長崎県長崎市西出津町、世界遺産「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」の構成資産となる外海の出津集落(そとめのしつしゅうらく)にあるド・ロ神父が明治16年に設立した女性の自立支援の授産施設の跡が旧出津救助院。建物は国の重要文化財に指定されています。
授産場、マカロニ工場、ド・ロ塀は国の重文
ド・ロ神父は、建築用の工具や農具などを外国から取り寄せ、図解を用いるなどして地域の住民に使い方を教えるなど、地域貢献も多大でしたが、女性たちの自立を支援するため、授産施設を建設。
中心となる授産場、マカロニ工場、ド・ロ塀が国の重要文化財、製粉工場、薬局は長崎県の文化財に指定されています。
向かいド・ロ記念館は、鰯網工場を再生したもので、国の重要文化財です。
授産場(木造・石造、地下貯蔵庫付きの2階建て)では、綿織物の製糸から製織、染色、素麺やパンの製造、醤油の醸造などが行なわれていました。
ド・ロ塀は、石積みの接合剤として使用されていたアマカワが雨に弱いことに気がついたド・ロ神父が、地元の自然石を不規則に積み重ね、アマカワの代用に赤土を水に溶かして石灰と砂をこね合わせたもので接合した独自の塀で、授産場の基礎や壁体に使われています。
レンガ造りで、内部が漆喰壁(しっくいかべ)のマカロニ工場では、西洋から取り寄せたマカロニやパスタの製造機などが設置され、ここで製造されたパスタ類は長崎の外国人に販売。
製粉工場は、小麦の種子をフランスから取り寄せて小麦を栽培し、水車小屋で製粉、地元の畑で産した落花生の油を使うという独特の製法で素麺を製造していました。
薬局は、蔓延した腸チフスの対策としてフランスやイギリスから医療器具や薬品を取り寄せ、わざわざ医師を雇って診療を行なった場所です。
また、こうした施設の建築工事そのものが授産事業にもなっていました。
フランスの貴族の家に生まれたド・ロ神父は、来日11年目、39歳の時に、外海地区に赴任しますが、あまりにも困窮した生活に衝撃を受け、授産・福祉施設を設立し、開墾地で農業を教え、さらに港を整備して漁民を助けてもいるのです。
しかもこれらはド・ロ神父の私財を投げ売っての事業だったのです。
今も地元の人から「ド・ロさま」と親しみをこめて呼ばれ、「出津はド・ロさまの足跡がいたるところに残っています」(旧出津救助院を運営する一般社団法人「ド・ロさまの家」)とのこと。
旧出津救助院には、ド・ロ神父記念館、出津教会堂周辺、長崎市外海歴史民俗資料館があり、集落全体が世界遺産「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」の構成資産になっています。
また、「長崎市外海の石積集落景観」として国の重要文化的景観に選定。
取材・画像協力/長崎県観光連盟(撮影:日暮雄一)
旧出津救助院 | |
名称 | 旧出津救助院/きゅうしつきゅうじょいん |
所在地 | 長崎県長崎市西出津町2696-1 |
関連HP | 旧出津救助院公式ホームページ |
電車・バスで | JR長崎駅前から長崎バス出津方面行きで45分、出津文化村下車、徒歩10分 |
ドライブで | 長崎自動車道長崎多良見ICから約34km |
駐車場 | 45台/無料 |
問い合わせ | 旧出津救助院 TEL:0959-25-1002/FAX:0959-25-1006 |
掲載の内容は取材時のものです。最新の情報をご確認の上、おでかけ下さい。 |
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