市・山口市・阿武町にある火山群。
大島、相島、笠山、千石台、羽賀台、伊良尾山など50ほどの火山があるのですが、地元萩市と山口県が「日本一、ひょっとすると世界一小さい火山」とPRするのが笠山なのです。
笠山山頂から沖に眺める6つの島々も実はすべて火山島。
火山群で最後に火山活動をしたのが笠山で、海岸沿いにも溶岩が残されています。
この溶岩は、世界文化遺産に登録される萩城下町で石材としても活用され、海岸沿いの溶岩には楔(くさび)を打ち込んだ跡も現存。
気象庁が活火山に認定するなかにも、ベヨネース列岩(東京都)があり、最高標高は9.9mなので、こちらのほうが、小さい火山という気もしますが、海底からの高さは1500mもあるので、火山帯としてはやはり笠山のほうが小さいということに。
「市女笠をかぶった女性のような山」が名の由来
笠山全体は、マグマのしぶき(スコリア)が地面に降り注いで誕生した地形
笠山の標高は112.0m、遠くからの眺めると、市女笠(いちめがさ)をかぶった女性のように見えるのがその名の由来とか。
市女笠は、菅(すげ)などで編み、中央に高く巾子形(こじがた)という突起を作った笠。
たしかに外見も火山らしい雰囲気なのです。
笠山は山頂近くまで車道が通じ、笠山自然探求路で椿林などを探勝することができます。
地形図からも確認できますが、火山丘(山頂部)には直径30m、深さ30mの噴火口があり、火山だということは歴然。
1万年前に噴火し、噴火の初期に溶岩(安山岩)が流れ出して平らな溶岩台地が誕生、その後に空中高く噴き上げられたスコリア(黒っぽい火山噴出物)が降り積もってできた丘(スコリア丘)が形成、その丘が笠山というわけです。
笠山は、藩政時代には萩城の北東、つまりは鬼門の方角にあたるので、藩では笠山の樹木の伐採や鳥獣の捕獲を禁止していました。
明治以降に大木は切り倒されて用材となり、往時の原生林の雰囲気は薄れてはいますが、見事な椿林が残されています。
「活火山」である笠山に噴火の危険はないのかといえば、阿武火山群の活動周期は1万年で、同じ場所からは噴火しないという特性があるため、その危険はないとのこと。
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